今月、東映黄金時代の忠臣蔵映画DVD3本が同時発売になった。うち2本が大佛次郎原作の「赤穂浪士」、1956年の東映5周年記念作品(市川右太衛門の大石内蔵助)と1961年の10周年記念作品(こちらは片岡千恵蔵)である。


 原作に忠実なのは右太衛門版の方。というよりも、千恵蔵版は大佛次郎原作というのが憚られるくらい、全く別の作品になっている。堀田隼人とお仙の名前は残っているものの、設定も性格もまるで異なる。
 しかし映画としてどちらが面白いかと言えば、これは断然千恵蔵版。両巨頭の(巨顔ではない)にらみ合いは、ひょっとすると日本映画屈指の名場面かも知れない。5年間の技術的進歩もあろうけれど、原作から自由になったことが大きい。もとより原作が名作であるのは疑いなく、この映画をノベライズしたとしても大佛作品に数段劣るのは火を見るより明らかである。しかし、娯楽映画としてはこちらを採りたい。
 要するに、映画と小説は別のメディアだということなのだが、「いい作品」とは何か、考えるとどんどんむずかしくなるようだ。 
2003年12月15日