サンタの贈り物 4 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

少年は、サンタに連れられて、隣の家の中に入った。

(すげぇ~)

「何もとるなよ」

「えっ…解っているよ」

「必要の無いものばかりかもしれないけどな…」

「………」

少年の家は裕福だ。望めばクリスマスでなくてもプレゼントをもらえる。その代償が、親との時間だった。

「お前の親の願いも後で教えてやろうか?」

「えっ…うん」

「そっか…来たぞ」

サンタは、フェアリー・ベルが窓から来るのを指差した。

フェアリー・ベルは、眠っている男の耳元にそっと降り立つと少年の願いを伝えた。そして、母親の元へ行き、何かを伝えた。

翌朝。

「今年もサンタの伝言を聞いたよ」

夫は、苦笑しながら妻に言った。少し困ったような表情だった。

「今年は…何を?」

「旅の思い出、休みの中での旅の思い出」

「……そういえば、旅行に行ってないわね」

「ああ…仕事が、な」

「苦しいときも社員を捨てずにがんばって下った社長さんに報いる為、って皆がんばってきて…お給料もあるのに」

「それでも、旅行にはいけないよ…」

「会社…年中無休だもんね」

「ああ…」

少年は、その話を聞いて胸が苦しくなった。会社が危なかった時代の話は実は知らない。生まれる前の話だろう。不況に次ぐ不況に、多くの会社は社員の首を切った、という。それでも持たなくて潰れた会社も少なくない。少年の祖父は、創業者であり、早くからオートメーション化を図った人物で、会社の財政を圧迫しているのが社員である事は誰の目にも明らかな事実として映っていたが、社員を退社させることを良しとせずに、事業の拡充に努めて、不況を乗り越えた、という。不況時代、社長家族が食べるものに困っていても社員に皺寄せをしなかったということは、古参の社員の誇りであり、その礼に尽くす為の努力が、今日の会社になったという自負を持っていた。

そんな大人の事情など少年にわかるわけも無い。

「ねぇ、どうにか成らないの?」

少年は、今にも泣き出しそうな顔でサンタに尋ねた。

サンタは黙って首を振るだけだ。

「今、見ているのは時を遡った結果、既に答えは出ているわ」

「でも…」

「本当の時間は、まもなくクリスマスよ」

「でも、それでも、何か」

「次に行きましょう…」

サンタは、困ったように微笑みながら、少年の手を引いた。

「もう一度…遡るわ…もう一つの真実が必要だから」

「?」

向かった先は少年の家だった。不思議な事にベッドで自分が寝ているのが見えた。

サンタは、前を飛ぶフェアリー・ベルを指差した。つまり、一晩前に戻ったという事なんだろう。

「あれ…」

「違うがわかるようになたった?」

「ん…アイツに似ている」

「そうね…彼が生み出したからね」

クスっと笑いながらサンタは、フェアリー・ベルを追い抜き両親の部屋へと入った。サンタにとって、壁など無いものらしい。何事も無かった様に通り抜けている。科学の『か』の字も存在しない、不思議だらけの現象がそこにはあった。

フェアリー・ベルは、少年の父の耳とで何かを告げる。続いて母の元へ。

「どうして?」

「これが、必要だからよ…サンタクロースが判断したの、望みの贈り物の為に」

「解らないよ…」

「いえ…あなたは知っているはず…何があったのか…」

「えっ?」

「あなたは、12月24日から来たの…だから、この答えを知っている」

「………」

「現実を見て…」


                                                          (12月22日につづく)