ハノイより辺野古に行け | 平野幸夫のブログ

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。


まるでお祭りのように、テレビの情

報番組は、ベトナム・ハノイでの米
朝首脳会談のニュース一色だ。キ
ー局の情報番組だけでなくローカ
ル番組のキャスターらもこぞって
現地レポートをする。しかし、そ
の中身は金正恩北朝鮮労働党委員
長やトランプ大統領の動向を追う
だけの通り一辺の報道で、現地取
材の必然性を感じさせない。一方
、政治・外交上、大きな意味を持
つ沖縄・辺野古への基地移設計画
の県民投票についての報道は、質
量共に格段に劣った。民意を無視
し既成事実だけを積み上げるだけ
の政府への批判は抑えられ、公権
力の暴走を防ぐという報道の役割
を放棄しているとしか言いようが
ない。改めて、メディアの覚醒な
しに、踏みにじられた民主主義の
再生は望めないという思いを強く
する。


深い取材に基づき、相手国の現状
を独自分析、将来を展望すれば、
それなりの現地レポートはそれな
りの意味はある。しかし、テレビ
画面ではどの局も「金委員長が今
、ガードマンに囲まれて玄関を出
ました」などと動向を追うだけの
音声が流れるばかりだ。中には夕
食会のメニューをスタジオで再現
し、キャスターが悦に入っていた
局もあった。発表される米朝首脳
会談の中身も事前予想を超える

内容は期待できない。外見的成果

だけを誇るトランプ米国大統領。し
たたかに、核開発断念を小出しの
カードにする金委員長。もう見飽
きた外交セレモニーだ。現地レポ
ートには米国に隷属し、隣国と友
好関係を築けない日本外交の弱

点への言及が欠落していた。



本来であれば、辺野古移設をめぐ
る県民投票で、反対が7割を超え
て民意が示された翌朝、何事もな
かったかのよう沖合でクレーン車
による土砂投入が行われている様
子を現地から大きく伝えるのが、
ジャーナリズムの使命ではないの
か。その朝、安倍晋三首相が「結
果を真摯に受け止め、基地負担軽
減に向けて全力で取り組んでいく
」とコメントしたのは、言いたい
ことだけを聞く「ぶら下り」であ
り、質疑のある記者会見ではなか
った。記者会見であれば「投票結
果も無視し翌朝、工事を続けるの
が『真摯』なのか」と問いただす
こともできるが、この政権は一貫
して批判的な質問を封じるため、
記者会見の場を少なくしている。
メディアは今こそ辺野古の現地取
材を強化し、埋め立てられる美し
い海の惨状を広く知らす時ではな
いか。


今はもう首相の顔がニュース画面
に出るたびに、政府のプロパガン
ダ放送に映る。それを許し続ける
官邸記者クラブは戦前、戦争を賛
美し続けた「翼賛メディア」と同
じだ。「にらまれたくない」と保
身に走ることが政権の狙い通りで
ある。真正面から批判できる政治
部記者はもういないと見るべきだ
ろう。記者会見の意義を問われた
菅義偉官房長官は「あなたに答え
る必要はない」と居直る始末であ
る。


「政府広報」同然に成り下がった
NHKは投票当日の夜、県民投票
をトップで扱わず、3番手でわず
かに触れる程度だった。トップは
天皇在位記念式典で、延々10分近
くその画面が流れていた。5月の
新天皇即位に向け、画面から皇室
を賛美する報道や番組が大きな洪
水のように溢れだしたようにみえ
る。皇室賛美報道は現代史を批判
的に見る視点を失わす。


県民投票前日の朝、NHKから驚
かされる画面が流された。「ボッ
っとしてんじゃねえよ」の台詞で
人気のチコちゃんが登場する番組
に上田良一会長がスタジオ見物す
る様子が映し出された。くったく
なく破顔する様子を見て、「落ち
るところまで堕ちた」と実感した


「モリカケ報道」で大スクープを
放った記者を左遷、政治討論番組
で「サンゴ移植した」などどフェ
イク発言を連発した安倍首相に何
の質問もしない政治部畑の司会者
ら、目に余る政権隷属ぶりがエス
カレートしているだけに、「よく
顔を出せるな」とその厚顔ぶりに
大いに驚いた。


その時、頭に浮かんだのは「愚民
化」という言葉だった。視聴者に
物事の実相を深く考えさせない習
癖を付けさせる役割を見事に果た
している。政権中枢の思惑と一致
する。民放の凋落ぶりと合わせて
政府の「メディア支配」は完成形
に近づきつつある。


   【2019・2・28】