手描きの世界の復権 | 日置研究室 HIOKI’S OFFICE

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作家の日置俊次(ひおきしゅんじ)が、小説や短歌について語ります。
粒あんが好きですが、こしあんも好きです。

 

  手描きの世界の復権

 

 アメリカではCGやAIを使った画像処理によるアニメーションが主流です。

 これはコンピューターを使って一見便利に見えるのですが、何もかもデジタル画像、CGにすっかり飲み込まれてしまうと、画像がとても居心地が悪くなります。どこかに自然なものが残っていないと息苦しいです。

 

 宮﨑監督はそれをよく知っているので、基本的に手描きにこだわります。

 デジタル画像やCGを使う場面もありますが、それは限られています。つかってはいけないわけではありません。基本をどこにすえるのかという問題です。

 今回の作品は全編手描きであったということです。

 コンピューターはとても便利で、コンピュータが世界からなくなるとは思いませんが、3Dアニメーションは、結局、方向としては、二次元アニメーションの世界に帰っていくのではないでしょうか。

 スタジオジブリに大勢にスタッフがいますが、この大勢の人の手作業で、映画ができていきます。手作業は大事ですね。 

 もちろんパソコン類、アイフォン類は進化を続けていきますし、それはいいことです。デジタル化も色々な分野で進むでしょう。便利になるのはありがたいことです。

 それとは別に、今流行の、電気自動車なども結局、ガソリンエンジン車、あるいはハイブリッド型に帰っていくと思います。手描きの良さが復権したのと同じような構図になります。

 便利でかつ快適であるということが大切で、このとき、ずっと変わらない部分というものもあるのです。

 進化の先というものはそう言うものです。

 

 すぐに時流に乗ろうとしたり、どんどん流行を追いかけても、それが役に立つかどうかわかりません。

 

 冷静に考えればわかるのに、温暖化というウソに乗せられたり、コロナワクチンというウソに騙されてしまう人がとても多いです。自分で調べることもせず、流行にすぐに乗せられるのではなく、よく考えて、先を見据えていくことが大切だと、私はコロナ禍で学びました。世の中は大変な嘘に満ちています。このウソの海の中で真実を口にすることは大変な話です。しかし注意が必要です。

 

 どこに基本をすえるのか、という問題を考えなければなりません。

 

 詩を書く時、鉛筆で書くのか、パソコンで書くのかは、そんなに違わないと思います。活字を組むのと、デジタルで活字化してしまうのは、結果的にあまり変化がないと思います。電子化しても、文章はそれ自体、あまり変化を受けません。画像とは違います。しかし、紙の本はなくならないでしょう。

 

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「世界のミヤザキ」に2度目の栄冠 ハリウッドが感嘆した手描きと作家性

3/11(月) 11:31配信 産経新聞

 

11日(日本時間)に発表された第96回米アカデミー賞は、宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が「千と千尋の神隠し」以来、21年ぶり2度目の長編アニメーション賞受賞という日本人初の快挙を成し遂げた。

 

【写真】宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が第96回アカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞。決定の瞬間、喜びに沸くスタジオジブリのスタッフら

 

 

同賞は、米ハリウッドの映画人が中心の「米映画芸術科学アカデミー」(AMPAS)会員の投票で選ぶが、「巨匠が7年もの歳月をかけて10年ぶりの新作長編を作り上げた事実に感嘆し、その労力にぜひ報いたいという気持ちが強く働いたのでは」と語るのは、アニメに詳しいジャーナリスト、数土直志さんだ。

 

数土さんはデジタル制作全盛の時代にあって「君たちはどう生きるか」が、一枚一枚の絵を手で描いて作られたことを挙げ、「手描きアニメは、もはやハリウッドでは継承されていない技術といっていい。やりたくてもやれない。この受賞は、そこへの感銘、リスペクトの表れでもある」と話す。

 

映画評論家の兵頭頼明さんは、「前哨戦のアニー賞を制した対抗馬の『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』のほうが演出技法は革新的だが、宮崎アニメのほうが物語性が豊かだ。作家が語りたいことが明確で、その作家性に感銘を受けたのではないか」と分析する。

 

