力道山の真実を描いた映画...と、予告編の印象から想像していたのですが...。


私自身は、力道山をリアルタイムで知っているわけではありません。昭和を振り返るドキュメンタリーなどで、力道山の闘う映像を観たことは、何度もありますが...。その時の印象は、「昔のプロレスは地味だったのだなぁ」ということ。必殺技の「空手チョップ」も、最近の空中技が多いプロレスと較べるとのどかな感じさえしたものです。でも、この作品のプロレスの試合では、結構、派手な技が繰り出されていて...。


最後の最後に「事実とは異なる」旨の断り書きが出てきます。作品の雰囲気そのものは、ドキュメンタリー風なのですが、結構、フィクションの部分も多いような感じがします。


「監督の感じた力道山」というところなのでしょう。それで、何故、キャッチコピーが、「日本人がいちばん力道山を知らない」なのか...。よくわかりません。


予告編やパンフレットが、作品の印象をミスリードしてしまっていることは否めないと思います。映像を観ながら、最初は、そのギャップに戸惑いを感じ、集中し切れませんでした。


ただ、映画作品そのものは、悪くなかったとは思います。


故郷を出て日本で力士として身を立てることを望むものの叶えられず、プロレスでトップになることを夢見てアメリカに渡り、生活を西洋風に変え...。力士としての自分を支え、プロレスラーになるチャンスを与えてくれた恩人の元にも、妻との家庭にも安住できなかった孤独なヒーロー。


この「孤独な姿」に重点を置きながら、力道山の半生が描かれています。


何故、故郷を捨てて日本に来たのか、何故、東洋の生活文化を捨て西洋の生活に変えなければならなかったのか、その辺りの背景がもっと描かれていれば、力道山の孤独をもっと実感できたような気もしますが...。


朝鮮人であることを捨て、日本人になろうとしながらもなりきれず、恩ある人の子分にもなりきれず、愛する妻の夫にもなりきれず...。結局、どこにも、「根」を持てなかったのかもしれません。根無し草の不安定さ、孤独、気持ちの行き場のなさ...。強くなればなるほど、ヒーローとしての地位が確立されていくほど、裏腹に、人の心は蝕まれていくものなのかもしれません。そして、根をおろせる場所を持たず、安住の地を持たないものは、そこから、なかなか、立ち直ることができないものなのかもしれません。


壮絶なる孤独と不安定さの中に身を置きながら、力道山の求めたものは何だったのか...。苦しい戦いの後に、望んだものの一部でも手に入れることができたのか...。


時代の移り変わりと、一人のヒーローの闇を背負った人生がオーバーラップし、当時の社会の雰囲気のようなものを感じられたような気はします。


「Always 三丁目の夕日」でも、力道山の試合に見入る人々の姿が描かれています。ちょうど、同時代の昭和が違った視点から描かれています。この二作品、作品自体の雰囲気も、昭和の雰囲気の描き方も、違いますが、どちらも、その時代の一面を上手く表現していたと思います。


力道山役のソル・ギョング、日本語の習得には、かなり頑張ったのだとは思いますが、セリフが聞き取れない場面もありました。字幕、欲しかったです。力道山の後見人役の藤達也、貫禄の圧倒的な存在感です。妻、綾役の中谷美紀、何とか力道山を支えようとした姿が哀しく魅せて印象的でした。


特に、綾が、力道山に「負けてください」と懇願する場面。妻として、力道山の孤独を癒したいという思いが溢れていたと思います。ただ、綾が、何故、そこまで、力道山に強く惹かれたのか、その背景も、少々、わかりにくかったのが残念でした。






[以下、ネタバレあり]








ラスト、死を目前にした力道山が、同郷の弟子に朝鮮語で語りかける場面があります。朝鮮人としてのアイディンティティーを人生の最後で取り戻せたのだとしたら、それは、この作品のせめてもの救いだったような気がします。


妻である綾とのエピソードも、ラストを暖かい雰囲気で締めていてホッとできました。





公式HP

http://www.sonypictures.jp/movies/rikidozan/site/


力道山@映画生活