賭け事 part3 (すばひな&セーヤ) | ひなの。裏ブログ



「お前 すばるに‘別れよう’って言えよ」










それは、曇り空の広がる土曜の午後。


「なぁひな。また賭けやんねェ?」


ソファーに転がって雑誌を読むセーヤが、同じく向かい側のソファーに転がって漫画を読むあたしにそう声を掛けて来た。


すばるはヨシキさんと一緒にタクミさんの元へとお出掛けで、部屋の中にはあたしとセーヤの二人だけだった。


「やらない」

「ってそんな即答されたんじゃハナシになんねェだろーが」

「話をするつもりがないんだから良いの。今あたしは漫画に夢中だから」

「さてはお前ビビってんだろ。素敵で寡黙なセーさんに勝つ自信がねェもんだから」


「‘カモク’って意味、分かって使ってる?」

「スーさんなら絶対ェ‘国語算数理科社会’って答えんだろーな」

「良いじゃん、すばる最高じゃん」

「あっ!!」

「え!?何!?」

「バッカが見る~」

「…………」

「で、どうする?また人生ゲームか?」

「……聞こえなかった?あたし‘やらない’って言ったんだけど」

「何だよお前逃げんのかよ」

「意味わかんないし」

「二回も俺に勝っておいて、まさか勝ち逃げしてやろうって魂胆じゃねェだろーな!?」

「何のインネンだろ。いやぁね~不良って」

「つべこべ言わずに何賭けんのか言え!!今度こそ俺が勝つ!!」

「…………」


実はセーヤとの「賭け」は、今までに2回やった事がある。


勝負は人生ゲームで決めた。
2回ともあたしが勝った。


いつもビリなあたしなのに、セーヤが出して来た
「カワイイ子紹介しろ」
だとか
「AV借りようとして店員に注意されて来い」
だとかの条件に、絶対負けちゃならねェ!という意識が働いたらしい。
その気合に、勝利の女神が微笑んでくれたらしい。


見事にあたしに負けたセーヤは、潔くあたしの出した条件を飲んだ。




一度目。
セーヤは校庭の真ん中で叫んだ。



「俺は新谷すばるを愛してます!!」



それを、校庭が見渡せる渡り廊下で聞いていたあたしは、突然の佐原聖也の乱心ぶりに、ざわめく周囲の騒動を他所に、お腹を抱えて笑うどころか激しい嫉妬心に苛まれて後悔した。


たとえセーヤでも複雑だ。
すばるに「愛してる」って言うのはあたしだけだ。


だから、二度目の時は考えた。
嫉妬する事なく、心からセーヤを笑う事の出来る条件を。


そもそもセーヤみたいに「人を貶めて笑う」という行為に慣れてないあたしには、それはかなり難しい注文だった。


だから二日ほど考える羽目になった。
そして思い付いた。



「仲良しの真島と、手を繋いで料亭まで帰って来てよ」



まんまと負けたセーヤは、とっても潔く真島と手を繋いで歩いた。


あたしは、ヨシキさん運転の車の中からそんなセーヤの姿を眺め、涙が出るほど大笑いした。
ヨシキさんと一緒に。

すばるは大笑いこそしなかったものの、その表情は緩んでたので、多分楽しかったんだろうと思う。


思いっきり巻き込まれた真島は、
「セーちゃんの事大好きだけど、何か気持ち悪ィよ、どうしたんだよ何があったんだよ」
と、ひっそりあたしに囁いたけど、当然あたしは黙っておいた。


次も勝てるとは限らない。
いつも勝てるとは思えない。


「あたし、セーヤみたいに性格悪くないから」

「はぁ?」

「人が困ってるとこ見て、大笑い出来るような性格じゃないから」

「笑ってたじゃねェかよ。ユウと手ェ繋いで歩いてる俺を見て」

「……あっ!」

「残念だなぁ。俺はバカじゃねェ上に、同じ手にはノらねェっての」

「…………」

「負けっぱなってのは俺のプライドが許さねェ」

「…………」

「次は勝つ!」

「…………」

「だから勝ち逃げしてんじゃねェよ」

「…………」

「お前だってそうだろーがよ」

「…………」

「俺の立場だってみ?絶対ェリベンジに燃えるだろーがよ」

「…………」

「それとも怖ェのか」

「…………」

「聞こえねェフリか」

「…………」

「屁ェこくぞ?」

「…………」

「パンツ脱ぐぞ?」

「…………」

「俺はすばるに言い付けるぞ?」

「…………」

「ひなに見られたって。俺の立派な明太―――」

「分かったわよやれば良いんでしょやれば!!」



―――そんなこんなで。



遂に賭け事パート3が行われる事となったワケなんだけど。


「お前、すばるに‘別れよう’って言えよ」

「え、無理だし」


早々に出されたセーヤの条件に、あたしは速攻で音を上げた。
そんなつもりもないのに、そんな事を言わなきゃならない意味がそもそも全く分からない。