これも恋物語… 第3幕 38 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

第4章 第10話


いつでも愚痴を零すのは自分の方が多い。助けてもらうのも。

「栞!」

「戻っていいよ…綾香…大丈夫だから…」

「でも…」

「酷いよね…あたし……」

「えっ……」

「一瞬でも受け入れてもいいかなって思った…ずっと変わらずに告白しようとし続けてくれる坊やを見て…でも、そんなのは嘘…好きでいてくれる事にしがみ付いていただけ…離れないように…一生懸命しがみ付いて…全部自分本位に…」

「……栞」

「でも、会える時間が減ったけど…一真が好き…」

「ん…大丈夫?」

「うん…またね」

栞は、綾香の顔を見ずにそう言うと駆けていった。

立ち止まれば、涙が溢れそうだった。

何処まで走ったのか覚えていないけれど、息が切れ、足を止めて、電話を取り出した。

『…留守番電話サービスセンターです…発信音の後にメッセージを録音してください…ぴーっ』

「……栞です…逢いたいよ………」

何を言えば良いのだろう。何を伝えなければいけないんだろう。今の自分を見て欲しくない。でも、知って欲しい。強いばかりでいられないと言う事を。何かにしがみ付いていないといけない現実を。

怖かった。亡くすのが怖かった。

偶々、知り合った。駆け引きなしに惹かれた。

何に?そう考える事もあるけれど、考えきれないものがあった。

愛している。好き。恋している。どの言葉があっているのだろうか。

その言葉を伝えればいいんだろうか。

(無理よね…この時間…)

栞は、時計を見て溜息をついた。23時少し過ぎ。呑み会にいっていれば、まだ呑んでいるだろうし、付き合いの中抜け出す事も叶わないだろう。帰っていれば案外寝ているかもしれない。どちらにしても留守番サービスに繋がったなりの理由はあるはずだった。

「…ごめんね、こんな時間に、言ってみただけ」

栞は、溜息をついて、歩き出した。

「何しているの?」

綾香は、店の前で呆然としている孝之に声をかけた。

「えっ…?」

「振られたんでしょ?」

「……はぁ…」

「できる事をしなさいよ…」

「何ができるんですか?」

孝之は投げやりに言った。

「何も…でも、結果を見届けるとか…忘れるとかはできるでしょ…」

「………」

「振られて終わりもいいけど…次に向かいなさいよ…」

「………」

孝之は、ばつの悪そうに微笑むと走り出した。

(世話の焼ける坊や…)

綾香は、溜息をつきルームへと戻っていった。


第4章 第1話

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