ワンエイティ・サウス 180°SOUTH [DVD]/イヴォン・シュイナード,ダグ・トンプキンス,ジェフ・ジョンソン
¥4,179
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世界的なアウトドアブランド「パタゴニア」の創業者イヴォン・シュイナードと「ザ・ノースフェイス」の創業者とダグ・トンプキンスの2人は、1960年代後半、パタゴニアを目指して旅に出て、大きく世界観を変えられたといいます。、その旅の記録映像に魅せられたアメリカ人青年、ジェフ・ジョンソンが、ふたりの旅を追体験しようと旅に出るドキュメンタリー。


イヴォンとダグの40年以上前の旅を記録した映像、現在のイヴォンとダグ、そして、彼らの旅を追体験したジェフの旅。目指すはパtゴニアの高峰、コルコバト山。


イヴォンやダグ、そして、ジェフ、彼らが、いかに本気で環境を考えているか、自然を守ろうと必死になっているか、どれだけのものを環境保護にかけているか、その真剣さ、本気度は素晴らしいと思いますし、彼らの熱心さには敬意も感じます。


でも、それでも、どこか、胡散臭さも感じてしまいます。何を言っても、本作で、環境を守ろうと必死になり、その活動の中心的な役割を果たしているのは、そのほとんどが文明に飽きた先進国の人間だから。かつては、アメリカだって、手付かずの自然がいっぱい残された土地でした。現在、"ネイティブ・アメリカン"と称される人々は、そこで、自然と共存して生きていたのです。その営みを破壊したのは、アメリカを"発見"し征服した白人たち。


そして、世界を舞台に富を掻き集め、経済的な発展を極めた今、失ったものの尊さに気付く。それはいいいのです。本当に大切なものの存在に、それを失ってから初めて気づくということはよくあることで、失う前に気付けなかったことを非難することなど誰にもできないでしょう。


でも、その大切なものを破壊してきた自分たちへの反省がきちんとされないままに、人のところにある大切なものについてあれこれ口を出すというのは、何だか、スッキリしません。もちろん、遠く離れた地域とはいえ、同じ地球上にある地域なのわけで、何らかの影響を与え合う関係にあって、全く無関係というわけにいかないのは確かですが...。


イヴォンのやり方に、現地から疑いの目が向けられているというコメントがありましたが、これまでの歴史を考えれば、それも無理のないこと。その彼らの疑いの背景にあるものを思い遣ろうという意識が感じられないところに、先進国の人間の傲慢さが感じられてしまうのです。


手付かずの自然の中での冒険の旅。それも、先進国における商品開発の末に生み出された技術に支えられているわけですし、イヴォンやダグの経営する企業も経済的に発展した先進国の人間により支えられている部分は大きいわけですから、その辺りについて言及せずに大自然を抱いた地域の発展を嘆いて見せられても共感しにくいのですよね...。


人間は、自分たちの都合で、恣意的に自然に手を加えすぎたことは確かだと思います。その傾向を放置しておいて良いとも思えませんし、人間が変わっていかなければならない面があるのは確かです。それでも、やはり、本作で描かれているようなやり方には納得のいきませんでした。


様々な環境保護団体の支援を行なっているパタゴニア社は、"グリーンピース"や日本の捕鯨船を攻撃したことでも名を馳せた"シーシェパード"の支援企業としても有名ですが、そんなこともあって、素直な気持ちで観られないのかもしれません。


本作に登場するパタゴニアの自然は確かに美しかったです。この美しい環境が失われていくのは、あまりに惜しく、それを何とかしたくなる気持ちは分かるのですが...。



180°SOUTH/ワンエイティ・サウス@ぴあ映画生活