昨日の続きである。

 

 

 

医学雑誌BMJのクリスマス特集では、興味深い記事・論文がいろいろ掲載されている。

 

Analysis of Barbie medical and science career dolls: descriptive quantitative study(バービーの医療・科学キャリア人形の分析:記述的量的研究)(ここ

 

バービーの映画がヒットした今年、とてもタイムリーな研究といえる。

医学や科学をテーマとする職業を持つバービーブランドの92体の人形と、比較対照として他ブランドの65体の人形について、その内訳や臨床および実験室の安全基準を満たす正確さを調べている。

 

バービー人形ってよく知らないんだけど、そんなにたくさんの種類があるの!?

しかも、医学と科学の領域だけで92体も!?

いや〜びっくりだわ〜

要旨によると、

92体のバービー人形のうち:医師(n=53)、科学者(n=10)、科学教育者(n=2)、看護師(n=15)、歯科医師(n=11)、救急隊員(n=1)だった。

65体の他ブランド人形のうち:医師(n=26)、科学者(n=27)、看護師(n=7)、歯科医師(n=2)、エンジニア(n=2)、MRI技師(n=1)だった。

バービーブランドの医療従事者人形(n=80)は、主に子どもに接しており(66%、n=53/80)、大人に接している医療従事者人形は3体(4%)のみだった。

12体の科学者バービーブランド人形のうち、髪型や服装に関する適切な個人防護具の要件をすべて満たしているものはなかった。

バービーブランドの人形には、白衣、顕微鏡、聴診器、眼鏡など、子供たちがステレオタイプ的に医師や科学者を連想するアイテムが付属していることが多かった。

比較の他ブランド人形は、バービー人形のグループよりも幅広い年齢層と民族のグループを表していたが、バービーと同様に幅広い医療と科学のサブフィールドを描写するのに苦労していた。また、ほとんどの他ブランド人形は、適切な個人用保護具を着用していなかった。

 

結論:医学と科学をテーマにした人形は、未来の医療専門家と科学者をその気にさせるのに役立つ。すべての玩具会社は、未来の医療専門家と科学者の人形が臨床と実験室の安全基準を満たすことを保証し、(特に男性が支配的な分野の中で)表現される医療と科学の職業の種類を多様化すべきである。バービーは、彼女自身のためだけでなく、若い女の子たちのためにも、ガラスの天井を打ち砕き続けなければならない。

 

 

バービーブランドの人形では、医師が圧倒的に多かった。

それにしても、MRI技師ってなにか特徴があるの? どうやって他の職種と差別化してるんだろう?

医師と科学者と歯医者の区別はどうしてるのかな?

医師は聴診器を下げてる? じゃあ、科学者は? 歯医者は?

 

 

バービーでも他ブランドでも、圧倒的に女性が多かった。

まあ、バービーだしね。

他ブランドにしたって、人形はやっぱり女の子(女性)が多いよね。

リカちゃんだって、女の子だもんな。

 

 

人種は白人が多いんだけど、黒人の人形もそこそこの割合があるんだね。

他ブランドの場合は、ヒトではないモデルも含まれていたようだ。

バービーブランドではアジア系、ヒスパニック系が少なく、アラブ系は1体もなかったようだ。

 

 

バービーって何歳設定なんだっけ?

よく分からないけど、バービー人形では大人に分類される年齢が圧倒的だったようだ。

 

バービーブランドの医師人形に付属していた医療器具
腋窩用松葉杖
包帯
携帯電話
出生証明書
血圧計のカフ
血圧計のゲージ
クリップボード
直視型検眼鏡
ドクターバッグ
医学博士号
診察台
視力表
フェイスマスク
ヘッドミラー
固定電話
薬瓶
顕微鏡
ギプス
耳鏡
患者カルテ
視鏡
反射ハンマー
網膜鏡
スケール
骨格系図
聴診器
注射器
舌圧子
舌温度計
レントゲン写真

 

バービーブランドの実験室科学者や科学教育者人形に付属していた実験器具
アルコールバーナー
ビーカー
ブンゼンバーナー
電子はかり
三角フラスコ
ラップトップ
顕微鏡
丸底フラスコ
ゴム管
試験管

 

「医学博士号」が付属している人形って、なんだ?