数土さんは「スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース」にも「脱デジタルの傾向がうかがえる」と指摘。

 

「アニメ制作の過剰なデジタル化に対する〝揺り戻し〟のようなものが起きているのかもしれない。そんななかで、手描きで作品を完成させた宮崎監督にハリウッドは感嘆せざるを得なかっただろう」と話す。

 

作品の力に加え、米国で12月に公開され、ヒットし話題になったことが「賞レース直前でAMPAS会員の記憶に残り、有利に働いたのでは」と兵頭さん。

 

数土さんは「海外映画祭をこまめに回り、積極的に上映し、AMPAS会員をはじめ世界中の映画関係者の目に留まり、強い印象を残したこともよかったのでは」と語る。

 

また、兵頭さんは「多様化が叫ばれ、AMPASも外国人会員が増加し、アカデミー賞も米映画へのこだわりが薄まっているのではないか。非英語圏の作品が候補になり、受賞する例は、今後は、より増えるはずだ」と話す。(石井健)

 

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君たちはどう生きるか:アカデミー賞受賞 鈴木Pが勝因を分析 「宮崎駿の黙示録だった」2024年03月11日 10:51 MANTANWEB編集部

 

「第96回アカデミー賞」の授賞式が米ロサンゼルスのドルビー・シアターで3月11日(日本時間)に開催され、スタジオジブリの宮崎駿監督の劇場版アニメ「君たちはどう生きるか」が、長編アニメーション映画部門賞を受賞した。宮崎監督の作品では、「千と千尋の神隠し」が2003年に日本作品で初めて同賞を受賞しており、約21年ぶり2度目の栄冠となった。同日、スタジオジブリ第1スタジオ(東京都小金井市)で会見が行われ、鈴木敏夫プロデューサーが登場。同作が米国で評価された理由について語った。

 

 鈴木プロデューサーは、同作について「日本よりアメリカのほうが、心をつかみやすかったと思う」と話し、その理由について「公開中は言わないようにしていたが、内容が、ある種、旧約聖書の最後の黙示録。宮崎駿の黙示録だと思ったんです。それがアメリカの人には受け入れやすかったんじゃないかな」と分析した。

 

 宮崎監督は、米作品の影響を受けていると話し、「僕たちが若い頃、1960年代は、アメリカで聖書を基にした大作映画がたくさん作られた。『十戒』『ベン・ハー』『天地創造』と、超大作は聖書を基にしている。宮崎さんも、そういうものから影響を受けているんじゃないか。今回は特にアメリカの影響を色濃く受けた作品と僕は思っています」と説明した。

 

 CGアニメーションが隆盛する中、全編手描きである「君たちはどう生きるか」がアカデミー賞を受賞したことについて聞かれると、鈴木プロデューサーは「宮崎もCGでやれば、今の労働量が減るのかな?と、手を出したこともあるんです。ただ、彼の思いつくことは大体コンピューターに向いていない。この作品では、鳥の中から人間が出てくる描写がある。あれはCGでは作りにくい。彼の作るものは手描きでしか作れない。その面白さだと思います」と語った。

 

 「君たちはどう生きるか」は、2013年公開の「風立ちぬ」以来、約10年ぶりとなる宮崎監督の長編アニメ。宮崎監督が原作、脚本を手掛けた。2022年12月にポスタービジュアルがお披露目されたが、あらすじ、キャスト、主題歌などが事前に明かされないまま、2023年7月14日に公開された。

 

 俳優の山時聡真さんが主人公・眞人を演じたほか、菅田将暉さん、柴咲コウさん、あいみょんさん、木村佳乃さん、木村拓哉さん、大竹しのぶさん、竹下景子さん、風吹ジュンさん、阿川佐和子さん、滝沢カレンさん、國村隼さん、小林薫さん、火野正平さんが声優として出演した。

 

 日本を含め約50カ国で公開。北米では2023年12月に2205館で公開され、興行収入が約4598万9600ドルを記録している。3月8日に授賞式が行われた「第47回日本アカデミー賞」で、最優秀アニメーション作品賞に選ばれたことも話題になった。

 

 

 

みなさまにすばらしい幸運や喜びがやってきますように。

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