ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男 [DVD]/リチャード・ギア,ジュリー・デルピー,ホープ・デイヴィス
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アメリカの実業家であり、映画製作、飛行家としての顔も持ち、"地球の半分の富を持つ"とも評された伝説の大富豪、ハワード・ヒューズの"偽りの伝記"が出版されるという 1970年代初頭に実際に起きた詐欺事件を映画化した作品。原作は、詐欺の首謀者だったクリフォード・アーヴィングの自叙伝。


売れない作家クリフォード・アーヴィングは、新作を出版社に売り込んでは却下される日々を送っていました。ある日、友人でもあるマグロウヒル出版のアンドレアに"今世紀最大"の作品を持ってくると言ってしまい、窮地に立たされます。本当は何のプランも無かったのですが、大富豪でありながら変わりもので公の場に姿を見せないハワード・ヒューズのニセ自伝を書くことを思いつき...。


これが実話というのですからスゴイ。


伝記が出版されるとなれば、それだけで確実にニュースになる伝説の人物。そんな大物を狙うというその無謀さが見事。謎に包まれた大物ということであれば、その人物像に迫ろうとした人間は多数いたことでしょう。けれど、本人にばれた時を考えれば、矢鱈なことはできないでしょう。まぁ、最終的には本人に伝わる話であることは十分に予測できるでしょうし、大物相手に下手なことをすれば身を危険に晒すことになるわけで...。


アーヴィングは、多額の報酬を詐取するためにウソにウソを重ねていきます。ところどころで、そのウソが綻びかけますが、その場その場を何とか切り抜け、アーヴィングの計画は進んでいきます。彼の後押しをするように思いがけない情報が盛り込まれた資料まで届けられて...。


ウソの世界を作り上げていくアーヴィング。その過程で、彼自身もウソの世界に取り込まれていきます。現実と妄想の境を彷徨う姿に彼の必死さが実感できます。この"本気"があるからこそ、観るもの詐欺師であるアーヴィングに気持ちを寄せていくことになるのでしょう。


いよいよウソから出た誠、アーヴィングの著書が大々的に世に出されていくかと思われたその矢先、誰が本当の勝者なのかが明かされます。


成る程、さすが、アメリカの政治すらも支配するほどの権力者。目立たずに、けれど、しっかりやることはやる。他人に自分の人生の一部でも左右されることなど許すはずもない...ということなのでしょう。


そして、さらに、エンドロールで示される事実。アーヴィングはまだ諦めていないとこのと。お見事!!まぁ、本作の原作となった事件の顛末記、「ザ・ホークス」を書いた時点で、アーヴィングも負けてはいなかったということになるのですが...。


この辺りは、いかにもアメリカ的といえるのかもしれません。


事件の大きさの割には、比較的、淡々とした描き方がされ、地味な感じもする作品ですが、アーヴィングを演じたリチャード・ギアの好演も印象的です。



ザ・ホークス~ハワード・ヒューズを売った男~@ぴあ映画生活