かわいそう。

わー、それかわいそうやな。

むっちゃかわいそう。


何回かわいそう言うねん!
ってほっぺたを膨らませる。

買ってきた小さくて可愛くて綺麗なデコレーションのケーキ。

見せようと思って、ソファに座る彼に見えるようにってお皿を傾けたら、ズルズルってお皿の上を滑って、床にダイブしてしもうたの。

ホンマは最初から一緒に食べるつもりで買ってきたのに、

「一人で見せびらかしながら食べようとした罰やんな」

って、ちょっと嫌味に言うから、
ますますなんだか報われない。

「…ちゃうのに…」

ぽそっと反論。

「かわいそうや~。むっちゃかわいそう」

聞こえてないみたい…。


アホみたいに爆笑しながら、床に落ちたケーキと、泣きそうな顔を交互に覗き込んで、また爆笑。

「…もう…うるさい!かわいそうばっか言わんでや!」

少しクリームで汚れた、カラッポのお皿を持ったまま子供みたいに地団駄を踏む。



買い物いくまえに綺麗に掃除したばっかりのフローリングとくっついて
裸足のアシノウラがペタペタって音をたてる。

喚く声よりそっちが大きい。そんくらいの地団駄。

それがなんか、更に彼のツボに入っちゃったみたいで…

「んはっ!ホンマかわいそう!かわいそうすぎる!」
ソファーからずるずる落ちて、床に膝ついてまで爆笑しちゃってる…

もう…もうなんやの。
そんなに笑わんでも…
そんなにかわいそうがらんでも…

ただでさえケーキ落ちて悲しいのに
そろそろホンマに泣けてまうよ…

「かわいそう~」

「そう は言わんで!」

だん!っておっきい地団駄。

「へ? かわいそ… かわい…かわいー?…」

言われたままに返した彼が
いつもは言わない単語をぽろり。

かわいそう

から

そう

を取った、単語をぽろり。

「ちょ、おい。な…何言わすねんっ」

普段滅多に言わない言葉を
うっかり口にしてしまって慌ててる。

焦ってももう遅いよ。もう聞いちゃいましたからね。
なんて、冷静な声で呟きながら
ケーキ拾ってる顔 多分めっちゃにやけてるな…きっと。





ホンマのホンマは その単語を連発したかったんやろ?
知ってるから、言わせてやったんやからね。


そう やろ?