これも恋物語… 第4幕 1 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

第0章 第1話

一真は、栞の背を見送るように「またな」と声をかけた。

栞は、振り返り、一真に微笑みかけると、逃出すよう駆け出した。

「拙かったかな?」

「いえ…大丈夫ですよ……」

一真は、式の途中に駆けつけた如月元太に返事を返した。

「そっか…それにしても、不思議なものだな…」

「えっ?」

「みなぎくんとお前が知り合いだったなんてな…」

「ですよね…」

一真は、栞の背を眺めたまま返事を返した。まだ、何処と無く余韻に浸っているのだろう。

他人の結婚式をコーディネートする立場になって、初めて行った自分自身のコーディネート。それには、何処と無く悔やまれる部分があった。あそこは、ここは…そんな思いが頭を巡っている。一部の隙も無い。そんなコーディネートは、実際は存在していない。それでも、そんなコーディネートを行いたい自分がいる。

誰かが誰かの為に最高の一日を演出したい、と、思う気持ち。そのサポートをするのが仕事だ。

何度も行ってきた演出。その結果は、多分に上々なのだろう。客には、満足そうな笑顔と礼を貰っている。でも、その裏側にあるだろう本心を見る事はない。初めての事を、誰もが精一杯にこなし、後で悔やむ。それで当り前なのだろう。最初から最後まで満足のいく結果を得られる人は少ないものだ。

誓いの言葉。指輪の交換。宣誓…。その何処かで些細なミスがある。それを笑って過ごすのは、それ以外に方法が無いからだろう。確かに、愉しい思い出なのかもしれない。満足のできる思い出がそこにはあるのかもしれない。

素敵な思い出になればなる程に、その思い、後悔は募るのかもしれない。

大切な貴方に誓う言葉。

大切な貴女に誓う想い。

大切な…だからこそ、完璧を追い求めたいのかもしれない。振り返ったとき、一部の隙も無いほどの完璧さを…。

「どうしたの?一真」

如月涼子が、一真の肩を叩いた。

「………別に」

「でも、どうして…彼女は帰るの?」

「生活があるから…」

「えっ…?不倫?」

「……いきなりですね…」

「でも指輪の交換なんて…神様に対する冒涜じゃないの?」

「不倫じゃないですよ…誰もが、それなりに…いろんな事情を持っているものですよ…」

「…うわ~…独り悟ったみたいな事言って…」

「悟りではないですよ…独身でも、入籍も無ければ一緒に生活をしない事もあります」

「そうなんだ…」

涼子は、訝しげな顔で寂しそうに言う一真を見た。一真のそんな表情を見るのは、たぶん初めてだろう。学生時代から、何があってもそれほど取り乱さずに対処していく。それが当たり前のように、飄々として適切にこなしてきているのを見てきた。どんなに内面で焦っていても、そんな素振りをおくびもださない。そんな青年は、結婚の時も離婚の時も何事もなく過ごしているようにしか見えなかった。

独りで生きていられる。そんな風に見える事も少なくなかった青年は、大人になって一層その印象を強めてきていた。

「どうした?涼子」

「ん…珍しいなって…」

元太は、涼子の肩を抱き寄せ「色々あるもんだぜ…男には、さ」と囁き、一真に背を向け、教会へと戻っていった。

「何?一体…」

「あいつがあまり見せない顔は…見せたくない顔さ…すぐに…いつものアイツで戻ってくるからさ」

「男同士だから解るの?」

「ああ…」

「ずるい…それ」

「…俺はどちらかというと…義姉さんの方が気になるけど…」

「……やっぱり?」

「ああ…」

「何も知らないの?」

「残念ながら…知らないね…みなぎ君との事もさっきお前に聞いたくらいだからさ…」

「そっか…」