特定疾患療養管理料と生活習慣病管理料 その1 の続きである。

 

 

 

診療報酬が改定され、「特定疾患療養管理料」から「糖尿病、脂質異常症、高血圧症」が除外され、「生活習慣病管理料」に変更される。

そして、「外来管理加算」と「特定疾患処方管理加算」が併算定できなくなる。

 

現行の生活習慣病管理料は「月1回算定、検査等は包括制」だけれど、これを「生活習慣病管理料 (I)」にして、それとは別に「生活習慣病管理料 (II)」というものが新設される(検査料は都度算定)。これが333点になるようだ(月1回まで)。

 

たとえば、クリニックに月1回通っている患者の場合。

今回の改定で変更される医療費を書きだしてみると、以下のようになる。

 

現行

再診料 73点

外来管理加算 52点

特定疾患療養管理料 225点

処方箋料 68点

特定疾患処方管理加算2 66点

(これ以外に、検査料や時間外対応加算、地域包括診療加算などがある)

 

2024年6月以降

再診料 75点

生活習慣病管理料 (II) 333点

処方箋料 60点

 

再診料は2点アップする。

これは「医療従事者の賃金アップ」が目的らしい。

本当に賃金に反映されるといいね。

 

現行の「外来管理加算」「特定疾患療養管理料」「特定疾患処方管理加算2」を合計すると343点。それが、2024年6月以降は「生活習慣病管理料 (II)」の333点と10点低くなる。

これは、6月以降は「特定疾患処方管理加算2」が66点から56点に変更されることによるので、実質は現行の3つの加算を単純に合計した点数がそのまま「生活習慣病管理料 (II)」になるということだ。

 

つまり、今まで月1回の受診だった患者にとっては医療費負担はほとんど変わらないし、クリニックの収入もほとんど変わらない。

ただ、「生活習慣管理料 (II)」は月1回までしか請求できないので、今まで月2回の受診だった患者にとっては大きな違いとなる。

 

では、医療費負担以外の違いはなにか?

患者として一番大きい点は、「療養計画書」の存在だろう。

医師にとってもこの「療養計画書」がネックとなり、これまでは「生活習慣病管理料」を算定せず「特定疾患療養管理料」としていたのだ。

しかし、きちんと患者の「生活習慣」を「管理」しろ!という厚労省や健保連から突き上げられ、「糖尿病、脂質異常症、高血圧症」の患者に対して「特定疾患療養管理料」で逃げられなくなったというわけ。

 

現行の「生活習慣病管理料」は、算定条件として「少なくとも1月に1回以上の総合的な治療管理が行われなければならない」という縛りがあった。

しかし、今回の改定では、その縛りが廃止されるようだ。

 

2024年2月1日付の日経メディカルの記事(要登録)によると、

【生活習慣病管理料(I)の主な改定案】
(1)療養計画書を簡素化するとともに、2025年から運用開始される予定の電子カルテ情報共有サービスを活用する場合、血液検査項目についての記載を不要とする。併せて、療養計画書について、患者の求めに応じて、電子カルテ情報共有サービスにおける患者サマリーに、療養計画書の記載事項を入力した場合、療養計画書の作成及び交付をしているものとみなす
(2)診療ガイドライン等を参考として疾病管理を行うことを要件とする
(3)少なくとも1月に1回以上の総合的な治療管理を行う要件を廃止する
(4)歯科医師、薬剤師、看護師、管理栄養士等の多職種と連携することを望ましい要件とするとともに、糖尿病患者に対して歯科受診を推奨することを要件とする
(5)新設される慢性腎臓病透析予防指導管理料は併算定可とする
(6)患者の状態に応じ、28日以上の長期の投薬リフィル処方箋を交付することについて、当該対応が可能であることを当該保険医療機関の見やすい場所に掲示するとともに、患者から求められた場合に適切に対応すること 等

【生活習慣病管理料(II)の主な算定要件】
(1)検査、注射、病理診断が包括されない。月●回に限り算定する
(2)許可病床数が●●床未満の病院または診療所に限る
(3)生活習慣病管理料(I)を算定した日の属する月から起算して●月以内の期間においては、生活習慣病管理料(II)は算定できない

(●については、日経メディカルの記事がアップされた時点でまだ詳細不明だったようだ。算定回数については、月1回に限るという情報がすでに出ている)

 

流れを見ると、厚労省や健保連としては、患者の受診間隔を延ばそうとしているようだ。慢性疾患の患者の診察は、多くの場合「こんにちは、調子はどうですか。変わりないですか。では、また同じ薬を出しておきますね」で終わると思う。なので、厚労省や健保連は、3か月に1回程度の診察でいいじゃないか、薬は長期処方するか、せめてリフィル処方箋を交付しろ、と迫っているわけだ。

 

リフィル処方箋なんて、全く交付が進んでないみたいだもんね。存在を知らない、名前も聞いたことがないという人も多いんじゃない?

