1966年。高校を退学になったカールは、母に言われ、北海に浮かぶ船にやって来ます。そこは、カールの名付け親であるクエンティンが経営する海賊ラジオ局。1日に45分しかヒットレコードをかけないBBCラジオに対し、24時間、いつでもロックを放送するこのラジオ局は多くの若者たちの支持を得ていました。しかし、"不道徳"な音楽が流行ることに嫌悪感を抱く政府は、この海賊ラジオ局を潰そうと画策していて...。


本作の内容そのものはフィクションのようですが、イギリスでは、「放送にレコードを使用すると演奏家たちの仕事が減る」という理由でレコードの音楽を放送することを制限していたこと、そして、イギリスの法律が適用されない海上の"海賊ラジオ局"から最新のロックを流していたというのも事実だったのだとか...。


大人の文化祭といったところでしょうか。期間限定。まぁ、この場合、最初から期間を決めていたわけではありませんが、あの老朽化した船を見れば、そう遠くない時期に終わりが来ることは一目瞭然。そして、政府の意向など無視して好きなことを思いっきり表現する。ダメで元々、とにかく、行ける所まで突っ走れ!!!ずっと長くは続くはずもない"祭り"。だからこそ、彼らは、あんなにエネルギッシュに取り組め、明るくいられたのかもしれません。


そこに大人の分別なんてありません。思いっきり弾けて、全精力を傾けて好きなことに取り組む。そして、最後はその道に殉じていく。


やがて、終わりを迎えます。船は沈みます。数々のレコードや放送機材とともに。けれど、彼らは、そこで、彼らを支えてきた人々の支えを実感することになります。権力に疎まれながらも、確かに、多くの人々の支持を得てきたことが、そこで明らかにされます。


彼らの"海賊ラジオ局"は消え去りますが、彼らもロックも生き残り、大きな支持を得るようになり、ロックが普通にラジオの電波に乗せられるようになります。


さて、彼らは"勝利"したのか?


ロックは、やがて、メジャーになり、ビートルズの面々には"サー"の称号すら与えられ...。そう、ロックはマイナーな存在から大きく世の中に受け入れられますが、それは、"海賊ラジオ局"が存在意義を失う時とも重なります。そして、ロックが持っていた、"社会への反抗"という意味合いも薄まっていきます。


マイナーなものがメジャーになれば、大なり小なり、どこかで質が変化していくのは、ある意味、当然のこと。メジャーになるというのは、より多くの人に受け入れられるということ。どこかで妥協が必要となるのも致し方ないでしょう。


どこかで変質を受け入れながらもメジャーとなったロック。それは、ロックの勝利なのか、大衆のロックに対する勝利なのか?


斬新で革命的だったロックが大衆化し、やがて、新しい音楽が生まれ、それも、多くの人のものとなり、さらに、新しい音楽が生まれ...。そうして、歴史が紡がれていくのでしょう。


長い音楽の、人間の歴史の中で、繰り返されてきていることとはいえ、その場に立会い、その大きなうねりに関係することの興奮と恍惚が伝わってくるような作品でした。様々な妨害にも負けず、自分たちの思いを貫いていく姿には、好きなことに打ち込んでいる者の幸せが溢れていました。


ラスト、船が沈んでいく場面は、少々、冗長な感じもしましたし、場面の切り替えの部分で、若干、ギクシャクしたところもありましたが、全編に笑いが散りばめられ、最後まで楽しく観ることができました。そして、何より、全体を彩る数々の名曲が効いています。


コメディとしても面白い作品に仕上がっていると思いますので、特にロックに興味がなくても楽しめる作品になっていると思います。一度は観ておきたい作品だと思います。



公式HP

http://www.pirates-rock.jp/



パイレーツ・ロック@映画生活