練られた戦略で次々に勝利をおさめる天才的なロビイスト、エリザベス・スローン。大手ロビー会社で花形ロビイストとして辣腕をふるう彼女でしたが、銃の所持を規制する法案を潰すための仕事を断り、銃規制派の小さな会社に移籍します。銃規制反対派には潤沢な資金もあり、到底勝ち目はないと思われていましたが、斬新なアイデアと大胆な決断力で、勝利の兆しが見えてきます。そんな矢先、銃規制反対派は彼女を失脚させようと反撃に出て...。

 

正義の側にあれば清く正しい手段だけを用いて戦っても悪に勝てる...ということには、なかなかならないもの。残念ですが、それが現実で、私たちの周りにはそんな不正義や理不尽が数多く起こっています。

 

では、正義を実現させるためには、どこまでの手段を用いてもいいのか。正義はとかく、暴走するもの。"正しいこと"であるだけに、力強く暴れまわり、関わる者たちを大きく傷つけてしまうこともあります。強力な歯止めは必要で、例えどんなに正義であろうとも、違法な手段で実現させてはならないとすることが間違っているとも思えません。

 

スローンは、覚悟をもって一線を超えています。それを悪と糾弾するか、それも善と認めるか...。

 

彼女の手腕を評価し、その強引さに戸惑いながらも従ってきたエズメ・マニュチャリアンを"武器"にした場面は、鳥肌が立ちました。それが原因でマニュチャリアンは、スローンから離れていきます。そして、スローンが自分自身さえ道具にした場面で絡む2人の視線。マニュチャリアンは、そこで、スローンの本当の凄みを知ったのかもしれません。

 

印象的なのは、スローンは非情なようでありながら、きちんとチームの仲間たちと信頼関係を築けているということ。厳しかったり、時に危なかったりしつつも、スローンの真摯にストイックに仕事に向き合うプロとしての矜持は、才能ある人々の気持ちを惹きつけるのかもしれません。

 

激しい言葉の報酬は言葉による各闘劇という感じで迫力がありましたし、スピーディな展開にも引き込まれました。よく練られたストーリーと作り込まれた設定で、作品の世界を楽しむことができました。

 

ラスト。スローンの作戦が、銃規制を実現させることだけを目的としていたわけではなく、彼女自身の事情も絡んでいたことが明らかにされます。例え、法を犯すことになり、そのために一時的にロビイストとしてのキャリアに傷をつけたとしても、刑務所内でリハビリができ、健康を取り戻せれば一石二鳥といったところでしょうか。転んでもただは起きない、敏腕ロビイストの面目躍如。この展開、スカッとしました。
 

本作を観ると、数多くの無辜の犠牲者を生み出しながらも、アメリカでの銃規制がどうして難しいのかが分かるような気がします。そして、そんなアメリカ社会の矛盾を感じながらも、一方で、憲法で政府を転覆させるための武器を持つ権利を国民に認めているアメリカ政府の懐の深さというか、民主主義の徹底振りは感動的でもありました。

 

スローンを演じたジェシカ・チャステインの演技が光ります。

 

社会問題を取り入れながらエンターテイメント作品として十分に面白いですし、アメリカと言う国の姿が見えてくる作品として興味深いものともなっています。スローン以外の人物、特に彼女の弁護士のキャラクターが弱くなってしまい、スローンばかりが目立ち過ぎた感もありますが、その強烈さこそがこの物語の魅力ということなのかもしれません。

 

一度は観ておきたい作品だと思います。