先日、患者さんの院内転倒の話をした際、

「その日の夜勤の看護師が、大変な責任を取らされる」

という話をしました。

 

今回は、

「私達、整形外科医にとっても、大きなストレスになる場合が多い」

という話をします。

 

 

(整形外科ではない)他科の患者さんが転倒して骨折した場合、

そして特に手術が必要になる場合、

整形外科に転科になることがほとんどです。

 

そして、

手術が必要となると、当然、ご家族にも説明して同意書を頂く必要があります。

 

(手術をしなくても、骨折の状態や、今後の方針などを説明しないといけません。)

 

 

多くの場合、ご家族は怒っておられます。

 

「なぜ、骨折させたんだ?」

「どうしてくれるんだ!」

「責任者を出せ!」

「絶対、元通りに戻せ!」

「院内で骨折させたんだから、治療費は払わない!」

などなど・・・。

 

お怒りはもっともです。

 

「私も(元の主治医に)治療を依頼されただけので・・・」

「私に言われても・・・」

的ことを言うと、更に怒られてしまうので、傾聴するしかありません。

 

 

しかしながら、

 

高齢患者さんの骨折の手術の場合、

一定の確率で合併症は起きますし、輸血が必要な時も多いです。

 

大腿骨頚部・転子部骨折の場合、

一般に、術後は骨折前より歩行能力が落ちることが多く、

余命も短くなることが知られています。

 

 

そういうことを、怒っているご家族の方に話して、了解を得ないといけません・・・。

 

(強面のご家族が)大声を出されることもあります・・・。

 

 

そして、

整形外科に転科した後に、元の科に戻ることは少ないので、

そのご家族とずっと関わることになります・・・。

 

最終的に、家に帰れるまでの歩行能力が得られなかった場合、

施設や長期療養型病院への転院をお勧めしないといけませんが、

そこでも、また立腹されます・・・。

 

 

と、いう感じで、

今回は、院内での転倒が起きると、

整形外科の先生は、けっこう辛い目に遭っていることも多い、

(そして、院内のスタッフや上層部も、意外にわかってくれない・・・)

という話です。

 

 

院内での転倒には本当に注意しましょう。

 

 

 

 

 

今回は暗い話です。

(股関節と全く関係ないので、読まなくても大丈夫です。)

 

 

先日、私が若い頃に、救急部にいた時の話をしていて思い出したのが、

「そういえば、自殺で搬送されてきた患者さん、多かったなあ・・」

ということでした。

 

 

日本人の死因と言えば、悪性新生物「がん」が思い浮かびますが、

 

「10歳~34歳までの女性」

「10歳~44歳までの男性」

の死因の第1位は

「自殺」

と報告されています。

 

悲しいですよね。

 

男性の自殺数は、その年の失業率と連動しているとされていて、更に悲しいです。

(失業率の高い年は、自殺する男性が多いです。)

 

 

農家が多い佐賀県特有なのかもしれませんが、私が研修医で救急部を回っていた時は、農薬自殺が多かったです。

 

農薬の匂いが強烈で、救急外来の窓を全部開けていました。

 

「よくこんなもの、1本全部飲めるな。」

というくらいの激臭でした。

 

何人か搬送されてきて、胃洗浄などしましたが、ほとんどが亡くなられてしまいました。

 

(農薬の臭いを一度嗅いだらわかりますが、もの凄い激臭で、普通の人は絶対に飲めません。)

 

 

ご家族のとても悲しそうな顔を今でも覚えています。

 

このご家族の顔を、患者さんに見せてあげたかったです。

 

ダチョウ俱楽部の上島さんが自殺された後の、有吉さんのラジオでの感情を押し殺した声、聞いているだけで切なかったです。

出川さんもテレビで泣いてましたね。

 

上島さんに、このみんなの姿を見せたかったですね。

 

 

非常に暗い話ですいません。

 

 

以前、山口県岩国市の患者さんの、

人工股関節の手術をさせて頂いたことがあります。

 

山口県のお酒と言えば、「獺祭(だっさい)」というお酒が有名で、

エヴァンゲリオンにも登場します。

 

 

ネットやテレビでも、色々と紹介されています。

 

 

「2014年4月に来日した米国のバラク・オバマ大統領に安倍晋三首相がプレゼントしたのも、この獺祭。」

 

「米国やフランスなどにも輸出しており、パリの一流レストランのソムリエにも絶賛される。」

 

「獺祭を造る現場は伝統の酒蔵のイメージとは異なり、近代的な工場そのものだ。」

 

「品質にばらつきがないことも獺祭の特徴だ。杜氏の勘に頼った酒造りでは、年により品質にばらつきが出るが、データで管理された獺祭にはそれがない。」

 

最高の酒に杜氏はいらない 「獺祭」支えるITの技 匠を捨て、匠の技を生かす(上) - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 

