安全保障をめぐる国会審議の最大焦
点は、これまで国是だった専守防衛を
変質させる一連の関連法案の瑕疵を
鋭く突いて、これまでの防衛政策との
矛盾を明らかにすることである。しか
し、野党で中心となるべき民主党では
集団的自衛権を一部認める前原誠司
議員のような質問者を立て、追及姿
勢を疑わす結果に陥っている。審議を
見守る国民の目をどれだけ意識して
いるのか疑わしい。
質問の仕方に疑問があるが、この週
末、共同通信が行った世論調査結果を
見れば、81・4%の人が政府姿勢につ
いて「十分に説明しているとは思わな
い」と答え、これまでの政府の説明に
納得していないことが判明した。では
説明したら、納得出来るのかという突
込みを入れたくなる不十分な調査だ
が、この数字はこれまでの専守防衛
を劇的に大転換させる防衛政策に疑
問を抱く大多数の国民の思いは反映
していると言える。5月末には、後藤
祐一議員や辻元清美議員らの追及
で、一時審議が中断したのに、それ
が緩んだのではないかと思わせたの
は、前原誠司議員の週明けの質問だ
った。
自分が集団的自衛権を一部容認の
立場を明らかにしながら質問したこと
に疑念がわいた。質問の中身も、90
年代終わりから、当時の自民党と
周辺事態の有事立法に関わったこと
を明らかにした。そして「当時米国が
北朝鮮への空爆を軍事オプションとし
て持っていた。大事なのは北朝鮮有
事であり、中東などではない。当時
のことを明らかにせよ」と迫った。
半分、自分が防衛通を誇るようで、
中谷防衛相に代わって安倍首相が
答弁すると、「いい答弁でした」とほ
める場面さえあった。今だに、自民
党の防衛政策に共鳴する人物に質
問させる政治感覚のなさあきれてし
まう。党勢拡大の好機なのにそれが
できない理由がよく分かる。
続いて質問した玄葉光一郎議員も
かつての外務大臣とは思われない
追及の鈍さだった。「ホルムズ海峡に
出かけて行ってまで集団的自衛権を
行使するのはどうかと思う」と誰でも
言えるような中身のなさで、後半は南
シナ海の緊張関係を持ち出し、論点を
ずらす始末であった。政府が窮するよ
うな材料はまったくなく、失望だけを
感じさせた。
野田政権で安倍政権誕生に手を貸
した「6人組」とされる人物らを排除
しない限り民主党再生はないと考える
立場から見ると、今の民主党執行部
が今法案を廃案に追い込む気概を持
っているか大いに疑問である。
もし、このまま中身のない審議を続け
、強行採決を許すならば、決定的に民
主党の存在理由を失ってしまうだろう
。そんな危機感を党全体で共有出来
ないなら早く分裂して再生を目指すべ
きではないか。
【2015・6・1】