学位記を手に持ってるのかな?

どんなシチュエーション???

「バービー人形とその付属品」というのがどういうものなのか、わたしにはよく分からん…

 

科学者人形の方は、ほぼ化学者のようだ。

やっぱ、イメージするのはバーナー、ビーカー、フラスコ、試験管なんだな。

顕微鏡が表す分野は…生物学?

 

わたしとしては、ぜひピペットマンを手にしたバービー人形を作ってほしい。

ほかにいい付属品はあるかなぁ… 細胞培養の時に使う電動ピペッターとか?

大腸菌のコロニーが生えたプレートとか?白いコロニーと青いコロニーが生えていて、バービーは白いコロニーをピックアップしてるの。

え、大腸菌なんてダメ? じゃあ「コリーちゃん」って呼べばいいかな?(菱沼さん@「動物のお医者さん」)

 

職業を表す人形の付属品って、以外と難しいね。

 

次は、人形の格好について。

 

 

バービーブランドの女性の医療職・科学者の人形(86体)のヘアスタイルは、3分の2以上がルーズヘアーだった。

 

人形が履いていた靴は、半数以上がハイヒールだった。

 

 

人形が履いていたパンツやスカートのうち、脚が完全に覆われていたのは29%だった。

15体の看護師バービー人形のうち、最近のものはスクラブを着用する傾向があり、古い人形は明るい色の服装とナースキャップだった。このような服装の変化は、看護師に求められる服装についての考え方の変化を反映していると思われた。

 

科学者のバービー人形は、12体全てに安全眼鏡が付属していて、10体に白衣が付属していた。

医療職のバービー人形80体のうち、フェイスマスクが付属していたのは1体だけだった。

医療職・科学者の人形92体のうち、手袋付きは1体もなかった。

 

この論文は、「空想科学読本」のようにフィクションを真面目にリアルな視線で解析し論じているものなので、「そんな野暮なことを!」とツッコむ方が野暮だ。

そうね、そうねと頷きながら、ニヤリとすればいい。

 

とは言え、わたし自身の経験からすると、研究室内で白衣を着ることはほぼなかったなぁ。汚れたら困るような服を着ていれば別かもしれないけど、ジーパンにTシャツだったから、少々汚れても気にしなかった(汚れるような作業もあまりないし)。そ白衣じゃなくても、それこそ割烹着でもいいわけで。(ん? これはNGワードだったか?)

安全眼鏡をつけたこともなかった。UVを見ながら作業するときだけは目を守るためにフェイスシールドをつけたけど、だからって職業を表すための付属品としてフェイスシールドを採用するのはどうかなぁって感じ。

手袋をつける機会もほとんどなかった。

論文中には「足を完全に覆っていないサンダルは実験室では不適切」とあったけど、実際はサンダル履いてたし。

医療現場でも、ナースシューズはつま先が開いてるよね? 安全性の面からはNGなのかな?

髪型はまあ、長い髪を下ろしたままの医療従事者はちょっと嫌かもなぁ。科学者にしても、作業の邪魔になるよね。

 

リアルさを追求した医療従事者のバービー人形だと、髪をひっつめて、マスクをして、手袋をして、フルレングスのパンツを履いて、フラットな靴を履いていることになるんだね。

なんだかパッとしない人形になりそう。あまりリアルに作りすぎると、バービー人形で遊ぶ小さな女の子が、医療従事者を目指そうと思わなくなっちゃうかも。

 

論文のディスカッションによると、

科学者のバービー人形には、生物学や化学関連の実験器具が付属していることが多かった。科学者を描くように言われると、子どもたちは圧倒的に化学者や生物学者の絵を描く。この研究では分析されていないが、宇宙飛行士、古生物学者、海洋生物学者バービーなどの人形は、マテル社が科学者の姿や行動に対する子どもたちの考えを広げることができるような製品を提供していることを示している。この比較の中で分析されたアメリカン・ガールの人形キャラクター(マテル社が制作・所有している)は、天文学、航空宇宙工学、獣医学、野生生物学に興味を持っていた。マテル社は、同社の様々な人形ブランドにおいて、人形が描く科学者の種類を多様化し続けるべきである。疫学者から犯罪現場調査官、統計アナリストまで、科学者はさまざまな肩書きを身につけている。最近の映画の興行動向を見ると、核物理学者のケン人形は特に利益を生む可能性がある。

