これから… 5 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

「麻奈……」

「ん?何処が痛いの?健太?」

麻奈は、健太のうなだれた頭を撫でながら聞いた。

「痛いの痛いの…飛んでいけ~」

「…麻奈…」

健太は、クスッと笑みを溢した。涙でベタベタになった顔を上げて…。

「大丈夫?」

「ああ…ありがとう…」

正直に言えば、涙がいつまで止まっているのか解らない。弥生の事を伝える言葉を考えれば考えるほど涙が溢れ出しそうだった。どうしようもないほどに…。

「ママの事はほっておいて、お腹すいたね?」

「(えっ…?)……あっ、そうだな…何が食べたい?」

「ん~…健太は、何が好き?」

「嫌いなものは……昆虫かな…」

「昆虫?」

「虫…」

「あっ、麻奈もそれは嫌、……一緒だね」

「(そうか……)そうだな…」

健太は、キッチンへと向かった。何か食べれるものがあるだろうか。もしも、弥生が健太の知っているままだったら、冷凍庫に作りかけのものが入っているだろう。二人で生活する知恵の一つとして、大量にベースになるものを作り、必要分ずつ小分けをして冷凍庫に入れておく。少量で同じものを作るよりもはるかに美味しいものが食べられると笑っていたのも既に思い出だった。

「!」

「あっ…」

麻奈は、冷凍庫の食材に感嘆の声を上げた。弥生は、1週間程度家にいなかった。その間、麻奈は早苗の家で世話になっていた。朝起きて、病院にいって早苗に迎えに来てもらって早苗の家に帰る。そんな生活を続けていた。早苗のご飯が美味しくないわけではないが、弥生のご飯のほうが好きだった。

「何でもいいのか?」

「うん…」

「シチューでも、カレーでも、シチューでも良いよ…」

「……OK、ところで」

健太は、返事を返しながら備え付けの食器棚の引き出しから二種類のルーを取り出して麻奈を見た。

「?」

「クリームとコーン、ビーフとあるけど…どれがいい?」

「シチューしてくれるの?」

「ああ・・・シチューとパンが食べたいんだ…」

「あ~一緒だ…麻奈ね、ビーフ」

「そうか…偶然だな……」

健太は、弥生に教えてもらった手順で料理を開始した。ベースとなる食材の近くにはルーにあわせた肉類が冷凍庫には置かれている。これも弥生の癖のようなものだろう。食べたいと思った時に材料が無いのは嫌なのだろう。肉をレンジで適度に解凍させ、少量の油で周囲を炒め、お酒を少々、解凍したベース材をいれて、コトコトと煮込みこみ…ルーを投入して完了。ルーを入れる頃に、冷凍庫からガチガチに凍っている食パンを取り出してトースターで…。

「おまたせ…」

健太は、フーッと息を抜きながらテーブルにシチューを置いた。

(これ…)

さっき少しだけ見たノートを手に取り麻奈を見た。

「ありがとう、健太」

「どうぞ…召し上がれ…」

「うん…いただきます」

「どうぞ…」

「あっ、健太は?」

「ん…そうだな」

健太は、慌てて自分の分のシチューを注いだ。麻奈が、健太を見詰めたまま、手にしたスプーンをテーブルに置いたからだった。そういえば、弥生は、一緒に、といって健太が食べ始めるまで待っていてくれた。きっと麻奈との生活でもそれは変わらなかったのだろう。

「おいしいね」

「ああ…弥生が作っていてくれたらね」

「………」

「こんなに美味しいものはいつも作れないぜ」

「?…大丈夫、ママが帰ってきたら、いっぱい作ってもらおうね…健太」

「……ああ…」

 

食事を終えると麻奈は眠ってしまった。

疲れたのだろう。お通夜に、お葬式に……。きっと、色々といわれただろう。解らないままに、それを聞いていたのだろう。言葉の意味は伝わらなくても雰囲気は伝わる。誰が言ったのかはしらないが、麻奈は引き取られたくないといわれていたのを感じ取ったのだろう。

早苗が、何故、ギリギリまで家の事を言わなかったのかはわからない。

とりあえず早苗の旦那さんは弁護士だったはずだ。色々と教えてもらう事になるだろう。

健太は、ベットに麻奈を寝かせると、使った食器を洗い、弥生の書斎に入った。

 

 

第1話

http://hikarinoguchi.ameblo.jp/entry-6b0fb58af32e2be88913b48b10f563ae.html

 

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