仕事を終えて帰宅すると、長男が僕の似顔絵を描いてくれていた。
マジかよと思った。
もし俺がこの顔であれば、芸人としてすぐ売れている。
この猪八戒が答える大喜利を、医者コントを、落とし穴ドッキリを心から見てみたい。
『いやいや特徴捉えてるよ』
そんなふうに擁護する子供に優しい方々もいる事だろう。
ではここで実際に僕の顔をご覧頂こう。
溢れ出るアイドル性。
既婚者が持つ色気。
中年に差し掛かった者特有の味深さ。
厳しいようだが、息子が表現しきれなかったのはこの3点だ。
並べてみた。
アメリカであれば億の訴訟を起こせるレベルだ。
特に鼻がキテいる
家を失ったカマキリにしか見えない。
そして『いちるのパパへ』と書きたかったのであろうところが『ぺぺ』になっている。
ペペは高級ローションだ。二度と間違えてはならない。
しかし僕は父親である。これ以上息子に恥をかかせる訳にはいかない。
そうだ
俺自身がこの似顔絵に寄せればいいのだ。
アイドル性を捨て、この猪八戒に寄せてあげれば息子のプライドは保たれる。
まずはこの髪形から。
ドライヤーを当て、ワックスで仕上げる。
むき出しの鼻は先人の知恵をお借りする。
妻が不在でチークがどこにあるか分からなかったので子供のクレヨンで代用。
問題は眼鏡だ。
滝廉太郎先生が御存命であれば話は早かったが、そうもいかない。
裏が黒いダンボールを使い、自前の眼鏡でサイズを測りながら作る。
完成。
輪郭を似顔絵に寄せ、並べてみる。
クリソツ。息子天才かよ。