パリでファッションフォトグラファーとして成功を収めようとしていたロマンは、ある日、医師から余命が3カ月であることを告げられます。同棲中の男性の恋人にその事実を告げずに、別れを切り出し、家族にも何も言えずにいたロマンですが、祖母には真実を話します。「(祖母は)僕と似ている。もうすぐ死ぬから。」という理由で。徐々に身体は弱っていき、死期が近づいていることを実感したロマンは、カフェで出合った女性、ジャニィから頼まれたことを思い出します。


突然、余命3カ月という宣告を受けた若く美しく、社会的な成功をも掴みかけていた若者が、理不尽に思える医師の宣告に苛立ちながらも、やがて、運命を受け入れ残りの生を静かに見つめられるようになる家庭が描かれます。


最初は、痛々しいほどの苛立ちを隠すこともなく、ピリピリしていたロマンが、徐々に心の平安を取り戻していきます。別れた恋人や長く諍いが続いていた姉と和解し、この世に遺すものを決めたロマンの吹っ切れたような静かで穏やかな表情が印象的でした。


死の宣告を受けた一人の男性の死ぬまでの短い間を描いた作品で、こうしたテーマ自体は決して珍しいものでもありません。


ただ、ロマンとジャンヌ・モロー演じる祖母、ローラとのやり取りは、大変、印象的でした。この場面があったことで、作品全体の印象が深まっているように思えました。ローラのロマンへの接し方が、人を理解し受け入れるということの重みを見せてくれます。


ロマンの選択、死の迎え方に共感できるという感じでもなかったのですが、それはそれでありなのだろうと思えました。




[以下、ネタバレあり]








ラスト、ロマンは、コール音が鳴る携帯をゴミ箱に投げ入れます。これまでの人間関係、すべてに別れを告げる行為のように思えました。そして、一人、海辺で死んでいきます。周囲に沢山の人はいたものの、皆、赤の他人。誰も、ロマンの死に気付かない中、一人でこの世から旅立っていくのです。けれど、不思議と寂しさより、幸福感に満たされたラストシーンでした。生命の誕生した場所とされる海に入り、海辺で眠るように死ぬ。その一個の生命体としてあまりに自然な死に方が死に伴う暗いイメージを払拭しているのかもしれません。


人は、結局、一人で死んでいく。生命は海から生まれ、土に還る...。そんな死生観が感じられる場面でした。



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