これも恋物語… 第2幕 23 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

第2章 第7話


「どうするの?」

「どうもしない」

「でも…」

「振られるのを見ていましたって言うのか?」

「それは…」

「だろ…だったら、答えはひとつ、何も知らない…」

「みなぎ」

「泣きたい時も有るさ…泣かせてやれよ…なくことが悪い事ではないし、自分を捨てなければな」

「……冷たいんだか、暖かいんだか」

「俺は、クールに行きたいね…」

「莫迦…」

由美に言われながらみなぎは、ミラーに映る勇太郎を見た。シチエーションからいって、振られたことに間違いは無いだろう。それ以外の事は考えられない。

(でも、それでいいのか?白鳥…)

「あれは、迷子じゃないの?」

「……迷子だろうね」

「でも、ほっておくんだ」

「ああ…へたり込んでいるだけじゃ何もかわらない…自分で一歩を踏み出してこそだからな」

「ん…そうだね」

それから、ほぼ一年。勇太郎は、武道に躍進した。何かに取り付かれたように、高校デビューの割には全国ランクを得るまでに成長した。それは、事態を怖がった自分を変える為に選択した事だった。あの時、梢が背を向けたとき、その腕を掴まなかった自分に対する戒めでもあった。

そして、梢も変わっていた。

地区規模最大級の暴走族『ブラックキャット』のマスコットとして、夜の街の女王的存在となっていた。それは、自分を守る為に研いだ牙の結果だった。そして、自分を偽る鎧でもあった。

「みなぎ…」

「ん?下がっていろ…」

勇太郎は、周囲を見回しながらみなぎに駆け寄った。

地区最大と言われる暴走族の集会のど真ん中でみなぎは、真っ白なZZRに跨ったままヘルメットを勇太郎に渡した。

「でも…」

「俺とお前では、立場が違う…だから…下がっていろ…」

「何かあったら、由美に申し訳が…」

「ごめん、でいいよ…」

「えっ?」

「その時は、悪者になってくれ、『止められなかった、ごめん』でいい」

「みなぎ…」

「それに、お前は迷子じゃないだろ…」

「えっ…」

「俺は、今回は、違う迷子の相手だから…お前には関係ないぜ…」

「………」

「勇太郎、下がれよ…」

「大槻…」

「よ…賢治、見届けか?」

「ああ…負けたら、大変だからな…徒党を組んできたぜ…」

「…ありがとう…で、その中学生は?」

「ん?うちに絡んできた元気な子さ…一真って言うんだけど…」

「まぁ、よろしくな…安藤みなぎだ…」

みなぎの真っ直ぐな視線に息を呑みながら、一真は、「天城一真です」と名乗った。

「それで……何が原因だ?」

「マスコットをレースで買ったらくれと…」

「また、えげつない要求だな…」

「仮面は、落ちかけの時が大変だからな…」

みなぎの言葉に賢治は、梢を見た。前に見たときと、雰囲気が違う。

マスコットは、通常、チームの誰かと関係を持つことは無い。要らぬトラブルを招く結果になるからだ。何よりもチームを持たない存在がマスコットになる。あくまでもお飾りと言う存在だ。とはいえ、それなりに喧嘩は強いのは必須なのだが。

以前に見た梢は、レディースの総長として斜に構えていた。だが、同じ格好を気取っていてもいまは何処か違う。漠然とした何かだったが、何かが違った。

「理由は知っているのか?」

「ん…ニュースを騒がしていた抗争は落ち着いて、神崎代表は、更新に道を譲る事にしたそうだ…」

「……それで?」

「突っ張り続ける必要は何処にも無い…と、なれば…」

「なるほどね……」

「で、天城って言ったけ…チームとの落とし前があるんだよな…」

「えっ…ああ…」

一真は、虚勢を張るように返事を返した。既にどうしていいのか解らなくなっている。流されるように流されて、辿り着いたのが、この結果だった。迷子と言えば、そうなのだろう。それほど年は変わらないが、この男達の方が経験は豊富で思量深いと思えた。

「突っ張るのは好きか?」

クスリと笑いながらみなぎが言った。

「貴方こそ…」

「ん?俺は嫌いだな…ただ、友がいる…苦しみ抜いた先に見つけた出口に辿り着こうとする友がいる…そして、友と繋がりの深い人がいる…自分の思いを噛み殺してでも、想いに背を向けなければいけない人が…それをくくる柵は、切ることができるのに……自分できる事ができない…」

「……おせっかい焼?」

「まぁ、そうだな……でも、さ…いつでも、どんな時でも…一歩踏み出したい時が有るだろう…そんな時、自分が作った柵があったらどうする?」

「えっ?」

「柵は、相互の関係だけど、相互だけでは、どうする事もではできない事が有る…俺は、俺が勝手をする裏側でできてきている柵の全てを把握できない…でも、俺の仲間には、それが見える事も有る…ただ、誰かが背を押すだけで、進めるのなら…気付いたものが背を押してやればいい」

「アンタ、莫迦だろう」

「かもな…」

みなぎはそう言って笑った。爽快な笑顔だった。

「お前の落とし前も、おせっかい焼きついでにしてやるよ…」

「えっ?」

「乗れよ…タンデムレースだ…チキンランっていう名のな…だから、命の保障はできない…俺にも」

「………」

「運がよければ、速度の向こう側が見られるぜ…」

「……乗れば良いのか?」

一真は、そう言いながらみなぎに近付いた。みなぎは、タンデムシートのステップを使えるようにすると一真を招いた。

「あっ、勇太郎…」

「ん?」

「俺は、鎖を引きちぎってやれるけど…受け止めるのは、お前の気持ちしだいだぜ…アイツの横に行く気がないのなら……スタートしたら、消えろ…」

「みなぎ…」


第2章 第1話

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