出してもらった人、いるのかな。

というか、わたしにはリフィル処方箋の存在意義がイマイチ分からんのだよね。長期処方だとなんでダメなんだろうか? 長期処方のデメリット、リフィル処方箋のメリットって、実際のところはどうなんだろうね?(薬の管理が覚束ない高齢患者には、薬剤師と対面するメリットが大きいのだろうか)

 

とにかく、今後は長期処方やリフィル処方箋について、分かりやすい場所に掲示したり、患者が求めたら適切に対応する必要があるらしい。

興味がある人は、6月以降に医師に相談してみてはどうだろうか。

医師に嫌な患者と思われるかもしれないけど。

 

さて。

それよりもなによりも。

一番の問題は「療養計画書」だ。

療養計画書って、どんなものなんだ?

患者の署名が必要ということだから、患者にとっても無関係ではない。

 

ネットで調べてみたら、なかなか香ばしいPDFファイル(ここ)が公開されていた。

現行の療養計画書(初回用)は、こんな感じらしい。

(継続用もほぼ同じ内容)

 

画面では小さくて分かりにくいかもしれない。

たとえば、【検査・問診】の項目には、

・体重:現在( kg)→目標( kg)

・腹囲:現在( cm)→目標( cm)

・HbA1c:現在( %)→目標( %)

食事や運動について、達成目標や行動目標を患者と相談して記入する欄がある。

BMIも腹囲も痩せ型の場合、目標値はどうなるんだろうね? もしかして、筋肉量の目標値なんて項目が増えたりして。

 

・運動負荷心電図

なんてのもあるんだけど、全員にこんな検査するのかな?

安静時の心電図は測定したことがあるけど(糖尿病治療を始めて以降、測定したのは1回のみ)、運動負荷での心電図なんて測定したことないよ。

 

また、【重点を置く領域と指導項目】には、

・油を使った料理(揚げ物や炒め物等)の摂取を減らす

などがある。

間食も、種類や量を指定され、週に何回の摂取まで指定される!

まさか、「種類・量: まんじゅう1個 を週7回(=毎日1個)」が許可されるわけないよねぇ。せいぜい、「まんじゅう1個を週1回」くらいか。

「ドーナツを8週間に5個」は食べすぎ? まんじゅうと違ってドーナツは油ギッシュだから、そもそも糖尿病患者が食べていいものではないんだろう。

 

運動も細かい記入が求められている。

そして、最後に患者の署名する欄がある。

 

つまり、この療養計画書に署名したということは、患者はその指導を忠実に守ることを了承したことになるわけだ。

 

なるほどなぁ。

医師たちが大反対している理由がよく分かったよ。

患者の同意、署名が得られなければ「生活習慣病管理料」を算定できない。

今までは患者の同意なく診察を終えても「特定疾患療養管理料」「外来管理加算」「特定疾患処方管理加算」で診療報酬を得られていたのが、同意がなければ全く加算が得られなくなってしまうのだから、これは死活問題だ。

たとえ「再診料」が2点アップしたところで、これでは雇っている人たちの賃金アップなんてできやしない、というわけだ。

 

厚労省保険局医療課長のインタビュー記事(要登録)によると、この改定の趣旨としては、

生活習慣病の管理は、古くて新しい問題です。きちんと管理をすると、相応のアウトカムが出ます。診療ガイドラインも整備されてきており、ガイドラインに沿った管理を実現していただくにはどうすればいいかが念頭にあります。

ということのようだ。

つまり、今までより一層、ガイドラインをガチガチに遵守した管理をおこなうことが求められるわけだ。

 

ひー!

