面白かったです。最初から最後まで楽しめました。
実話に基づいているということですが、そういわれていなければ、「こんなのあり?」という内容かもしれません。閉鎖に追い込まれようとしている靴工場がドラッグクィーン御用達の「キンキーブーツ」の製造で息を吹き返すなんて!けれど、そういう靴メーカーが実存するというのですから、文句言えずノックアウトです。
この「キンキーブーツの製造で靴メーカーが生き返る」という筋立て以外の部分では、かなり「ベタ」です。突然の父の死により工場を背負わされ戸惑う主人公が、工場を救うことに力を注ぐようになり、挫折を乗り越えて成功する。そして、お約束のように古い恋と新しい恋が絡んでいく...。キンキーブーツの製造に努力する主人公のチャーリーとデザインを引き受けることになるドラッグ・クィーンのローラ。この二人の父との相克、様々な困難との闘いと成長の物語...。
それが、面白い!笑わされ、泣かされ、シミジミさせられ、ホッとさせられ...。
そこにいるだけで何だか可笑しさを感じさせるチャーリーと、元は「黒人で巨漢」という外見を裏切らずボクサーだったけれど、本来の自分に戻ってドラッグ・クィーンとしてステージで活躍しているローラ。この二人の存在が、この作品の魅力の大部分を形作っているといってもいいでしょう。チャーリーのヒーローであり、チャーリーを愛してくれた父を持つチャーリーと、女装をしたがる息子を最後まで受け容れてくれなった父を持ち、父によりならされたボクサーの道を捨てドラッグ・クィーンとなったローラ。父が遺した工場を父の死により背負うことになったチャーリーと、父に受け容れられなかった痛みと社会常識との軋轢を背負っているローラ。靴工場の経営者という立場に違和感を持つチャーリーと男であることに違和感を持つローラ。この二人の対比とバランスが見事でした。
やがて、二人は、父親の呪縛から自由になり、「自分らしい靴」で歩き始めます。冒頭に出てくる二人の少年時代の映像がラスト近くの展開に繋がり、「靴」が二人の成長を表現する小道具として上手く生かされています。チャーリーが、当初、結婚する予定だった女性の裏切りを靴によって知るという辺りの表現もお見事!
細部まで丁寧に作られていて、作品の世界にどっぷりと浸かることができました。
それにしても、イギリスは奥の深い国だと思います。ローラがノーサンプトンで宿泊していたホテルの老齢のメイドが、ローラが男性だと知った時の発言と28インチの男性の体重を支えられるスパイク・ヒールを作る方法についての年季の入った靴職人の発言。そこには、長く豊かな経験に支えられた揺るがないプロフェッショナルな姿勢が感じられました。もっとずっと若くて偏見に満ちた靴職人ドンの弱さと好対照でした。
モデルとなったのは、100年の伝統を誇るノーサンプトンの製靴業者、スティーヴ・ペイトマン。「ブルックス」という靴メーカーで、キンキーブーツは、「ディヴァイン」というブランド名で展開されています。
ディヴァインのサイト
公式サイト
http://www.movies.co.jp/kinkyboots/