2014年6月3日から4日までの2日間アメリカのバイクフィッティング機関であるRetulと、エアロポジションの専門機関Alphamantis社との合同講習会『Position For Speed』をロサンゼルスにある室内自転車競技場「VELO Sports Center」にて開催されました。
文字どおりエアロポジションに特化した講習会です。


アメリカ・ロサンゼルスにある室内自転車競技場『VELO Sports Center』
木製250mバンク ロス五輪(1984年)の屋外施設であったものを改修し2004年に室内バンクとしてオープン


自転車を使用するスポーツは常に空気抵抗の問題があり、ライダーのポテンシャルに加えポジショニングと機材の優劣が結果に大きく左右してきます。
そしてこれがロードタイムトライアルや、トラック競技のパシュート競技または長時間のエアロポジション姿勢を強いるロングのトライアスロンでは決定的になります。

現在この空気抵抗について示す係数「Cd」と呼ばれるものがあります。


(D:抵抗or抗力、ρ:空気の密度、Cd:抗力係数、A:前面投影面積、v:速度)
何やら難しい公式を示しましたが、実際には前面投影面積「A」を含めた計算になりますので、一般的にCdA値を採用します。
要はこのCdAの値が低いほど、空気抵抗が少ないと考えて下さい。

ドロップハンドルのバイクでしたらドロップ部を握った状態で0.25、エアロポジションでしたら0.23が成功ベースになります。身体のポテンシャルに応じて当然この数字は増減します。あるトップトライアスリートは0.18という数字を出すそうです。

通常こういった計測は、風洞実験施設で行われるものですが、世界中見渡してもそんな施設は少なく、一般人が容易に利用できるものでもありません。

Alphamantis社は室内自転車競技場という、安定した計測条件下でパワーメーターのPowertap社のAnt+の無線機器と独自開発の計測装置、そしてPCソフトウェアを使用することにより世界で初めて商業ベースにおいて計測サービスをスタートさせました。しかも実走行での計測は革新的です。
詳しい記事については下記が参考になります。(英語)
外部リンク

これまで多くのトップアスリートがAlphamantis社に訪れ、理想的なバイクポジションを得、競技における成功を収めています。
ここでは書けませんが色々な名前の有名アスリートがいます。

ここで驚いたのはエアロポジションでの前傾姿勢で、前傾を深くするだけでは大したCdA値の減少に繋がらないことでした。逆に数値が上がってしまうのです。
こういった事実は実際に私を含む生徒も出される数値を確認していきました。Aphamantis社のAlan Clack氏によると、前傾を強くすることで身体がぶれるようになれば、それだけでも乱気流が発生し空気抵抗が増えるのです。例えば上半身がゆれてしまう、あるいは垂直にきれいな円軌道が描けないペダリングetc..
それだけに、適切なバイクフィッティングは必要不可欠であると強く説いていました。


Alphamantis社が使用するソフトウェア画面


ソフトウェア操作の様子

速く安定した乗車姿勢が求められるため、Alphamantis社はRetulのプロトコルを基準とし、数々のフォームの変化や機材(ヘルメット、ジャージ)を交換しながら、現実的な最適値を導き出すのです。パワーばかり追い求めても、やはり空気抵抗も減らし効率的に速く走りたいものです。


Retulの3Dモーションキャプチャーシステムを使用しながら説明するAlan Clack氏


これまでの勘や独自理論に頼らず、データ分析を取り入れることでアスリートのポテンシャルを1ステップ上げることができることは、非常にすばらしい事です。またこれを知ることで勝利への最短距離を歩むことが可能になります。

Retul代表のTodd Carver氏 Sky、Garminなどのバイクフィッティングを担当。
エアロポジションについて説明する。


私はフォームによって、ライダーに負担無く大きく改善することに大変興味を覚えました。
知っているような話でも、実際に細かな計測値を観察することで、より信用性が高くなります。
当然ながらライダーと対話する重要性も忘れてはいけません。

何が有効な自転車機材かについては、ノウハウの分野になりますので何かの機会にまたお伝えできればと思います。
あるブランドのヘルメットやスキンスーツは本当に使用するだけでCdA値が大きく減少し、技術の進歩に感心しました。
しかしながら各機材メーカーがカタログで示す数値が、必ずしも信用できるかは少し疑問もあることだけはお伝えできるかと思います。


Andy Froncioni氏がテストするヘルメットの微調整をする


機材確認&スタンバイ風景
 私(伏見)もいます


周回数をカウントしライダーを見守るAndy Froncioni氏

毎周回ごとにデータが蓄積されていきます。


こうした目に見えない空気抵抗について、信用性の高い計測方法を用いることは、ホビー競技者からトップアスリートまで大変有益です。

日本の静岡県にある伊豆ヴェロドロームでRetulやAlphamantis社とこういった計測会や講習会を開催できるのではないかと考えております。
伊豆ヴェロドロームはVELO Sports Center同様世界標準の一周250mバンクであり、同一の条件が揃っています。
それだけ日本は恵まれた環境にあるのです。

世界がすでにスタートさせている、ある意味シークレットであったノウハウを早く日本で取り入れていかないと、どんどん取り残されてしまいますね。

今回は短期間のアメリカ滞在でしたが、プライスレスな知識を得ることができ充実した講習会でした。昨年トライアスロン界の名コーチ、Mat Steinmetz氏が言われていたデータに関してあらためて頷くことができました。
私自身のステップアップにも大きく繋がりましたし、どの様に日本国内においてこの分野に関する講習会を開催するか課題も多く感じました。


施設内にはロス五輪に関する掲示物があります。

スプリント競技銅メダル、坂本勉選手の写真もあります。

巨大バナー(画像右端○囲む)にはBIKEFIT社代表のPaul Swift氏の現役時代の勇姿も。伝説の人物です。

利用講習受講済みの一般競技者に施設が開放され、クラブ単位でモーターバイクを取り入れたトレーニングを行っています。子供のクラブから年配のクラブまで様々です。