「こんな気がする」ディランを観て第十弾 ● 2016年4月21日

今夜の出来はどうだったのだろう。公演回数が多いライヴだと自分が行った日の出来が気になったりするものだ。今回のツアーを観はじめて、今夜で丁度10回を数えるが、それぞれのショー毎にそんなに大きな出来の差は無い。ヴォーカルを中心に据えたライヴなので声が出ているかどうかが決め手。『ネヴァー・エンディング・ツアー』と称して30年近く続けられているのは、喉が強いからだろうし完璧に管理されているからだろう。今夜は巧みにヴォーカルをコントロールしているが故の素晴らしさがあった。「恋の歌」が多いステージをこなすための深みや彩りが声に出ていたからである。

追加公演だったせいか空席が目立つ夜となったが、観客の入りに関係なくディランは歌う。だから、どれだけ知っているか、どれだけ好きなのかなど気にせず、アメリカが生んだ偉大な歌手の歌う姿を見に来て欲しいと思う。日本公演はもう5回しかないではなく、まだ5回あるのだから。


1.シングス・ハヴ・チェンジド 
センターでヴォーカル。荒々しく凄みを利かせて自由に歌う。声を延ばすようにして歌うところもあった。今夜の喉の調子を確かめているのだろうか・・・。

2.シー・ビロングズ・トゥ・ミー 
ディランはセンター。喉の調子が良いのだろう。変化に富んで表情豊かな歌い方で曲を盛り上げてゆく。自由なハーモニカ演奏も活き活きとしている。

3.ビヨンド・ヒア・ライズ・ナッシング
ディランはピアノでヴォーカル。ピアノを弾きながら軽い感じで演奏を始める。今夜のピアノ演奏は自由過ぎるのか、バンドメンバーが合わせにくいようだ。難問を投げかける教授のようだ。

4.ホワットル・アイ・ドゥ 
センターでヴォーカル。大分軽い感じで歌い始めヴォーカルを引き延ばすように歌う様は演歌歌手のようだ。聴いていて諸々の雑感を持つが、最後は穏やかにしめる流れは見事だった。

5.デューケイン・ホイッスル
ディランはピアノでヴォーカル。イントロからのジャム風演奏がぐっと引きつける。ディランの自由過ぎるピアノ演奏にバンドが一生懸命合わせようとしているが、結局まとまったのはディランのヴォーカルによってだ。声が良く出ており曲をグイグイ引っ張って最高の出来となった。早くもハイライトを迎えた。

6.メランコリー・ムード
センターでヴォーカル。チャーリーのギターが始まると拍手が起こる。声を巧みにコントロールしながらクールな雰囲気で歌う。出来に満足したのだろう、両手を挙げてしめた。

7.ペイ・イン・ブラッド
センターでヴォーカル。あえてだろう、たどたどしい感じで歌い始めながらも、歌い進むにつれ先を急いでいるかのような歌唱に切り替える。間奏でリズムを取りながら踊っているのか、フラフラしているだけなのか、ご機嫌な様子が見て取れる。

8.アイム・ア・フール・トゥ・ウォント・ユー
センターでヴォーカル。歌詞の一字一句をとても大切に気持ちを乗せて歌う。声も良く伸びていて、満足な出来になったのだろう。両手を挙げてしめた。

9.ザット・オールド・ブラック・マジック
センターでヴォーカル。軽快なテンポで歌と演奏が進んでゆく。喉の調子が良いせいかやや崩して歌う。リセリのドラムのノリが良くて、そのグルーヴで曲自体を牽引しているかのようだ。

10.ブルーにこんがらがって 
センターでヴォーカル。静かな歌い出しで抑えたようなヴォーカルだったが歌うにつれ崩し始め、声が出るのを楽しんでいるかのような印象を受けた。今夜のハーモニカ演奏は、よく鳴っていて大変素晴らしい。

今夜は「みなそぉーん、ありごとぅーう」、と言ってはける。

11.ハイ・ウォーター(フォー・チャーリー・パットン)
ディランはセンター。乾いた声で軽く歌い始め、間奏でつま先をちょっと蹴りあげる様な、踊りなのかリズムを取っているのか、その姿によって不思議な空間がステージ中央に生まれる。今夜は見るからに機嫌が良いのだ。

12.ホワイ・トライ・トゥ・チェンジ・ミー・ナウ 
センターでヴォーカル。これ以上は無いだろうと思うくらいの余裕を持って、緩やかに穏やかに歌う。スティールギターの演奏時、ウロウロしながら膝の屈伸運動のような事をしていた。今夜はとにかく体を良く動かしている。

13.アーリー・ローマン・キングズ
ピアノ演奏でヴォーカル。声をコントロールしながら物語を綴るように歌う。チャーリーのギターがいつもと違うフレーズで曲を盛り上げ、彼のギターソロを軸にしてまとまるエンディングが素晴らしい。

14.ザ・ナイト・ウィ・コールド・イット・ア・デイ
センターでヴォーカル。今夜はやや自由に崩して歌っている。またもやウロウロ歩きが登場するが、手を中心に体全体を使って表現する様は何者かになりきっているかのようだ。

15.スピリット・オン・ザ・ウォー ター 
ピアノ演奏とヴォーカル。崩しながらも低い声で抑えて歌う。ヴォーカルとは異なりピアノ演奏は奔放なのでチャーリーとヘロンが苦戦している様が伝わってくる。しかし凄いバンドだ。リセリとガーニエの繰り出すリズムが全体をまとめ見事なエンディングとなった。

16.スカーレット・タウン 
センターでヴォーカル。リセリの好演が光る。彼の刻むリズムが曲にメリハリを与え不気味に物語は進んでゆく。ディランは演出過多にならないよう落ち着き払った歌い方に終始する。

17.オール・オア・ナッシング・アット・オール
センターでヴォーカル。いつもよりテンポが速いのだろうか、軽快に歌い進むディラン。チャーリーの繰り出すフレーズがいつもと異なり、そのせいか素晴らしいソロを聴かせる

18.ロング・アンド・ウェイステッ ド・イヤーズ 
センターでヴォーカル。しっかり理解してくれと言わんばかりに一語一語を丁寧に歌い綴る。声もしっかり出ており徐々に煽るような歌い方に。そしてバンドは最高のまとまりをみせ、ディランは両手を挙げてしめる。今夜も最高の出来だ。

19.枯葉
センターでヴォーカル。膝が痛むのだろうか歌う前に大きく屈伸した。抑え気味な歌い方で演歌歌手を思わせる歌唱法だ。じっくりと落ち着き払って歌いあげる。

暗転して本編を終了、客席からアンコールの拍子が続く。

20.風に吹かれて
ピアノ演奏とヴォーカル。ディランは自らの自由なピアノ演奏に合わせて独特な入り方で歌い始める。いつもより崩して歌っているがサビになると歓声が沸き起こる。ディランに目で合図を送られたチャーリーのギターがバイオリンと絡みながら最高潮に。

21.ラヴ・シック
センターでヴォーカル。余裕を持たせた歌い方で始まったからだろうか、「恋の病」の歌は自嘲気味に聴こえる趣があった。今夜は、手の動きが多いし、ウロウロするし、踊るような姿も見せる。言い方を変えると一番落ち着きが無い夜だった。

エンディングで立った観客を前にメンバーたちはステージ中央へ。両手をゆっくり挙げ、客席を見回して、ディランは去っていった。


●ボブ・ディラン来日公演スケジュール