荒木源の同名小説を映画化した作品。原作は未読です。

TVドラマで人気を博した俳優、杉崎は、秘境を訪ね、伝説的なUMA(未確認生物)"ヤーガ"を探す探検隊の隊長役のオファーを引き受けます。台本を読み込んでしっかりと役作りをするタイプの杉崎は、内容のない薄っぺらな台本に戸惑いながらも、場当たり的な、危機感を煽る演出に応じて、毒グモに遭遇したり、岩場で足を滑らせた隊員を助けたり、凶暴なワニと格闘したり、必死に隊長の役を演じます。数日後、ヤーガが生息するといわれる洞穴に辿り着きますが...。

本作の元ネタは、TVの人気シリーズだった"川口浩探検隊シリーズ"。

当時の朝日放送(現TV朝日)で1977年7月20日から1986年3月26日の水曜日19時30分から20時54分の特別番組枠"水曜スペシャル"。その中で放送された秘境を探検したり未確認生物(UMA)を探すサバイバル番組が探検隊シリーズ。1977年7月20日がその第1回で、第1回と3回は西村晃、第2回は宍戸錠が隊長だったのですが、その3回、スタジオで司会をしていた川口浩が隊長となったのが、1978年3月15日から1986年5月7日("水曜スペシャル"での放映は45回の1985年11月20日まで)に計46回放送された"川口浩探検隊シリーズ"です。

あまりに都合よく関係者や謎を探る手掛かりが現れたり、そう簡単には現れないはずの謎の生命体が登場したり、前人未到の場所に入る探検隊を前から映した映像があったり...。放送の翌日は、学校で、友だちとアレコレ突っ込みを入れながら盛り上がったものです。

で、その元ネタをリアルタイムで知っている者としては、懐かしかったですし、結構、笑えましたし、楽しめました。あの番組、本当にこんな風に撮影していたのではないかと思えてきますが、その辺り、どうなのでしょうか...。

ただ、残念な点もところどころありました。特に、2点。1つは、撮影に邪魔が入り、"命を懸けて撮影続行"となる展開。杉崎隊長はそれでよいと思うのですが、他のメンバーは、本気で命を懸けてはいけないのではないかと...。やはり、バラエティですから。本当に死者が出たら、折角の映像もお蔵入りでしょう。面白い映像を撮ることよりも、視聴者に届けることを優先すべきなのではないかと...。命を懸ける演出は良いとしても本当の意味で命を懸けてはいけません。

基本、"隊長は真剣そのもの、他のクルーは、ヤラセと心得ながら、隊長の真剣さを利用している"という設定を貫いた方が面白くなったのではないかと思いますし、隊長は命懸けでも、他の面々がきちんと安全な逃げ道を確保しているという方が、"バラエティ番組の撮影"としては真っ当なのではないかと...。もちろん、原作の設定なのだとしたら、仕方ないのですが...。

そして、洞窟の中の人の設定。原始人というのは、現地に対する上から目線が感じられ、嫌らしさも感じます。まぁ、この手の番組にそうした雰囲気があったことも確かなのでしょうけれど、"ヤーガ"を崇拝する新興宗教の信者とか、他の設定もあり得たと思うのですが...。これも、原作通りなのであれば仕方ないのでしょうけれど、撮影を邪魔されてから完了するまでの流れは、もう一工夫欲しかったです。

主演の藤原竜也らしい熱さが、杉崎役にぴったりだし、ユースケ・サンタマリアの嘘っぽさが如何にもこの手の番組のプロデューサーという感じを出しています。全体に安っぽい感じがする作りもストーリーの雰囲気には合っていたと思います。

何も映画にせず、TVドラマでも良かった気もしますが、杉崎隊長の情熱は映画館のスクリーンで観るべきものかもしれません。

もっと面白くなったはずな気がするだけに残念な部分もありましたが、少なくとも、川口浩探検隊シリーズをリアルタイムで観ていた人にとっては、楽しめる作品だと思います。私も笑わせてもらいました。


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