「こんな気がする」ディランを観て第十五弾 ~最終回● 2016年4月28日


都心から約一時間、みなとみらいの駅で降りて、雨降る中を会場のパシフィコ横浜に向かう。海に面した会場だけに潮の香りが漂う。あんなに楽しみにしていたディランの日本ツアーも今夜で最後。終わってしまう寂しい思いを抱えながらも、一カ月近く滞在したディランに何らかの特別な思いはあるのだろうか、今夜が日本で100公演目だと誰かが伝えただろうか、セットリストは変えるだろうか、余計に曲をやるだろうか・・・今夜を期待する気持が溢れ出てくる。

そして定刻の19時にショーは始まった。


1.シングス・ハヴ・チェンジド 
センターでヴォーカル。穏やかに淡々と歌い始め、声を駆使して表現豊かに歌い進める。今夜はやや鼻にかかった声だ。間奏中にゆっくりと一回転するが体が重いか・・・

2.シー・ビロングズ・トゥ・ミー 
ディランはセンター。ラフに語るように歌い始める。感情を抑えながら歌に専念して淡々と綴ってゆく。落ち着き払ったヴォーカルに対比させるかのようにハーモニカ演奏は奔放で自由だ。

3.ビヨンド・ヒア・ライズ・ナッシング
ディランはピアノでヴォーカル。バンドメンバーでスタートの音を探すような雰囲気で始まりリセリのカウントで曲が始まる。突き放すようなヴォーカルでの歌い出しがいなたくてカッコいい。バンドの演奏でアツくなってきたせいか、立ちあがって演奏するディランを見ていると気持ちが伝わってくる。

4.ホワットル・アイ・ドゥ 
センターでヴォーカル。演奏にのって自然に軽やかに歌い始まる。やや鼻声で軽く歌っているのだが、今夜のヴォーカルには失望が滲み出ているようだ。

5.デューケイン・ホイッスル
ディランはピアノでヴォーカル。ディランのピアノは気ままだが、スティールギターを中心とした楽器がイントロの音を探すようにして始まる。軽く歌い出すが強弱を上手く使ってクールに歌い進める。相変わらずディランの自由なピアノ演奏がありながらもバンド演奏はまとまってゆき最後はピアノから立ちあがってしめた。

6.メランコリー・ムード
センターでヴォーカル。イントロの聴きどころであるチャーリーのギターに合わせ上半身をユラユラさせながらリズムを取るディラン。落ち着いたヴォーカルで崩さずに正しく歌う。エンディングではヒョイヒョイと踊るような仕草を。

7.ペイ・イン・ブラッド
センターでヴォーカル。軽く歌い始める。リセリの刻むリズムがこの歌の強力なアクセントになっていて話はテンポ良く進んでゆく。ディランの声がやや鼻にかかっている。間奏でのヒョイヒョイ踊りの後、両手を横に広げて曲をしめた。

8.アイム・ア・フール・トゥ・ウォント・ユー
センターでヴォーカル。諦めが漂う歌い方で聴いているうちに切なさがこみあげてくる。気持ちを乗せて丁寧に歌うバックには、控え目ながらツボを抑えたバンドの素晴らしい演奏が。

9.ザット・オールド・ブラック・マジック
センターでヴォーカル。かすれた声で歌を進める。やや崩しながら、声の出し方も変えながら表情豊かに曲を盛り上げてゆく。

10.ブルーにこんがらがって 
センターでヴォーカル。静かに語るように歌い始め、淡々と綴ってゆく。ディランの自由なハーモニカ演奏のせいか、バンドも徐々にアツくなってこの曲の魅力を引き出してゆく。


今夜は「みなそぉーん、どうも、ありがと」と前回よりも崩した日本語で挨拶してはけた。


11.ハイ・ウォーター(フォー・チャーリー・パットン)
ディランはセンター。スチュのブルージーなギターに会場が手拍子する中、ディランは静かに歌い始める。淡々と話を伝える事に専念して進めてゆく。最後は両手を上げてしめた。

