これも恋物語… 第3幕13 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

第1章 第8話


不思議と寂しさが無かった。空虚感は、いつでもあった。出会った柏木士十郎は、何処かギラギラとしていた。一真とは、違ったギラツキを放ち、気付いたものを引き込む魔力のようなものを持っていた。ただ、そのギラツキが、欲望だけに感じられた。

いままでの日々までを消すほど浅はかなつもりは無い。

大切な思い出として心になおせばいい。誰かに語るべき事でもない。たかだか半年程度の恋だった。夢を見ていた。それで、全てを収める事ができる。つもりだった。

千尋は、ホテルを見上げた。あの部屋を使う事はもう無いのだろう。いや、使うとすれば、自分が役員になった時の緊急時対応の為だろう。

『はい…五井物産でございます』

「お世話になっております…私、五洋電気の麻生と申しますが、新規事業本部企画室の天城様に繋いでいただけないでしょうか?」

『かしこまりました…天城ですね、新規事業本部企画室にお繋ぎいたします』


「酷いな…」

「……柏木さんの為に俺に連絡をよこしたのは覚えているよ…」

「……その程度ですか?」

「まぁ、仕方ないだろう…名刺交換はしたけど…それ以降顔をあわせてないし…」

一真は、苦笑しながら、千尋にビールを注いだ。

「なんだ、関係があったのか?お前達」

梅崎が、千尋と一真の間に顔を突っ込みながら尋ねた。

「ええ…柏木取締役と組んでいた時に…」

「あっ…不倫相手ね…」

「えっ?」

「柏木さんの」

「えっ…」

「ばれていないつもりだった?」

梅崎は幾分声のトーンを落しながら苦笑した。

「……はい」

「梅崎さんは、ゲイで、同じホテルを良く使っていたらしいよ」と、一真は、千尋に耳打ちをした。

「えっ…」

千尋は、梅崎の顔を見た。結構、恐る恐る。実は浮いた噂の無い梅崎は、会社内でもその事が囁かれていた。言い寄る女性社員に対して、のらりくらいと交わし、噂通り、女性社員と勤務時間以外で二人きりで食事に行くようなことは無かった。その反面、部下などの男性社員とは、2人だけで呑みに行くこともざらだった。

「一真……」

「冗談ですよ…」

「えっ…社長も専務も知り合い?」

「既に5年前には,この会社の計画が立っていたんだ…柏木さんは、知らなかったのかもしれないけど…うちの如月、五菱の大伴さん、この会社に最終的に参加はできなかったが、東都生命の小倉取締役、俺と立川さん、で神崎さんと須賀さんは、件のホテルを主会議場として利用していたんだ…」

「……じゃあ…」

「ああ…お前の依頼は、パイプを作るのに丁度良かったんだ…五洋グループの内情を知るのにな…」

「………」

「だから、この計画の本当の推進者は、五洋グループ相談役望月藤十郎なんだよ…俺と柏木さんとの関係を気遣って、望月の御大が柏木さんを窓口に指名したんだ…」

「そうなんだ」

「まぁ、裏方が走り回るのはどの世界でも同じ事さ…ただ、表舞台にだけ眼をやると失策もするということだな…気をつけないとな」

「何々、恋の話?あたし達も混ぜてよ…」

顔中を高揚とさせながら上山綾乃が声をかけた。

「それと…」

「ん?」

「大学のサークルの後輩なんだ…千尋は…」

「えっ、あっ…思い出してくれたんですか?」

「失礼だな…最初からわかっていたさ…」

「あれ、そうなんですか?」

「ああ…」

「だったら、社長のハートを射止めます!」

「……俺恋人がいるから、他をあたってくれ」

「えっ…また、振られるんですか?あたし」

                                    千尋の恋物語 


第1話

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