宇宙飛行士、古生物学者、海洋生物学者、天文学、航空宇宙工学、獣医学、野生生物学、この辺りは、人形の付属品で職種を特徴付けられそうだ。

犯罪現場調査官もできそうだけど… たとえば、付属品として死体の形に沿った白いチョークのあとと、指紋採取のための粉をポンポンする道具とかつけるの? そういうマニアックなバービー人形はコレクターアイテムにはなりそうだけど、小さな女の子向けの製品にはなりそうにないよなぁw

疫学者や統計アナリストだと分かるような付属品って、どんなものがある? 一目見て、「あ、この人形の職業は疫学者だ!」って分かるような?

 

最後に、論文の著者が作成したバービー人形が紹介されている。

 

 

障害のある肺専門医のバービーらしい。

著者によると、障害を持った医療従事者や科学者の人形がなかったため、障害があっても活躍する人形を提案したかったそうだ。

髪はこの程度でいいの? お団子にする必要はないの?

 

図の説明文によると、

著者は、Fashionista #188の人形とDollar Treeのメディカル・ファッション・セットを使って、難聴の医師バービー人形を作った。髪を後ろで結び、滑りにくいピンクのブーツ、スクラブセット、難聴者用にデザインされたデジタル聴診器を身につけたバービー医師は、患者を治療する準備ができている。手首まである白衣は写っていない。バービー医師はハンドラー大学で化学の理学士号を取得した後、インディアナ大学医学部で医学博士号を取得した。ハンドラー大学に戻り、呼吸器内科のフェローシップを受け、現在はハンドラー大学病院呼吸器内科のスタッフとして、喘息とCOPDの重複症候群患者やCOPDと肺がんを合併した患者の治療を専門としている。

説明文がないと、この聴診器が「難聴者用にデザインされたデジタル聴診器」なのか分からないなぁ。

医師としての専門も、こうやって略歴を書いてくれないと、人形を見ただけでは肺専門医かどうか分からないよ。

出身大学とか経歴とか、人形にそこまで必要なのかな〜? そりゃ、設定があった方が人間味を持たせることができるのかもしれないけど、人形って、遊んでいる子が自由にその背景を考えることも重要なんじゃないかな?

 

今回の研究で、バービー人形(それ以外のブランドの人形も)はリアルな医療従事者や科学者として作られていないことが分かった。

じゃあ、次の研究は、やっぱり介入試験をおこなうべきだろう。

リアルな人形を与えた子どもたちと、現在のリアルに忠実ではない人形を与えた子どもたちで、将来の進路が有意に異なるかどうか?を調べなければ。

リアルさが子どもたちに影響を与えないのであれば、どっちでもいいってことだよねw

 

…とまあ、医学雑誌にこんな論文が載っちゃうんだから、クリスマスって面白い。

 

ほかにも面白そうなのがあるので、簡単に紹介。

 

Association of health benefits and harms of Christmas dessert ingredients in recipes from The Great British Bake Off: umbrella review of umbrella reviews of meta-analyses of observational studies(The Great British Bake Offのレシピに含まれるクリスマスデザート原材料の健康上の有益性と有害性の関連:観察研究のメタアナリシスのアンブレラレビューのアンブレラレビュー)(ここ

 

いろんなレシピをネットで探してきて、使われている原材料をリストアップし、それぞれの食材について健康への有益性、有害性を検討している。

 

The Great British Bake Offのウェブサイトにはクリスマスデザート(ケーキ、ビスケット、ペストリー、プリンとデザート)のレシピが48あり、使われていた原材料は17種類の食材グループ、178種類の食材に分類された。

死亡または疾病のリスク低下と最もよく関連した食材群は、果物、コーヒー、ナッツ類であったのに対し、死亡または疾病のリスク上昇と最もよく関連した食材群は、アルコールと砂糖だった。

The Great British Bake Offのクリスマスデザートのレシピには、死亡や疾病のリスクの増加ではなく、むしろ減少に関連する食材群がよく使われているので、今年のクリスマスはケーキを食べても大丈夫!

