「お前 すばるに‘別れよう’って言えよ」
それは、曇り空の広がる土曜の午後。
「なぁひな。また賭けやんねェ?」
ソファーに転がって雑誌を読むセーヤが、同じく向かい側のソファーに転がって漫画を読むあたしにそう声を掛けて来た。
すばるはヨシキさんと一緒にタクミさんの元へとお出掛けで、部屋の中にはあたしとセーヤの二人だけだった。
「やらない」
「ってそんな即答されたんじゃハナシになんねェだろーが」
「話をするつもりがないんだから良いの。今あたしは漫画に夢中だから」
「さてはお前ビビってんだろ。素敵で寡黙なセーさんに勝つ自信がねェもんだから」
「‘カモク’って意味、分かって使ってる?」
「スーさんなら絶対ェ‘国語算数理科社会’って答えんだろーな」
「良いじゃん、すばる最高じゃん」
「あっ!!」
「え!?何!?」
「バッカが見る~」
「…………」
「で、どうする?また人生ゲームか?」
「……聞こえなかった?あたし‘やらない’って言ったんだけど」
「何だよお前逃げんのかよ」
「意味わかんないし」
「二回も俺に勝っておいて、まさか勝ち逃げしてやろうって魂胆じゃねェだろーな!?」
「何のインネンだろ。いやぁね~不良って」
「つべこべ言わずに何賭けんのか言え!!今度こそ俺が勝つ!!」
「…………」
実はセーヤとの「賭け」は、今までに2回やった事がある。
勝負は人生ゲームで決めた。
2回ともあたしが勝った。
2回ともあたしが勝った。
いつもビリなあたしなのに、セーヤが出して来た
「カワイイ子紹介しろ」
だとか
「AV借りようとして店員に注意されて来い」
だとかの条件に、絶対負けちゃならねェ!という意識が働いたらしい。
その気合に、勝利の女神が微笑んでくれたらしい。
「カワイイ子紹介しろ」
だとか
「AV借りようとして店員に注意されて来い」
だとかの条件に、絶対負けちゃならねェ!という意識が働いたらしい。
その気合に、勝利の女神が微笑んでくれたらしい。
見事にあたしに負けたセーヤは、潔くあたしの出した条件を飲んだ。
一度目。
セーヤは校庭の真ん中で叫んだ。
セーヤは校庭の真ん中で叫んだ。
「俺は新谷すばるを愛してます!!」
それを、校庭が見渡せる渡り廊下で聞いていたあたしは、突然の佐原聖也の乱心ぶりに、ざわめく周囲の騒動を他所に、お腹を抱えて笑うどころか激しい嫉妬心に苛まれて後悔した。
たとえセーヤでも複雑だ。
すばるに「愛してる」って言うのはあたしだけだ。
すばるに「愛してる」って言うのはあたしだけだ。
だから、二度目の時は考えた。
嫉妬する事なく、心からセーヤを笑う事の出来る条件を。
嫉妬する事なく、心からセーヤを笑う事の出来る条件を。
そもそもセーヤみたいに「人を貶めて笑う」という行為に慣れてないあたしには、それはかなり難しい注文だった。
だから二日ほど考える羽目になった。
そして思い付いた。
「仲良しの真島と、手を繋いで料亭まで帰って来てよ」
まんまと負けたセーヤは、とっても潔く真島と手を繋いで歩いた。
そして思い付いた。
「仲良しの真島と、手を繋いで料亭まで帰って来てよ」
まんまと負けたセーヤは、とっても潔く真島と手を繋いで歩いた。
あたしは、ヨシキさん運転の車の中からそんなセーヤの姿を眺め、涙が出るほど大笑いした。
ヨシキさんと一緒に。
ヨシキさんと一緒に。
すばるは大笑いこそしなかったものの、その表情は緩んでたので、多分楽しかったんだろうと思う。
思いっきり巻き込まれた真島は、
「セーちゃんの事大好きだけど、何か気持ち悪ィよ、どうしたんだよ何があったんだよ」
と、ひっそりあたしに囁いたけど、当然あたしは黙っておいた。
「セーちゃんの事大好きだけど、何か気持ち悪ィよ、どうしたんだよ何があったんだよ」
と、ひっそりあたしに囁いたけど、当然あたしは黙っておいた。
次も勝てるとは限らない。
いつも勝てるとは思えない。
いつも勝てるとは思えない。
「あたし、セーヤみたいに性格悪くないから」
「はぁ?」
「人が困ってるとこ見て、大笑い出来るような性格じゃないから」
「笑ってたじゃねェかよ。ユウと手ェ繋いで歩いてる俺を見て」
「……あっ!」
「残念だなぁ。俺はバカじゃねェ上に、同じ手にはノらねェっての」
「…………」
「負けっぱなってのは俺のプライドが許さねェ」
「…………」
「次は勝つ!」
「…………」
「だから勝ち逃げしてんじゃねェよ」
「…………」
「お前だってそうだろーがよ」
「…………」
「俺の立場だってみ?絶対ェリベンジに燃えるだろーがよ」
「…………」
「それとも怖ェのか」
「…………」
「聞こえねェフリか」
「…………」
「屁ェこくぞ?」
「…………」
「パンツ脱ぐぞ?」
「…………」
「俺はすばるに言い付けるぞ?」
「…………」
「ひなに見られたって。俺の立派な明太―――」
「分かったわよやれば良いんでしょやれば!!」
―――そんなこんなで。
遂に賭け事パート3が行われる事となったワケなんだけど。
「お前、すばるに‘別れよう’って言えよ」
「え、無理だし」
早々に出されたセーヤの条件に、あたしは速攻で音を上げた。
そんなつもりもないのに、そんな事を言わなきゃならない意味がそもそも全く分からない。
そんなつもりもないのに、そんな事を言わなきゃならない意味がそもそも全く分からない。