12.ホワイ・トライ・トゥ・チェンジ・ミー・ナウ 
センターでヴォーカル。軽いタッチで歌い始めるが、今夜は苦しい胸の内が伝わる歌唱で大変印象的な出来だった。

13.アーリー・ローマン・キングズ
ピアノ演奏でヴォーカル。軽い歌い出しで始まり徐々に力強さが増してくるヴォーカルで、バンドもそれに応えるように荒々しく刺々しい演奏に。最後はジャム風セッションの中、チャーリーとヘロンに合図を送ってしめた。

14.ザ・ナイト・ウィ・コールド・イット・ア・デイ
センターでヴォーカル。やや崩しながらも丁寧に歌う。今夜はやや鼻にかかった声ながら独特の味が出ていて歌の巧みさを思い知る。最後は両手を横に広げてしめる。

15.スピリット・オン・ザ・ウォー ター 
ピアノ演奏とヴォーカル。軽く崩しながら歌い始めるが、余裕ある歌い方にいつしか歌の世界に引き込まれる。バンドの腕前がよくよく解る曲で、チャーリーのギターの出来が歌の良さを左右するような趣もある。やがてグルーヴが生まれ、最高のエンディングを立ちあがって演奏していたディランがしめた。

16.スカーレット・タウン 
センターでヴォーカル。最後のレポートなので書いてしまうが、毎回「スカーレットタウン」と歌っている部分が「つかれたん」と聴こえてしまって集中できなくていた。今夜もそうなのだが・・・。ドスを利かせた声で物語を描いてゆくのをディランは楽しんでいるようだ。リズムを取りながらヒョイヒョイし、両手を横に広げてエンディングを迎える。

17.オール・オア・ナッシング・アット・オール
センターでヴォーカル。軽く歌い始めるが苦悩に振り回されるような心情を声をコントロールしながら表情豊かに歌い進める。チャーリーの素晴らしいギターがこの曲をクールにしている。

18.ロング・アンド・ウェイステッ ド・イヤーズ 
センターでヴォーカル。力ある歌い出しで始まり、声に芯があって言葉を投げ捨てるように歌う姿はカッコいい。ディランがロックだ!今夜のハイライトで、出来が良かったからだろう、最後に両手を横に広げ<どんなもんだい>ってポーズでしめた。

19.枯葉
センターでヴォーカル。今夜の歌い出しは誠に素晴らしい。諦観があるからこその余裕を声に持たせ、歌いきるところが見事だった。エンディングに頭を下げるような仕草を2度ほどする。


本編が終わり暗転と共に客席からアンコールの拍子が。


20.風に吹かれて
ピアノ演奏とヴォーカル。今夜もバイオリンの音色が会場の空気を入れ替えるように流れ、やがてバンドの演奏が始まると、ディランは静かな歌い出しでアンコールを始めた。一語一語を大切に歌う姿が印象的。ジャム風のエンディングでは立ちあがってピアノを演奏。

21.ラヴ・シック
センターでヴォーカル。暗いステージの中、シルエットで浮かびあがったディランは静かな歌い出しで最後の曲を始めた。徐々に凄みを利かせて歌は展開。リズムを取るように右手を何度も横に出すのは、リセリのドラミングを<そうだ!>とばかりに伝えるように見えた。表情豊かに歌い進み日本ツアー最後の曲を終えた。

ステージ中央に集まるバンドメンバーとディラン。最初から両手をあげ右手左手と片手ずつあげ最後はお辞儀をした。最終公演といえども曲数は変わらず、特別な事は最後に両手を長くあげた事。でも気持ちは伝わるものだ。


全公演に一日足りない15回に渡って、「こんな気がする」レポートをお届けしました。最新情報を待ってらっしゃるみなさんに向けて書いてきましたが、何年か後にはこのレポートが自分への贈り物になっているかもしれません。駄文にお付き合い下さり、ありがとうございました。

近い将来、またここでお会いしたいものです。




●ボブ・ディラン来日公演スケジュール