鼻の修正手術をして思うこと〜やり過ぎ鼻の修正やオステオポール除去〜
鼻の修正手術をしていて思うことが多々あります。
“過剰医療(やり過ぎ)” そして “このような異物を入れて大丈夫か” などです。
今回はそんな“やり過ぎ鼻”と、“異物除去”の2例を供覧しながら、
鼻の美容形成について説明します。
まずは、韓国の美容外科で手術(*)をされていた症例です。
(*)手術内容:ゴアテックスによる隆鼻、鼻尖形成、耳介軟骨移植
症状は①眉毛のあたりから高くなる鼻、②鼻尖部は団子鼻が強調、③非常に硬い(ガチガチ)
また「担当医から“ゴアテックスは2枚挿入した”と言われた」、
「鼻尖も細くなるはずが余計に団子鼻が強調されガチガチになった」
などの訴えとともに精神的にもかなり落ち込まれていました。
カウンセリングを複数回にわたって行い、
再手術の術式、リスクなどしっかり説明し手術を行いました。
手術は局所麻酔で行いました。
まず鼻尖部をオープン法より展開すると、
耳介軟骨が鼻翼軟骨一面を覆うような状態でドーム状に移植されていました。
これでは鼻尖部は太くなります。
移植された軟骨を除去(再利用のため確保)したところ、
鼻翼軟骨は瘢痕化が強く変形していました。
瘢痕を切除し本来の鼻翼軟骨を露出し、
次にゴアテックスの除去に取りかかりましたが、
『1枚・・2枚・・・3枚・・・・・・・えっ4枚!?』
2枚のはずが結局4枚のゴアテックスが移植されていました。
その影響か本来の鼻根部(Bottomの位置)が頭側方向にずれ、
両眉毛間にありました(眉毛の間から鼻がはじまっているような状態)。
術前に説明された枚数と、手術によって除去した枚数が異なっているという、
非常にいい加減な手術をされていたわけです。
全てゴアテックス除去も検討しましたが、
鼻根部が低くなりすぎるために、1枚だけトリミングし再挿入し、
鼻根部(Bottomの位置)を両眉間から目頭間へ下方移動しました。
鼻翼軟骨のスーチャーリング(鼻尖縮小)と耳介軟骨で鼻中隔を再建し修正しました。
半年間経過を確認し再手術が必要か判断します。
症例2は、
日本の美容外科で手術(*)されていました。
(*)手術内容:オステオポール挿入による鼻尖形成
症状は①鼻先が下方にむき(魔女鼻)、②鼻孔の変形による左右差
また「担当医からオステオポールは2個挿入したと聞いた」、
「鼻尖は高くなるはずが下に垂れ下がり、鼻の穴が変形し左右差もひどい」、
との訴えがありました。
カウンセリングを行い、
術式、リスクなどしっかり説明し、
まずは異物であるオステオポールを除去すること、
同時に鼻中隔を再建しできるだけ元の状態に戻すことを提案し、
内部の状態によっては、手術が2回になるかもしれないことを確認し手術を行いました。
手術は局所麻酔で行いました。
まず鼻尖部をオープン法より展開すると、
丸く非常に硬い物質1個確認できました。これがオステオポールです。
2個挿入されていたということでしたが、1個しか確認できませんでした。
オステオポールは、下方向に移植されていました。
これでは鼻尖は下を向きます(魔女鼻の形成)。
そこでまず移植されたオステオポールを除去したところ、
鼻翼軟骨は陥没するようにクレーター状に陥没変形していました。
鼻翼軟骨の変形をスーチャーリングによって再建(同時に鼻尖部を縮小)し、
更に鼻中隔軟骨に2枚の耳介軟骨を挟むように補強し、
end-to-endで延長し再建しました。
この症例も術前に説明された個数と、実際に手術によって除去した個数が異なっていました。
非常にいい加減な手術をされていたと思います。
またオステオポールはいずれ吸収されるとはいえ、少し硬すぎる印象があります。
もともとの皮膚が厚ければ、その硬さのために本症例のように軟骨にダメージを与えたり、
皮膚が薄ければ、その硬さのために皮膚にダメージを与え、
結果的に長期的な内側からの圧迫により飛び出してくる可能性もあります。
あるいは鼻の中の粘膜側から飛び出してくる可能性もあります。
鼻の手術をたくさん行っていれば、
中の状態、つまり軟骨がいかにデリケートな組織であることは認識しているはずで、
いくら自家組織を使用しなくてよいとはいえ、やはり異物であり、
このようなものを鼻尖を高くする目的で使用することに抵抗を感じると思います。
私は懐疑的であり全くすすめません。
鼻の手術はデリケートに行うべきであり、
長期的にfollowしていくことが大切です。
手術したら終わり(検診しない)、やってみたい、楽したい、
などは絶対駄目だと思います。
鼻は手術を繰り返せば、瘢痕化で硬くなり柔軟性は失われます。
また感染のリスクも上がります。
主治医とプランニングをしっかりたて、
無理な手術は避け、できるだけ異物は入れないようにして下さい
丸山成一