これも恋物語…1-① | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

栞の物語1

ん~っ。
上条栞は、伸びをしながらスナックのドアを開けた。スナックでの仕事はバイトだ。特別に金銭的に困っているわけではない。ただ、弄ぶ時間を埋めるために始めただけだった。他にも、英会話、駅前留学というものも始めてみた。
そこには、大した目的は無い。ただ、人にめぐり合える。いろんな人に。それだけが理由だった。
「お疲れ…」
「お疲れ様…」
栞は、振り返りながら笑顔を溢した。その笑みの裏側に疲れがあることを知っているものは少ない。知っているのは、一緒に暮らしているネコくらいだった。
今年で35歳。女一人35年。色々な事がある。色々な事があった。それをどうこういう気は無い。いい事も悪い事もあった。嫌なことはさっさと忘れる事にして、楽しい事を追い求めて、追いかけてきた。それでいいとは思わないが、とりあえず不満は無い。自分にできる精一杯の日々を全力で過ごすだけだった。
0時過ぎ。
バイトの後に家に辿り着く時間はそんなものだ。
「お帰り…ママ」
「ん……ただいま…」
玄関を入ると愛娘がグラスに水を入れて微笑みかけてくれた。
高校受験を控え、娘は夜遅くまで勉強をしていている。親の引け目ではなく、それなりにできている方だと思うのだが、それでも足りないと頑張っている。誰に似たのか、強情で、負けん気が強い。その癖泣き虫だ。
この子が、真奈美がいたから、いままでやってこられたのかもしれない。
真奈美だけが生きがいだとは言わないが、真奈美に支えられてきた。苦しい時、つらい時、真奈美の寝顔を見るだけで元気が沸いてきた。
誰もが、何かを支えにしている。人は、決して独りではいられない。望む、望まないにせよ、誰かが支えてくれている。誰かを支えてくれている。
「お酒、呑みすぎていない?」
「ん…今日は、ビール少しだけ…」
「そう…お風呂は入れるけど…」
「ん…入る…ありがと…」
栞は、グラスを栞に渡しながら、クスッと笑みを溢した。