これも恋物語… 第3幕 36 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

第4章 第8話


「で、どうだったの?」

「えっ?」

「魅力的だった?」

「栞…」

「だって、他に聞くこと無いし」

「……莫迦」

「あはは…貴女が言うな」

「だよね…」

2つ目の恋が始まったのは、それから一月もしないうちだった。専門学校の講師だった。理を説き、利を説いた講師。その明朗な説明に惹かれた。生徒と教師の恋も、こんなところから始まるのだろうか。ただ、学生の頃のように好きを好きと簡単に言えない自分がいる事だけは確かだった。それにこの恋心が勘違いである事もわかっていた。

一面だけを見る恋。そこから始まる恋も少なくは無い。そこから深く知り合っていけばいい。別に順番などあるわけではないのだから。

だから綾香は笑いながら言った。「セックスから始まる愛でもいいじゃない」と。もちろん、大部分がいい訳であるが…。

恋に恋する人もいる。それはそれでいいと思う。でも自分がするかといえばしないだろうと思う。シチュエーションに恋をする人もいる。それを否定する気も無いがシチュエーションに恋をする気は無い。自分は自分だと格好をつけているだけかもしれない。大部分の人と同じような考え方をしていれば楽な事は間違いがないが、それでは、自分が薄すぎる気がして嫌だった。

だから、普通に恋する女が講義を受けている。というわけにはいかなかった。

でも、それを逆手にとって愉しむ事はできた。

好きです。と、いわなくても、気に入った講師の講義を愉しんで聞くだけで、成果は格段にあがる。その勘違いを間違わないようにする事が大切なだけで。

講義も終盤に入ると講師たちと呑みに行く機会も必然に増える。テーブルマナーをはじめ、色んな店での仕事の展開を自分達の感性で見て、感じ取ることが大切になってくるからだった。

栞のクラスは、10名のAAAプランナー養成講座という事もあり、メンバーが必然的に仲良くなっていた。その為、講師との距離も必然的に縮まっていた。

そんな呑み会の後、偶々、同じ列車に乗り合わせた栞に講師が声をかけた。

「センセー…」

「真っ直ぐ帰るンスか?」

「えっ…ええ…娘が待っていますから」

「あっ、ご結婚なさっているンスか?」

「……一応、していたですね」

「ああ~これは失礼な事を」

「いいえ…お気になさらずに」

「離婚されたという事は、独身でしょ?恋人が怖い方でなかったら呑みにでも行きませんか?後は卒業試験だけだし」

「……いいですよ…まだ、少し時間があるし」

「だったらいい店を知っているんですよ…3つほど先の駅ですけど」

「あたしの降りる駅ですね…」

「……そうなンスか?」

「ええ…」

「俺、駅上に住んでいるンスよ…まぁ、家に誘うわけにもいかないですけどね」

「えっ、どうして?」

「だって、目的がそれだけみたいでしょ…そういうのも嫌いじゃないけど…スマートさが必要でしょ」

「…それが目的なんだ」

「まぁ、否定はしませんけどね…好みの女性を自分の恋人にしたい…それが一番ですけどね」

「……結構、口説きにくいみたいですよ…あたし」

「いいですよ…口説くか口説かないかは、その場の流れもあるだろうけど…好みだし、俺フリーだし、あっ…えっと…上条さんは、フリーですか?」

「…子供つきですよ」

「関係ないでしょ…貴女は貴女だし…子供とは別問題でしょ」

単純明快な答え。そこには嘘がないのだろう。自分だけを見ているから、他のものは別問題として捕らえる。他の問題はどうせ後で考える問題だし、と。

流れるように、彼との関係は始まった。卒業式、その日を待っていたかのように告白をされた。特に断る理由も無かった。ただ、相手に妻が居る事を知ったのは、ホテルで抱かれた後だった。


第4章 第1話

http://ameblo.jp/hikarinoguchi/entry-10006957121.html