 

「話が盛り上がるかな?」

という位の気持ちで、

「獺祭(だっさい)が有名ですよね?」

と聞いてみたところ、

急に渋い表情になられました。

 

「先生、あれはダメですよ。」

「機械が作っていて、人が作ってない・・・」

とのこと・・・。

 

 

確かに、

 

「銀色のパイプが並んで、まるでプラント。イメージしていた酒蔵とは違った場所が…」


「それもそのはず、旭酒造の酒蔵は近代的な工場で、科学的にお酒を生産しているんです!」

 

2017年7月16日(過去の放送内容):がっちりマンデー!!|TBSテレビ

 

とテレビでも紹介されています。

 

 

続けて、

 

「今年のは凄く美味しい、とか、今年のは今一つとか・・・。だからいいんです。」

「いつも、全く同じ味というのは、私達は好きじゃないです。」

 

と言われました。

 

 

確かに、ワインは

「これは、○○地方の、△△年ものです。」

とか説明されて、作られた地域と年代によって、評価と値段が違いますよね。

 

 

手術とは全く違う考え方ですね。

手術は、できるだけ波がない方が良いですから。

 

 

 

獺祭やワインを見ると、たまに、あの時の言葉が思い浮かびます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このブログのタイトルにもなっているように、

私は「股関節外科医」として25年以上やってきた訳ですが、

きっかけは、決して、格好の良いものではありませんでした。

 

 

股関節で有名な佛淵先生が佐賀大学へ教授として赴任されてきた、1997年頃、

私は大学院で病理学教室へ行っていました。

 

それまでの人工股関節手術と言えば、

朝8時に搬入されて、昼13時くらいに病室に戻ってくるような感じ(今は、搬入から病室に戻ってくるまで、2時間くらい)で、

戻ってきた患者さんは顔面蒼白、入院期間も3か月近い感じでした。

 

どちらかというと、

「股関節だけは専門にするのはやめよう。」

と思っていました。

 

せっかく大学院で病理を学んでいたので、腫瘍を専門にしようと決めていました。

 

佛淵先生が来られて最初の頃、教授室で、医局員一人一人に面接がありました。

 

腫瘍を専門にしたいと話したところ、

「うちは、腫瘍やらないよ。」

「大学院に行っていて、医局から離れていたということは、私の世代ということだね。」

「君、股関節やりなさい。」

 

私:「??? 」「・・・分かりました・・・」

 

という感じでした。

 

 

人生と言うのは、ほんの数分で決まってしまうものですね。

 

(農学部志望だった私が医学部に変更したのも、担任の先生と話した、昼休みの数分間の出来事です。)

 

 

今では感謝しています。

 

 

つまらない話ですいません。

 

 

退院が決まった高齢の患者さんに、よく言う事がことがあります。

 

それは、

「せっかく退院が決まったんですから、転んで骨折とかしないように注意してくださいね。」

です。

 

私の「あるある」なのですが、

退院が決まってから、院内転倒して骨折する入院患者さんが結構います。

 

(整形外科の患者さんに限りません。)

 

スタッフも

「もう退院間近だし。」

「家では自分でやることだから。」

と、どこか安心している面もあり、

他の重症患者さん達に、注意が行きがちなのかもしれませんし、

 

患者さん本人も

「もう退院だし。」

「もう良くなってるし。」

「このくらいなら、看護師さんを呼ばなくても大丈夫だろう。」

という油断もあるのでしょう。

 

 

話が少し変わりますが、

 

ある日、ある病院で、

昼になっても、病棟に残っている、夜勤明けの看護師さんがいました。

 

「まだ帰らないんですか?」

と聞いたところ、

「夜間、転倒している患者さんを発見したので、レポートを提出しないといけないんです。」

「しかも、対応策も書かないといけないんです。」

「発見した看護師が書く規則なんですよ。」

と言っていました。

 

事故の状況を報告するのは、仕方ないとしても、

対応策などについては病棟全体で考えるべきものだと思います。

 

 

また、

以前、突然辞めてしまった、別の病院の看護師に会うことがあって、

「なんで、辞めたの?」

と聞いたら

「夜間に院内転倒があった日の夜勤だったのですが、夜勤明けの日の夕方まで、ずーっとレポートを書かされたのが、最終的に退職を決断した理由です。」

と言っていました。

 

病院というのは、不思議なところで、

トラブルなどを発見したスタッフが、責められたり、レポート提出や、医療安全委員会への呼び出しなど、色々な負担を強いられがちです。

 

トラブル自体はいけないことですが、

すぐに発見できた看護師自体は悪くはありません。

 

「そういう仕組みだと、発見した者負け、みたいになってしまう」

と思うのですが、昔からあまり変わらないですね・・・。

 

 

話がそれてしまいましたが、

とにかく、退院前の転倒には注意をしましょう。