自民党総裁選で候補者がたくさん出て、賑やか・華やかな様相を装っている。

国民から、政治資金パーティーの汚点を忘れさせようという効果はあるのか?

毎度のことながらの自民党の常套手段とは言え、国民の目はごまかせるか?

マスコミは今日も、総裁レースをバラエティ-番組のように報道して止まない。

 

 

でも、忘れてほしくないことは、総裁候補者の中に世襲議員が多いことである。

例えば、小泉氏・石破氏・河野氏は2~3代の世襲で、ご先祖は有力政治家である。

自民党全体でも、国会議員の約4割が何らかの形で世襲だというから驚きだ。

自然、政治が保守的・現状維持的となり、日本の社会・経済も停滞する。

 

 

ところが、野党にも世襲議員はちゃんと一定数いるのだ。

立憲民主党には党全体の1割以上、なんと25人もいる。

公明党・日本維新の会・国民民主党の議員にも、それぞれ世襲がいる。

 

また、世襲議員は、与野党問わず選挙にめっぽう強いのだ。

世襲候補の勝率は、比例復活当選を含めて80%に達する。

譲り受けた地盤が最初からあるので、当たり前のことだが…。

 

一方で、非世襲候補の勝率は30%とのこと。歴然とした差がある。

政治を志す若者の前に、スタート時点から高い壁ができてしまっているのである。

意欲に満ちて能力の高い若者が、政治に携わるチャンスが少なくなる仕組みだ。

 

個々の世襲議員の能力が低いのかと言うと、そんなことはないだろう。

でも、具体的な帝王教育は受けずとも、家庭の中で政治的な雰囲気を感じ取り、

知らず知らず、政治的な身の処し方を受け継いでいる点は、初めから有利だろう。

何より先代が築いた強固な地盤をそっくり相続し、それが彼らを支え続ける。

 

でも、彼らの政治行動をつぶさに観察していったら、

彼らは、いくらヤンチャに振る舞ったところで、

祖父や父親が作ったお屋敷の庭から、一歩も出ていることはないだろう。

 

サラブレッド達は、国家にいざ危機的な大きな難題が降りかかってきた時、

胆力でもって乗り切ったり、解決するのに必要な底力が出たりはしないだろう。

ふだんの政治の場でも、既得権益を打ち破るようなことができるとは思えない。

 

日本の政治の停滞ぶり無策ぶりは、ずっと以前から叫ばれてきた。

なぜそれが少しも治らないかと言うと、この世襲議員の存在が大きいからだ。

子や孫が、祖父や父から議員の座を譲り受けて、政治が進化するはずがない。

 

日本が世界に後れを取り、経済でも「失われた30年」と言われるのも、

実は、政治の世襲化の影響が、みなが思っている以上に大きいのではないか?

政治改革の遅れが政策実行の遅れを招き、日本社会・経済全体の足を引っ張った。

 

ところが、その”世襲”を支えているのは、他ならぬ選挙民である。

郷里の政治家一家を支えることは、自分たちにとって本当に良いことなのか?

その政治一家とつながる既得権益との絆は、そんなにも強く断ちがたいのか?

 

小選挙区制だと候補者が限られ、選択が少なすぎるということがある。

選挙制度から改革しなければならないのだが、必ず世襲議員たちは反対するだろう。

この”議員世襲”の問題は、政治資金パーティーなんかよりはるかに大きな問題だ!