夜明けの祈り

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第二次世界大戦末期に実在したフランス人の女医、マドレーヌ・ポーリアックの手記にインスピレーションを得て制作された作品。ポーリアックの手記には、ソ連兵によるポーランド人女性への暴力や性的虐待に関する事実が克明に記され、さらに、「いつかこの陰の天使をヒロインに...」という司祭の言葉が添えられていたそうです。

 

1945年12月、ポーランドの修道院。1人の修道女が、修道院を抜け出し、フランス赤十字の施設を訪れます。そこに勤務する女医のマチルドを見つけた彼女は、マチルドに助けを求めます。そこはフランス人のための施設であることから、マチルドは修道女の依頼を断ります。けれど、手術を終えて一服した時に、窓の外に雪の中ずっと祈りを捧げている修道女の姿を見たマチルドは...。

 

"修道院を守りたい"との一心からではあっても、人として許されない行為に手を染めてしまう修道院長。

 

自身の上に起こった出来事と信仰との狭間に揺れ、苦悩しながらも、信仰の道を歩み続けようとする修道女たちの強さ。子どもに対する母性も覗かせながら、けれど、その自分の中の母性への自覚が、彼女たちの信仰心を苦しめてしまう哀しさ。

 

そこには宗教がいかに人を慰め、傷つけ、悩ませるか、宗教というものが持つ様々な面が描かれ、修道女たちの日々にキリスト教がどれ程大きな意味を持つのか、宗教というものが、いかに大きな力を人の生き方に及ぼすのかが伝わってきます。

そして、出産する修道女の1人が言います。子どもの父親はかつての婚約者だと。他のソ連兵から彼女を守ってくれたのだと。ソ連兵が全てが悪なのではなく、ソ連兵だけが悪なのではないということなのでしょう。

 

一方のマチルドの立場的に追い込まれたり、怖い想いをしながらも信念を貫く強さ。自分の力ではどうにもならない状況で、適切な相手に援助を求めることができたのも彼女のしなやかな逞しさゆえなのだと思います。"何としても自分の力で頑張る"的な独りよがりな頑張りにならなかったところが良かったです。

 

本作では、悲劇の中にも希望が感じられます。マチルドと修道女たちは、全く違う生活をし、思想信条も価値観も異なりますが、連帯することができましたし、生まれた子どもたちが愛されて育てられていくであろう未来が示され、一筋の光を感じることができます。

 

そう、私たちは、身に降りかかった悲劇を受け入れ、相容れない意見を持つ相手とも連帯する力を持っているはずなのです。そこに希望が生まれるはずなのです。

 

とても残念なことは、彼女たちが、こうした悲劇の最期の犠牲者とはならなかったこと。今も多くの女性たちが、同じような悲劇に見舞われています。それを忘れてはなりません。

 

静かに、けれど、心の奥底まで響く力のある作品です。一度は観ておきたい作品だと思います。お勧め。

 

 

公式サイト

http://yoake-inori.com/

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