待合室は、当然お腹の大きな妊婦さんだらけ。
皆、これから産まれる赤ちゃんに思いを馳せながら、幸せに順番を待っている中
私はその赤ちゃんとの別れのための手術を行い、独りぼっちで会計を待っている
お母さんに来てもらうんだった…
手術の前は、そこまででもなかった悲しみが、実際にお腹の中が空っぽになってしまったことを嫌でも感じざるを得ない強い痛みで、
本当にもう耐えられない!!
と思った。
私が会計を済ませても夫は現れず、
それからしばらくして、
いつもの鬼瓦のような形相の
不貞腐れた態度でのろのろと現れた。
私は、異常なまでに、
その不機嫌な顔に苛立ちを覚えた。
もちろん「遅れてごめん」
の一言など無い。
会計を私が1人でしたのも当然のこと。
そんな金、俺が支払う理由無いし
そう、私自身の、
私がした手術だからね!
お腹の子はあんたの子だけど!
別にね、大した金額じゃないし、
どちらが払おうがいいんだけど、、
上手く言えないけど、気持ちの問題なんだよね。
出張で疲れてるのにわざわざ来てやったんだ 。
ありがたく思え 。
まだ寝たかったのに面倒くさい
そう顔に書いてあった。
実際には、もしかすると何かしら優しい言葉??をかけてくれたのかもしれないが、
全く記憶にない!
私は憔悴しきっていたので、
そのまま黙って夫の車に乗り込んだ。
そして、その後、涙が止まらず、
夫が運転する車の中で号泣した。
夫が、どうしたのかと言うので、
私は、この状況でどうしたとは
一体どういう意味なんだ?と内心キレそうになりながら、
同じ病室にいた幸せそうな夫婦がいて
余計に辛かったなどの話を
泣きながらしたけれど、
夫には何のことやら伝わらなかった。
そう。
私は、話す相手を間違えていた。
このような繊細な話、夫に理解できるわけがなかった。
その時は、その事にも気が付かないほど打ちのめされていたから気づいていなかった。。
次第に、夫が私の手術が終わっても遅刻して現れなかったこと、会計すら私1人出させたことなど思い出し、
猛烈に腹が立ってきて、
とうとう夫と言い合いになってしまった。
今思えば、私がいけない。
夫に理解できない話をして、自分の辛さを分かってもらおうとしても、無理なんだよね。
相手がどういう状態で、どういう気持ちで
こんな話をしているとか、そんなことは
夫には絶対に理解できないのに。
ただ、当時まだ私は、この男にも優しい心があるものだと思い込んでいたのだから、
仕方がない
そして、夫が泣きじゃくる私に向かって大声で怒鳴りつけた。
「離婚してやろうか!!?」
今でも、その言葉だけが鮮明に残っている。