私が原則行わない美容治療②〜人中短縮・鼻中隔延長術〜
美容外科の手術は多岐にわたって手術の種類が報告され、
また新しい手術が開発されています。
もちろん医師によってそれぞれの術式に対して賛否はあると思いますが、
今回は、他院では行われているが、私が原則行わない手術を解説します。
*患者様の希望があれば、そのリスクを説明し行う場合はあります。
それは①人中短縮術と②鼻中隔延長術です。
①人中短縮術
人中は鼻柱や鼻翼基部(小鼻のつけね)から赤唇までの白唇部分をいいます。
赤唇の2つの山(Cupid's Bow)から鼻柱基部へ向かう2本のスジである人中稜と、
赤唇の1つのボトム(Bottom)からなるります。
ここは口の構造を司る場所で皮下には口輪筋が存在します。
口輪筋は口を閉じる筋肉ですが、
開口に作用する筋肉はたくさんあるので、ここでは省略します。
人中短縮術はこのようなよく動く場所で行うことになります。
傷は鼻の付け根にできますが、このような頻回に動く場所に出来た傷は、
肥厚性瘢痕や傷の幅が広がってきますので結果的に目立ってしまいます。
また人中部の皮膚は短くなりますが、全層で切開しているわけではないので、
口腔粘膜側は変わりません。
つまり口の中と皮膚の長さに違いが生じるわけです。
そのため人中稜の形態が失われる可能性があります。
この2つの理由により私は原則人中短縮を行っていません。
*人中短縮の修正は行っております。
②鼻中隔延長術
まず説明する前に鼻の解剖を理解しておきましょう。
鼻は鼻骨と3つの軟骨から構成されています。
軟骨は外側鼻軟骨、鼻翼軟骨、鼻中隔軟骨です。
外側鼻軟骨と鼻翼軟骨が家の屋根だとしたら、
鼻中隔軟骨はそれを支える柱のようなものです。
私はこの支えが曲がり(鼻中隔湾曲症)、鼻の通過障害があるならば、
鼻中隔軟骨を触るのはありだと思います。
鼻中隔を延長する材料には、
耳介軟骨、肋軟骨、PCLプレートなどの異物、そして鼻中隔軟骨があります。
しかし、鼻中隔軟骨を利用した延長は将来的にその柱を壊す可能性があります。
また私自身PCLプレートによる鼻中隔延長後の修正を行うようになり、
何でもかんでも鼻中隔延長という流れに疑問を感じています。
鼻中隔延長を行うのであれば、
長期的に鼻中隔や延長部分に負荷のかかからないような、
皮膚が柔らかく、そして硬くない症例で行うべきであり、
極力材料も曲がりの少ない肋軟骨を利用すべきでしょう。
PCLプレートで鼻中隔延長が行われ、
最近は鼻中隔軟骨がその飛び出し予防に利用されている場合もあり、
そのような場合は、延長の修正を鼻中隔軟骨を再利用しますが、
原則は肋軟骨でしょう。
ただし、鼻の柔らかさは失われます(豚鼻ができなくなります)。
私は自分がリスクが高いと思う手術や、
患者様の術後満足度が低い手術だと思えば、
出来るだけ行わないようにしています。
しかし、
長期フォローがなされ患者様に問題ないのであれば行います。
患者様も美容外科手術は魔法ではないので、
リスクをしっかり聞いてから行うようにして下さい。
丸山成一