未来へ… 10 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

「花を買いに行こうか」

「……うん」

麻奈は、少し躊躇したように答えた。よく解らない。そんな感じでキョトンとしながら。

そこには矛盾がある。その矛盾は、誰もが何時かは感じものだった。当たり前のようでいて当たり前ではない。そんな矛盾がそこにはあった。無垢な存在だからこそ、いまから多くの疑問を見つけるだろう。いや、今までにも多くの疑問を見つけてきただろう。その中で、幾つもの矛盾を見つけていたはずだ。でも、それを矛盾として理解している事は無い。

健太は、麻奈を見つめる様にして少し考えた。

どう伝えるべきなんだろう。

きっと社会が起こした矛盾が此処に凝縮されている。そう思えて仕方が無かった。

鶏や牛、豚、魚は、殺して食べる事を否定する。でも、買って食べる事は普通の事だ。それは、健太の世界における常識だった。蓄膿家や猟師では、それは普通に行われる仕事として。それを否定する事は無い。それに、肉類は好きだ。だから、かって食べている。

社会のルール。それは、何をさすのだろう。

常識、良識、その何処に境があるのだろう。それらは、育つ時の流れの中で身につけてきたものだ。たぶん、健太の世界でのルールのはずだ。

それを麻奈に押し付けるのは正しいのだろうか。

全てのものに命は宿る。宗教家みたいな事をいう気は無いが、そう感じる事は大切だと思っている。この自分という小さなテリトリーの世界に存在する全てのものに意味がある。全ての想いに意味があるはずだ。不必要なものなど存在していないはずだ。

「あのね…健太」

「ん?」

「大丈夫…えっと……答えは見付かる」

「……そうだな…」

それは、弥生の口癖のようなものだった。

『答えは見付かる』、いま出した答えが必ずしも正解ではない。時の流れの中にいて、感じた、得た情報の中で出した今のベストが、一つの答えであって、それが絶対ではない。少し先の未来では、その答えは変わるかもしれない。その時に、修正すれば良い。間違っていたのなら、頭を下げればいい。そう、あっけらかんとして弥生は言っていた。

「矛盾だね…」

「?むじゅん」

「ああ…矛盾だ」

「?」

「これは良いけど、これは駄目……今は良いけど、後は駄目…、おかしいよね」

「?」

「きっとね…俺は、俺の生活の中で、俺の価値観の中で…」

健太は、空をフッと見上げた。常識、良識……それらは知識に過ぎない。それを人に押し付ける必要は無い。自分はそう感じている。だから、お前もそう感じろ。では、何も変わらないし、意味が無い。自分の考えは、自分だけのものであり、他人に押し付けるものではない。とかく、親は、子に自分の価値観を押し付ける。自分にとっての都合の良さだけを、ごまかして。

「?」

「ごめんな…難しいや、正確に伝えるのって…」

「うん、大丈夫…ママも一杯知らない言葉使った…」

「そっか…」

健太は、麻奈の視線までしゃがみこんだ。

虫を殺す。害虫という定義は誰がつけたのだろう。彼らは彼らで生きているのに。でも、虫を殺す。自分に不利益だから。実に、見事なまでに身勝手だ。でも、それを否定しない。

命を奪ってはいけない。

そう教えられているのに、それに反した事も教えられている。

そこに疑問は生じなかった。周りがそれをしているのだから。

きっと、その人にとっての良識や常識、世界のルールはそうしてつくられるのだろう。

「健太?」

麻奈は、土で汚れた手で健太の顔を自分のほうに向けた。

「ん?」

「大丈夫?」

「ああ……大丈夫」

健太は、麻奈を抱き上げた。この子は、きっと未来へ繋がる光になる。学ぶ事に、早いも遅いも無い。一緒に学んでいけば良い。色々な事を。これから、ゆっくりと。

「一杯、これから一杯、いろんな事を知っていこう」

「?」

「麻奈が知っている事、俺が知っている事、いろいろな疑問を、一緒になって考えていこう…矛盾もその中では、幾つもあるだろうけど……正しい答えが見付からないかもしれないけれど…一緒に考えていこう」

「うん」




第1話へ

http://hikarinoguchi.ameblo.jp/entry-6b0fb58af32e2be88913b48b10f563ae.html