あらすじ 

1953年、ニューヨーク。害虫駆除員として働くリーは、駆除薬と称して麻薬を密売している容疑をかけられ警察署へ連行される。そこで人間の言葉を話す巨大な虫から、妻ジョーンの殺害を命じられる。ジョーンはリーの駆除薬を麻薬代わりに使っており、彼女に引きずられるままリーもまた駆除薬に耽溺する。そんなある日、誤ってジョーンの頭を銃で撃ち抜いてしまったリーは、謎の組織に身を隠してスパイ活動をするはめになる…。

感想 

デヴィッドクローネンバーグ監督の1991年の作品の4Kレストア版。

 

害虫駆除員として働くリーが駆除薬を麻酔として使っていた妻ジョーンに促され、麻薬におぼれていく中で、幻覚や幻聴が入り交じる世界に入っていくお話。

 

久しぶりの鑑賞でしたが、大変面白かったです。

まともに物語を追うと整合性が取れない破綻した世界観なのですが主人公のリーが麻薬を使用してからは、ずっと幻覚の世界を彷徨っていると考えたら、物語そのものより、幻覚や幻聴、害虫を模したタイプライターなどなど、トランス状態にある主人公の五感を映像として表現している世界の混濁ぶりが楽しく感じました。

 

原作者のバロウズの人生をなぞるような現実と幻覚がクロスしていて、まともな映画ではないですが、クリーチャー的生物のグロテスクな美しさと麻薬に溺れた人たちの幻影をクローネンバーグ監督らしいビジュアルを駆使して魅せる映画になっていて、今観ても古さを感じない作品でした。