また世界に恥をさらすフェイクニ
ュースを流した。新天皇即位を「
スーパーボウルの100倍大きな
行事」とトランプ米大統領に説明
したと報じられた安倍晋三首相の
ことである。自国の改元を訪問先
のスポーツ行事と比べる次元の低
さと誇張は改めてその知性の欠落
ぶりを示す。自分で「令和」を最
終決定した自慢からだろうが、そ
の的外れぶりを批判できないメデ
ィアも同レベルだ。せめて押し付
けられたような10連休の間、箍(
たが)が外れた国の言論の行く末
を憂い、どう処すべきか考えたい
。
最近、この国を「どんどん箍が外
れているのではないか」という思
いを強くしたことがあった。JR
西日本の電車の中吊り広告に目を
向けた時だった。どの車両もヘイ
ト記事満載の雑誌「月刊Hanada
」の広告が席捲していた。ほぼす
べての「令和」礼讃記事の執筆者
は櫻井よしこ、竹田恒泰、青山繁
晴氏ら安倍首相支持者ばかり。こ
の雑誌はいつも中国、韓国、朝日
新聞への憎悪をむき出しにした記
事が売り物で、あまりの偏向から
これまで中吊り広告が電車の車両
を占めるようなことはなかった。
一体、JR西日本の広告掲載倫理
基準はどうなっているのか。既に
JR東海系の雑誌「ウェッジ」が
原発再稼働支持を求める記事など
を多く掲載、新幹線やキヨスクに
並び、広告も出ていたが、今回の
「「月刊Hanada」ほど目立つこ
とはなかった。
JR東海の葛西敬之名誉会長が熱
心な安倍首相支持者で、よく食事
を共にすることは知られている。
それで目に余る「ウェッジ」広告
は出せないという自制はうかがえ
た。これに比べ、JR西日本の度
が過ぎた広告は一歩も二歩も掲載
基準の制限ラインを超えている。
それでも表立って大きな抗議の声
が出ないのは、知らず知らずのう
ちに乗客の思考が、中韓や朝日を
攻撃するヘイト思考に染まり、右
翼的な論調に馴らされてきたせい
だろう。
電車の車内を見れば、乗客の6、
7割がスマホの画面に見入ってい
る。その多くがヤフー、スマート
ニュース、ドコモニュースなどの
の画面を開いている。このネット
ニュースにも、取材に基づかない
ヘイトコラムやニュースが多くな
ってきた。「ヤフーニュース」の
ラインナップは発信元が一目で分
からないように変えた。ヘイト記
事や安倍政権支持の論調を帯びた
記事が目に入るようになってきた
。
そんな時、主によく引用されてい
るのが、産経、読売の政治記事で
ある。「スマートニュース」には
堂々と夕刊フジのサイトニュース
「zakzak」やネトウヨの総本山と
言われる「アゴラ言論プラットフ
ォーム」の安倍政権支持の記事が
目立ってきた。東洋経済オンライ
ンニュースやプレジデントオンラ
インも要注意だ。取材に基づかな
い野党攻撃や一部のメディアを攻
撃する記事が多い。特に橋下徹氏
の記事は頻繁で、まるで「橋下機
関紙」を印象付ける。安倍政権を
補完している立場も読み取れるの
は皮肉な効用かもしれない。
バランスを著しく欠く記事や放送
がこれだけはびこっているのは、
多くの有権者が新聞を読まなくな
ったのも一因ではないだろうか。
自分にとって不都合なニュースで
も、それを知ることで世界が広が
り、思考も深まる。新聞、放送な
どの既存のメディアが再生するに
は、ヘイト本やネット記事を圧倒
的に凌駕する深みのある記事を増
やし調査報道の質を高めるしかな
い。
【2019・4・28】