と、結論づけている。

 

注)この論文では、レシピに使われている材料の「種類」だけを調べていて、「使用量」は考慮されていないようだw

 

 

Effect of a doctor working during the festive period on population health: natural experiment using 60 years of Doctor Who episodes (the TARDIS study)(祝祭期間に勤務する医師が人々の健康に及ぼす影響:『ドクター・フー』60年分のエピソードを用いた自然実験(TARDIS研究))(ここ)

 

目的 祭りの時期に働く(架空の)医師が、人々の健康に及ぼす影響を調べること。
デザイン 自然実験。
設定 イングランド、ウェールズ、英国。
主なアウトカム評価項目 イギリス、ウェールズ、英国において、BBCがドクター・フーを初めて放送した1963年以降の年齢標準化年間死亡率(ドクター・フーは、ドクターと呼ばれるキャラクターが登場し、時空を旅しながら悪役と戦い、他人を救うために介入する架空の番組)。死亡率は、経時的な非線形傾向を考慮した時系列分析でモデル化され、前回の祝祭期間である12月24日から1月1日に放送されたドクター・フーの新エピソードとの関連が推定された。中断された時系列分析では、ドクター・フーの祝祭エピソードが毎年のクリスマス介入として分類されるようになった2005年以降の死亡率の変化をモデル化した。

結果 1963年から31の祝祭期間にドクター・フーの新エピソードが放送され、うち14回はクリスマスの日に放送された。時系列分析では、クリスマス期間中の放送とその後の年間死亡率の低下との間に関連が認められた。特に、クリスマスの日に放送されたエピソードは、イングランドとウェールズでは1000人年あたり0.60人(95%信頼区間0.21~0.99;P=0.003)、英国では1000人年あたり0.40人(0.08~0.73;P=0.02)死亡が少ないことと関連していた。中断された時系列分析では、2005年以降、ドクター・フーのクリスマス介入に関連して死亡率に強い変化(減少)がみられ、イングランドとウェールズでは1000人年あたり平均0.73人(0.21~1.26;P=0.01)、英国では1000人年あたり平均0.62人(0.16~1.09;P=0.01)死亡が減少した。

結論 祝祭期間中、特にクリスマスの日に見られるドクター・フーのエピソードは、イングランド、ウェールズ、英国で死亡率の低下と関連しており、祝祭期間中に勤務する医師は死亡率を低下させる可能性があることを示唆している。この研究結果は、医療提供が当然のことと思われてはならない理由を補強するものであり、BBCとDisney+は、クリスマスの日を理想として、祝祭期間中にドクター・フーの新しいエピソードを放映した方がいいかもしれない。

 

わたしは「ドクター・フー」のことをよく知らないんだけど、イギリスで長く続いているドラマなんだよね?

去年のBMJのクリスマス特集では、モンティ・パイソンの「バカ歩き」に心肺機能を高める効果があるという論文が掲載された。

 

 

あのバカ歩きは、そりゃ高強度の運動だと思うよ。

ずっとあの動きを続けるのは、めっちゃしんどいと思うわ〜

(羞恥心による精神的な疲れは別としてw)

 

ドクター・フーにしろ、モンティ・パイソンにしろ、イギリスを代表するコンテンツと言えるんだろう。それを題材に、真面目にふざけた解析をしているわけだね。

 

しかしまあ、よくこんな研究テーマを思いつくもんだw

人をニヤリとさせるのもセンスが必要だよね。

BMJのクリスマス特集に掲載される論文は、投稿締め切りが夏らしい。

つまり、来年の特集に掲載されるべく、すでに新たな研究が各地でおこなわれているわけだ。

1年後にまた楽しませてもらおう。