このところHbA1cがじわじわ上昇し続けているわたしは、医師から「生活習慣の管理」をゴリゴリ押しつけられそうだ。

 

となると、PFCはガイドラインにある通り、患者は一律守らないといけないので、糖質制限はますます認められなくなりそう。オリーブオイルをたっぷり使った野菜炒めが多いから、「油を使った料理(揚げ物や炒め物等)の摂取を減らせ」と指導されそうだ。

ガイドラインが変わらない限りね。

 

また、わたしのように「あなたは痩せ型だからGLP-1製剤は止めておきましょう」と、取り上げられてしまう患者が多く出てくるかも。

全く、あの薬物療法アルゴリズムはくそったれだわ。(別に、あのアルゴリズムには「GLP-1製剤はやせの患者には禁忌」とは書いてなくて、「体重減少に注意」とあるだけなんだけどね)

 

この療養計画書は「生活習慣病管理料」算定のために必要なものだから、この管理料が算定できない大きな病院に通っている患者には関係ないのかな?

おそらく、現行の療養計画書よりは作成しやすい簡略化された内容になるんだろうけど、まあ、医師にとっても患者にとっても面倒くさいことになるのは間違いなさそう。

 

でも、毎回の診察でこの療養計画書が作成されていたら、大叔父の低血糖の原因が明らかになったかもしれない。療養計画書のコピーは患者にも渡されるんじゃないかと思うので、それを確認すれば、医師が大叔父の目標HbA1cをどれくらいに設定していたのかが分かったはず。高めに設定していたにもかかわらず、想定外の突発的な低血糖を起こしてしまったのか、それとも無茶な目標を設定していたのか。

もちろん、大叔父本人には治療目標が無茶なのか適切なのか判断できず、医師に求められるまま療養計画書に署名しただろう。ただ、重症低血糖を起こした原因が無茶な治療目標にあったかどうかは、あとから確認することはできると思う。

 

ともかく。

クリニックに通っている皆さんから、6月以降に診察内容がどこか変わったか、ブログで報告があるかな?(うちの両親もだ!)

 

療養計画書に署名しない!と患者が拒否することを医師たちは恐れているようだけど、多分、ほとんどの患者は、医師に求められればわけが分からないまま署名すると思う。それに、署名を拒否したらあからさまに医師の機嫌が悪くなって、「署名しないならここでは治療できません!どうなっても知りませんよ!」と言われる可能性が高いんじゃないかな。

 

6月以降に、実際の臨床現場での混乱ぶりが、また記事になるんだろうね。

 

 

あと、処方箋料も改定される。

 

2024年2月15日付

処方箋料68点から60点に、後発品推進も供給不安には配慮(要登録)

リフィル推進は各種点数の施設基準に組み込む

 

 

現行では「3種類以上の抗不安薬、7種類以上の内服薬の投薬などがない場合」の68点だが、それが60点に引き下げられる。

 

さらに、「敷地内薬局」があるような大きな病院では、処方箋料が42点にまで引き下げられる?

 

2024年2月16日

敷地内薬局、薬局と医療機関双方へのペナルティー強化(要登録)

特別調剤基本料5点、処方箋料は68点から42点に激減

 

 

記事によると、

医療機関へのペナルティーは、▽1カ月当たりの処方箋交付が月4000回を超える、▽当該医療機関の処方箋の調剤割合が9割を超える「特別調剤基本料A」を算定する薬局と、不動産取引等その他の特別な関係がある――のいずれも満たす場合が対象。改定前の処方箋料は68点で、今改定で60点となるが、これらの条件に合致する場合は42点にまで下がる。

ということのようだ。

わたしが通っている病院も敷地内に薬局があるのだが、この条件に合致するんだろうか? だとしたら、処方箋料が42点になる?

 

 

医療費の仕組みはころころ変更されるし、難しくてよく分からん。

以前は特に疑問もなく支払っていたので、医療明細書なんてほとんど見ないまま、毎年処分してしまっていた。

今の総合病院に通うようになってから、各医療機関で発行された明細書を捨てずに保管するようになったんだけど、見てもよく分からんのだよねぇ…

 

糖尿病内科に消化器内科、甲状腺専門病院、眼科クリニック、歯科クリニック。

ここに、単発で皮膚科とか入ってくるんだよねぇ。

1年前は、耳鼻咽喉科が入ったし(しかも入院)。

もうこれ以上、診察回数が増えませんように!