「ごめん、ひなたちゃん。ちょっと速攻で車返さなきゃなんなくなった。アパート送るの遅くなるかもだけど、大丈夫か?」
運転席のヨシキさんが携帯を閉じながらそう言ったのは、車が走り始めてから約3分後。
いつものように、すばるの家からアパートまで送って貰ってる最中だった。
母の帰って来ない今日、別に急いでアパートに帰る必要はない。
「あたしは全然大丈夫!っていうか、あたしの方こそごめんなさい、ヨシキさん忙しいのに―――」
慌てて後部座席のシートにもたれていた身体を起こし、運転席に向かって声を掛けるあたしを。
「気にすんな。お前が謝らなくて良い」
遮ったのは、隣に座った帝王すばる。
遮ったのは、隣に座った帝王すばる。
そんな事言われても……と、どこまでも俺様思考なすばるに目を遣るあたしを「そうそう、ひなたちゃんが謝る必要はないよ。悪いのは俺だから」なんて、ヨシキさんはしっかりフォローしてくれる。
いや、この場合。
フォローされてるのはあたしではなく、すばるの方に違いない。
フォローされてるのはあたしではなく、すばるの方に違いない。
そんなあたしたちに、全く無関心なのは―――
「欲しかったのは犬なんだよ!ちょっとセイに似た犬があったんだよ!なのに亀って!!犬じゃなくて亀って!!」
―――助手席に座る、もう一人の王者セーヤ。
今日は料亭に来るのが遅いと思ってたら、ゲーセンに寄ってたかららしい。
UFOキャッチャーで、セイに似た犬を取りたかったらしい。
UFOキャッチャーで、セイに似た犬を取りたかったらしい。
でもセーヤが持ってるのは、亀。
パピヨンのセイには、似ても似つかない、亀。
パピヨンのセイには、似ても似つかない、亀。
「亀、欲しい?」
目の前に、差し出される亀。
目の前に、差し出される亀。
「いらない」
丁寧に、断るあたし。
丁寧に、断るあたし。
「亀、可愛いぞ?」
「いらないってば」
「亀だぞ?大好きだろ?」
「そんな事、言った覚えないから」
「‘すばる’って名前の亀だぞ?」
「……何、その笑い。何でそんなニヤついてんの」
「すばるの亀だからだ」
「意味わかんないし」
ヨシキさんが吹き出し、セーヤが何だかイヤらしい笑みを浮かべ、すばるはずっと目を閉じたまま。
車はしばらくの間、走り続けた。
そのスピードと景色的に、アパートからかなり離れた場所らしい、という事だけは分かった。
そのスピードと景色的に、アパートからかなり離れた場所らしい、という事だけは分かった。
「ごめん、すぐ終わらせるから。ちょっとここで待っててくれる?」
そして、ヨシキさんがそう言って車を停めたのは、コンビニの駐車場。
とっても広いスペースの割りに、停まってるのは自転車一台、という駐車場。
とっても広いスペースの割りに、停まってるのは自転車一台、という駐車場。
多分ヨシキさんの事だから、わざわざコンビニに停まってくれたんだろうと思う。
車を降ろされたあたしたちが、手持ち無沙汰にならないように。
車を降ろされたあたしたちが、手持ち無沙汰にならないように。
「ヤニ切れだ」と、入り口でタバコに火を点けるセーヤと亀を残し、あたしとすばるはコンビニへ入った。
すばるとコンビニなんて、初めての経験だ。
ちょっとワクワクした。
すばるとコンビニなんて、初めての経験だ。
ちょっとワクワクした。
いらっしゃいませ~と声を掛けてくれたのは、長い茶髪の前髪を黄色いピンで止めた可愛い店員さん。
彼女目当てでここに通うお客さんも、そこそこ居るんじゃないだろうかと、何となく思った。
彼女目当てでここに通うお客さんも、そこそこ居るんじゃないだろうかと、何となく思った。
「欲しいモン、あったら入れとけ」
と。
すばるに籠を手渡されたあたしは、店内を彷徨いながら迷ったものの、コーラ4本とチョコレート一個を籠に入れた。
すばるに籠を手渡されたあたしは、店内を彷徨いながら迷ったものの、コーラ4本とチョコレート一個を籠に入れた。
よっぽど欲しい物があるのか何なのか、すばるが一ヵ所の商品棚の前から動こうとしないので、あたしは表に居るセーヤに顔を覗かせた。
「欲しい物、何かある?」
声を掛けたセーヤに。
声を掛けたセーヤに。
「タバコ」
即座にそう答えられたあたしは、諦めてドアを閉めた。
即座にそう答えられたあたしは、諦めてドアを閉めた。
買えるワケがなかった。
それからしばらくの間、店内をウロウロしたあたしは「もう良いのか?」と言うすばるの声に、大きく頷いた。
元々欲しい物はなかったし、全員分のコーラもちゃんと入れた。
元々欲しい物はなかったし、全員分のコーラもちゃんと入れた。
可愛い店員さんの居るレジの前で、のんびりと歩いて来るすばるを待った。
近付いて来たすばるが、あたしの持ってる籠の中にポンと商品を投げ入れたので、その籠をレジの台の上に置いた。
店員さんが素敵な笑顔を浮かべたまま、商品を手に取り、バーコードを読み取り始める。
二人で「買い物」なんて、何か新婚みたい……と、隣に並んだすばるの手をそっと握った。
すばるは、そんなあたしの手をギュッと握り返してくれた……
……という、そんな幸せな新婚気分の時間も束の間。
「ひ……っ!!」
目の前の可愛い店員さんの手元に。
うっとりと目を遣ったソコに、ソレを発見したあたしは、思わず声を上げてしまった。
店員さんが素敵な笑顔を浮かべたまま、商品を手に取り、バーコードを読み取り始める。
二人で「買い物」なんて、何か新婚みたい……と、隣に並んだすばるの手をそっと握った。
すばるは、そんなあたしの手をギュッと握り返してくれた……
……という、そんな幸せな新婚気分の時間も束の間。
「ひ……っ!!」
目の前の可愛い店員さんの手元に。
うっとりと目を遣ったソコに、ソレを発見したあたしは、思わず声を上げてしまった。