ふぁーすと・きす 2 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

「ま、待ってよ」

まどかは、何事も無かったよう偽を向けて去っていく雄大を追いかけるようにして腕にしがみついた。

(疲れきっているのか…身体まで重い…)

「ちょっと・・・大声出すわよ!」

うんざりした様にまどかは言った。足を止め、体重をしっかりと雄大の腕にかけて。

「……わかった、で」

雄大は、溜息をつきながらまどかを見た。初めて会ったのは、8年ほど前になるだろうか。まだ、24歳の駆け出しのカメラマンだった。カメラマンとしては、多分に運が良いほうだろう。何のコネクションも持たずに雑誌のグラビア専属カメラマンをやれていたのだから。天狗になりかけた事もあるが、幸いにして天狗になる間もないほどに企画に振り回されて仕事を続けてきた。アイドル路線では、売れなかったまどかが女優で成功するとは、誰も思わずに、人気を勝ち取ったアイドル達を引き立てる写真だけを撮り続けてきた。だから、まどかとは、デビュー企画のグラビア撮影依頼だった。ピンではなく、集団の中の一つとして…。

「お願いがあるの…」

「俺に?」

「そう…しがないカメラマンだぜ…一流所と程とおい企画専門の…」

「うん…その前に、思い出して欲しいな…」

「何を?」

「約束」

「約束?」

「そう…」

「…(何だ…8年前の約束…)」

「とりあえず…行きましょう…」

「?」

まどかは、雄大と腕を組み歩き始めた。いい加減に周囲がまどかの存在を疑い始める頃だった。それにしても不思議なものだ。スタッフを連れていない、誰もまどかに気付かない。別に変装しているわけでも無いのに。

「今日の予定は?」

「撮影が一本残っている…」

「一之瀬さんって、まだ助手つけてないの?」

「ああ…いないね…」

「そうなんだ…」

「ん…いたらいたで便利なんだろうけど…どうかな」

「?」

「人を使うのは難しいからさ…独りが気楽でいいよ…やっぱり…それに、責任は自分で取れbな良いわけだし」

「そういうものなのかな…」

「ああ…きっとね…」

 

雄大は、まどかと当たり障りの無い話しをしながら隅田川の遊歩道へとたどりついた。既に被写体になるアイドルが来ている。雑誌社のスタッフも。

「本当に手伝うのか?」と、雄大が、囁く様にしてまどかに聞いた。

「うん」

「まぁ、ばれないように…」

雄大は、鞄の中から赤いキャップを取り出すとまどかに被せた。

「あっ…どうも」

「いいえ…スキャンダルは、困るでしょ・・お互い」

「あら、あたしは良いわよ…」

「俺は遠慮するよ…君のところの事務所大手だからさ…」

(もう…本当に忘れたんだ…)

まどかは、雄大のカメラバックを担ぎながら、雄大がスタッフ達の打ち合わせに行くのを見送った。