29歳の末田冬子は妊娠9カ月ですが、一向に、子どもが生まれる気配はありません。妊娠18カ月目に突入し、周囲の好奇の目に晒されるようになります。そして、ついに、27カ月に...。人里離れた山荘に逃避した冬子のお腹は、まさに、はち切れんばかり。その中で、子どもは、外界に反応し、泣いたり笑ったりもするようになり...。


この作品に描かれているのは、絶対に、あり得ない世界なのですが、ホラーでもSFでもなく、不思議と幸せ感が漂っていて、ほんわかとした空気が感じられます。

昔に較べれば、遥かにやり直すことが簡単になり、結婚が人生の一大事とも言いにくくなってきた今、妊娠・出産は、人の一生における、なかり大きなイベントと言えるのではないかと思います。


妊娠により、女性は、身体も変わり、心も変わっていきますが、男性は、そう簡単ではないようです。けれど、妊娠期間が、10ヶ月を過ぎ、18カ月を過ぎていけば、そんなにのんびりともしていられません。父となる男性も、変わっていかざるを得ません。


冬子は、この一大事にも、比較的冷静で、どっしりとのんびりと事実を受け止めているように見えます。けれど、実は不安を抱えていることが「父への手紙」という形で表現されています。夫の徹は、最初は、妻をあまり顧みませんが、徐々に、生活を変えることになります。そして、この妊娠は、冬子の妹、緑子とその恋人の海にも様々な影響を与えます。


冬子の家族は、見事に女系なのですが、集まるたびに出てくる美味しそうな食事の映像が見事です。旬の素材を使った料理、丁寧に作られた料理、様々な工夫が凝らされた料理...。食べることへの意欲は、そのまま、生きることへの賛歌であり、新しい命を迎える歓びに繋がっているような気がしました。この生命力こそ、女系家族のパワーなのかもしれません。


徹も、徐々に料理の腕を上げ、料理について語るようになります。冬子の家族は、男の存在を必要と感じていませんでした。固く閉まってしまった缶の蓋を開ける時を除いて。けれど、動けないほどお腹が大きくなって、徹は、冬子にとって大きな存在になります。そして、いなくなった父に精神的に依存していた冬子は、父への思いを断ち切り、徹との関係を築き直します。その、徹と冬子の関係の変化と、冬子の家族が「女に間違いない」と疑わなかった生まれてくる子どもの性別との関係も面白かったです。


存在しない父に依存しつつも、基本的に男を必要とせず、浮気する徹への執着もなかった冬子が、次第に、男性を存在を必要とし、徹を受け入れていく過程の描き方、そして、恋人の海に「女になる」ことを求めていた冬子の妹の緑子が海が男性であることを受け入れていく過程の描き方が面白く印象的でした。


奇想天外な発想の元に作られた世界ですが、不思議とリアルに新しい命を迎えるカップルの心情を表現しているように思えました。起こっていることのあり得なさと、その出来事を取り巻く人々のまったり加減が今ひとつチグハグな感じもしましたが...。




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三年身籠る@映画生活