「ガルム・ウォーズ」 | 土方美雄の日々これ・・・

「ガルム・ウォーズ」

「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」「イノセンス」等で知られる巨匠・押井守が、80億円近くまで膨れあがってしまった総製作費を捻出できず、撮ることの出来なかった17年も前の作品を、最新のデジタル技術と、全編をカナダで撮影することで、同国の税制優遇制度により、経費を削減することによって、ようやく完成させた、実写SFファンタジー映画。

その日本語版を、スタジオジプリの鈴木敏夫プロデューサーが担当することで、紛れもなく押井守作品ながら、スタジオジプリの雰囲気をもまとった、不思議な作品に仕上がっている。

物語の舞台は、戦いの星アンヌン。かつて、この星にはその創造主であるダナンの支配下で、8つの部族が共存していたが、ある日、創造主ダナンがアンヌンを去り、以降、8つの部族は覇権争いに明け暮れ、現在は、空の部族コルンバと陸の部族ブリガ、それに、ブリガに隷属するクムタクの3つの部族のみが生き残り、いつ終わるとも知れぬ戦いを続けていた。

コルドバの女性飛行士カラと、ブリガの戦車兵スケリグ、クムタクの老人ウィドは、共に仲間からはぐれて、偶然、出会い、そこに行けば、ガルム(コルドバやブリガ等のクローン兵士の総称、ガルムは生殖によらず、クローン技術によって、子孫を産みだしているという設定)誕生の秘密がわかるという、聖なる森=ドゥアル・グルンドを目指すことになる。その中で、敵同士であるカラとスケリグの間に芽生えてきた、おそらく、友情以上の感情。しかし、聖なる森にたどり着いた彼らを待っていたのは、あまりにも残酷な運命だった・・と、まぁ、そういったストーリィ。

斬新で、細部まで丹念につくり込まれた映像美と、反面、一見わかりにくく、観客に不親切なストーリィ設定&世界観。当然、評価が分かれる作品であると思う。しかし、これはこれで、いかにも押井守らしい作品でもある。

ラストは、目覚めた巨人たちの来襲。新次元に突入した、ガルム・ウォーズは、まだまだ、続く。多分、続編がつくられることはないと思うけれども・・ねッ(押井守による小説は既刊)。

ウィド役で、あの懐かしい、「エイリアン2」のビショップ役の、ランス・ヘンリクセンが出ていま~す。