何でも「想定外」で済ますな | 平野幸夫のブログ

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

 


台風21号で関西空港が機能不全、
北海道南西部地震で全発電所停止
……。自然災害の怖さをまざまざ
と見せつけられたが、いずれも被
害を拡大したのはリスクコントロ
ールの甘さである。どちらも責任
者から「想定外」という釈明を聞
かされた。しかし、起きるかもし
れない事態と真摯に向かい合って
いれば、防げたダメージである。
災害救援の初動の遅れも致命的だ
った。安倍晋三首相らは懸命な事
故対応ぶりをアピールしているが
、一時は総裁選を優先、その独善
的行動には目を覆いたくなる。


台風21号による高潮で滑走路が冠
水し、連絡橋が損壊した関西空港
はすべての機能が使えなくなって
、台風通過翌日になっても、78
00人が孤立した。神戸からのフ
ェリーが客をピストン輸送、連絡
橋片側通行のバスも移送を始めた
が、行政の救援は皆無に見えた。
主要基幹空港の全便がストップし
たというのに、石井啓一国交相が
陣頭指揮する姿も見えず、国が動
いた気配はなかった。


それどころか、安倍首相は5日朝
から総裁選の地方行脚を加速させ
ていたのである。8時半すぎ、国
交省の森昌文事務次官から報告を
受けた首相は30分後に新幹線に乗
って、総裁選の党員大会が開かれ
る新潟に向かった。周囲や自民党
執行部の一部は党員大会の延期を
進言したが、聞き入れなかったと
いう。よほど、批判が気になった
のか上越新幹線車中から「関空の
乗客輸送バス25台が空港に着いた
」とツイッターで発信した。住宅
も1000棟以上が倒壊、その時
点での停電は31万戸に上っていた
。そんな危急の時に選挙運動など
一国の首相がとるべき行動なのか
。早期の連絡橋機能回復と飛行便
確保に向けてもっと指示すべきこ
とがあるはずで、あまりにも自分
本位の行動に言葉を失うほどだ。


さすがに、翌日の北海道西南部地
震当日には総裁選の3日延期を決
めた。しかし、これも殊勝な決断
と評価はできない。というのは、
、選挙運動自粛で困るのは石破茂
元幹事長だけで、安倍首相は災害
復旧の会議を重ねるだけで、その
姿を報道されアピールるからだ。
自粛は「石破封じ」に働く。そん
な打算が露骨に見える。総裁選の
当面の延期を求めた石破元幹事長
の方が、より被災地の人々の心情
に寄り添っている。


松井一郎大阪府知事は6日、官邸
に出向き、海外便の伊丹、神戸両
空港への代替策を陳情した。橋下
徹大阪府知事時代、伊丹空港の廃
港まで口にしていた維新が、手の
ひらを返すように両空港の代替機
能を求めるのは、自らの政治判断
の失敗を認めるのと同じである。
「橋下失政」のツケを思いもかけ
ず、払わされているのである。


3空港一体運用は住民の利便性を
考えると、本来取っておくべき選
択だった。代賞は大きいが、これ
を機に、伊丹、神戸両空港の国際
線復活を望みたい。それが、今回
のような危機的事態のリスク分散
に有効でもあるからだ。


そのリスクコントロールでは、関
西空港の停電予防策は、予め対応
措置が取れていたはずだ。今回の
ように冠水する危険性の高かった
地下に電源を置いたことが被害を
拡大させた。経営陣や国交省の弛
緩した思考による不作為が最悪の
事態をもたらせた。


北海道南西部地震でも、経産省の
原発を含む大型発電所の過度な集
中政策が深刻な事態を招いた。幸
い原発は停止中で外部電源のスト
ップによる深刻な事故は間一髪免
れたが、送電の需給バランスが破
綻するという考えられない全道停
電をもたらした。万一の時の復旧
策をとっていなかった経営者や監
督官庁に暗然とさせられ、空恐ろ
しくなる。


今、世界の趨勢は水力、風力、バ
イオなど小規模でも再生可能エネ
ルギーを駆使した電力供給である
。住民に予想もしない災禍をもた
らせたのは、福島の原発事故とコ
スト至上主義という点で通底する
。網の目のような小さな再生可能
電力を制御する次世代電力ネット
ワーク(スマートグリッド)を目
指す世界の趨勢に乗り遅れている
ことを改めて自覚すべきである。


   【2018・9・8】