これも恋物語… 第2幕 32 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

第3章 第5話


「白血病は、大別して急性と慢性に分けられているけれど、白血病における急性、慢性は一般的に用いる意味とは違っていて、腫瘍細胞が分化能を失ったものを急性白血病、分化能を保っているものを慢性白血病と呼んでいる……また、腫瘍の起源となった細胞が骨髄系の細胞かリンパ球系の細胞かによって骨髄性白血病、リンパ性白血病に分類されている…単純になるけれど、大きく4種類に分類されるのが白血病だ…もちろん、これらも、さらに生物学的な性質から細分されている…(この子は…)」

医師の説明を聞きながら、みなぎは、メモを取っていた。話している内容全てではなく、自分に必要な部分だけをチョイスして。

「原因は、残念ながら明らかでないものが多い…多くの白血病細胞では染色体の欠失や転位が認められ、自律増殖能の獲得との関連が示されていたり、放射線被曝、ベンゼンなど一部の化学物質などは発症のリスクファクターとなるとも言われている……その他にウイルスが原因であるものが知られている…けど、君の場合は、その特定には至っていない…治療法としては、化学療法、造血幹細胞移植、骨髄移植、臍帯血移植、末梢血幹細胞移植、分化誘導療法などが有るんだけど、確立されていないものも有る」

「それで……」

「(聡明な男だな…)……いまできるのは、化学療法を中心とした、海外で成功事例が有るものを中心に、という事になるな…」

医師は、そこで言葉を区切った。親に話すのは、実際上はこの部分がウエイトを占めるからだった。保険適用が必ずしもされきらない治療には莫大な費用がかかる事が有る。残念ながら、費用負担ができないのなら、国が肩代わりをしようとシステムは存在していない。

何よりも、まだ明確な治療方法が確立されていない中での話しだけに、医師としても頭が痛かった。

ここ西条記念総合病院では、先駆的な治療が常に取り入れられている。それでも、全ての病気に対応できるわけではない。

力の無さを痛感しながら、高間は、机に置かれた写真を手にした。

「医学は、常に発展と進歩の中にあり、今日発見された病気の治療法が翌日に見つかる事も不思議では無い世界だ……だからこそ、病気で、未来を諦めて欲しくない……」

「えっ?」

「絶望的な目をしている…」

「…正直なんですね…」

「ん?ああ……もう十年前になるかな……俺は、一人の女性を好きになった…彼女もまた白血病だった…いまほど、色んな事がわかっていなかった時代、治療法も見付からない中で…俺は、医師を目指した…何ができるかはわからない、ただ、何もせずに無力なままの自分でいる事は、どこか恥しく感じた」

「えっ…」

高間は、みなぎに向きなおし、微笑を零すと写真盾を机において話しを続けた。

「俺の本当の名前は、西条って言うんだ…ここの院長の義理の息子なんだ…18の時入籍した…バイトしながら勉強をして、馬鹿ほどの借金を背負って医者になった…まだ、何年かは借金を返させないといけないんだけど……妻は、可能性のある治療には何でも挑戦した…苦しくても弱音を吐くことなく…もちろん、見えていないところで泣いただろうな…なんで自分だけがつらい思いをするんだろうって、色んなものを呪ったかもしれない…それでも……彼女は必死に戦った…彼女にあった治療法は見付からないまま、あいつは行ってしまったけど…発祥から8年あいつはがんばってくれた…」

「………」

「だから、人にいえることでは無いけれど…頑張ってみないか?」

「いい人だね、貴方は…少し考えさせてよ…」

「ああ…」

高間は、みなぎを見送った。当事者でしかわからない苦しみが有る。

少なくとも家族の苦しみだけはわかってあげる事ができる。だが、そこまでに過ぎない。


第1話

http://ameblo.jp/hikarinoguchi/entry-10005517680.html