「こんな気がする」ディランを観て第九弾 ● 2016年4月19日

譜面やプロンプターを見ずにライヴを行っているディランは脅威である。特に言葉の多い自作曲などメロディや歌い方を変えながらも、しっかりと歌いきるのはとても人間技とは思えない。如何に長年ツアーを続け何度も同じ歌を歌っているとはいえ、歌詞を見ずに2時間以上のステージをこなすディランは、もうすぐ75歳を迎えるのだ。やはり天才たるゆえんなのだろう。そして天才であるがゆえに、その一挙手一投足に注目が集まる。チャーリーのギターソロになると、ステージ中央でウロウロするか屈伸運動を始める。微笑ましくもあり謎な動きでもある。またバンド演奏をコントロールする動きは手を使ってやっている。特にドラマーのリセリに向かって行う仕草は派手な場合もあるし目で合図して行う時もある。こうして生まれるバンドとの絶妙なコンビネーションは、見ていてワクワクするものだ。
そして今夜も幕を開ける。

1. シングス・ハヴ・チェンジド 
センターでヴォーカル。やや荒れた声で緩急をつけながらも淡々と歌う。歌が表情豊かで今夜は調子が良さそうだ。バンドのバランスも良くてヴォーカルを引き立てる。

2. シー・ビロングズ・トゥ・ミー 
ディランはセンター。自由な歌い方をしながらも言葉はしっかりと崩さずに歌う。リセリのドラムが良いせいかバンド全体の演奏に力と手堅さがある。

3. ビヨンド・ヒア・ライズ・ナッシング
ディランはピアノでヴォーカル。メンバーの演奏がリフを繰り返し、ディランがグッとくる歌い出しで曲が始まった。余裕があるのだろう、歌う言葉がキチンと聴こえる。ピアノのリフとチャーリーのギターが絡み合って盛り上がりをみせた。

4. ホワットル・アイ・ドゥ 
センターでヴォーカル。乾いた声で落ち着き払って歌うが、なんと説得力のある事か。スティールギターの好演もあって素晴らしい出来となった。

5. デューケイン・ホイッスル
ディランはピアノでヴォーカル。ヘロンのスティールギターが軽快で今夜のバンドはリラックスしている。ディランは足でリズムを取りながら気持ち良さそうに歌う。バンドが快適に転がってゆくようだ。

6. メランコリー・ムード
センターでヴォーカル。チャーリーのギターが最高のトーンでこの曲を彩ってゆく。ディランはややかすれた声で崩して歌い、ギターソロになるとウロウロしながらドラムの前で構え最後はリセリに目で合図か。

7. ペイ・イン・ブラッド
センターでヴォーカル。リセリのドラミングがタイトで素晴らしい。物語を訥々と語ってゆく趣があり、それに寄り添うバンドがまとまりをみせる。軽く踊っている姿をみせ、最後は両手を挙げてしめた!

8. アイム・ア・フール・トゥ・ウォント・ユー
センターでヴォーカル。歌い始まると拍手が起きる。やさぐれた感じながらも丁寧に歌っており気持ちが入り込んでいる。切ない表現が極まったのは完璧なバッキングがあるからこそ。

9. ザット・オールド・ブラック・マジック
センターでヴォーカル。歌い方を巧みに変えながら曲の持つ良さを最大限引き出そうとしているようだ。変化に富むヴォーカルにする事で魅力的な出来となった。

10.ブルーにこんがらがって 
センターでヴォーカル。崩しながら語るように歌う。気持ち良く、言葉が湧き出るように歌う様はディランならでは。やや遅れ気味に吹き始まったハーモニカソロは同じフレーズをくり返しながらバンドを鼓舞してゆく。

今夜は「みなさぁーん、ありがとう」、と言い放ちながら、なんとグフフと笑った!。

11.ハイ・ウォーター(フォー・チャーリー・パットン)
ディランはセンター。穏やかに歌い始まるものの少しずつ凄みを利かせる歌い方は見事である。チャーリーのギターソロになると決まってのウロウロ。思うような出来だったのだろう、両手を広げてエンディングとなる。

12.ホワイ・トライ・トゥ・チェンジ・ミー・ナウ 
センターでヴォーカル。声が出ていて余裕や雄々しさが漂う。観客は身動きせずにジッと聴き入り、静かなる感動が徐々に押し寄せる出来となった。

13.アーリー・ローマン・キングズ
ピアノ演奏でヴォーカル。声に緩急をつけながら綴ってゆく。声の迫力が少しずつ増してゆくとバンドとのまとまりもよくなってホットな演奏を繰り広げてゆく。見事なエンディングとなった。

14.ザ・ナイト・ウィ・コールド・イット・ア・デイ
センターでヴォーカル。声をフルに駆使して雄大なヴォーカルを聴かせる。チャーリーがギターソロを展開するといつもの屈伸運動を始める。

15.スピリット・オン・ザ・ウォー ター 
ピアノ演奏とヴォーカル。自由なピアノ演奏で始まり、それに呼応するようにチャーリーのギターがフォローする。軽快な演奏でバンドが軽やかに転がってゆくようだ。ジャム風の演奏でエンディングを迎えるが、まとまった時の素晴らしさは比類なきものだ。

16.スカーレット・タウン 
センターでヴォーカル。凄みを利かせながらも抑えた感じの歌い方は迫りくるような怖さがある。またもやチャーリーのギターソロで屈伸運動のような仕草を披露。そして歌いながら左手を伸ばすのは演奏をコントロールする指揮者のようだ。

17.オール・オア・ナッシング・アット・オール
センターでヴォーカル。軽く歌っているようだが表情豊かに曲の世界を描いている。そして、その世界に入り込んでいるのだろう、両手を挙げて演奏をしめる。今夜は手がよく動く。そして今夜は、右手で右目、右耳、右側の首筋をなでるような仕草を頻繁にしている。

18.ロング・アンド・ウェイステッ ド・イヤーズ 
センターでヴォーカル。今夜も充実した素晴らしい演奏で観客を圧倒する。21世紀の「ライク・ア・ローリング・ストーン」と言っても良いような歌だ。リセリを指さして演奏を終える。

19.枯葉
センターでヴォーカル。歌い出すと同時に拍手が起きる。この曲でも左手を指揮者の用にあげて演奏をコントロールしているようだ。歌に相応しくさりげなく終わったのが印象的だ。

ステージは暗転して後半を終了、客席からはアンコールの手拍子が続く。

20.風に吹かれて
ピアノ演奏とヴォーカル。会場内に伸びやかに響きわたるバイオリンに合わせてバンド演奏と歌が始まるが、ディランの声が良く出ていて、気持ちがのって歌っている様が伝わってくる。ディランのピアノとチャーリーのギターが絡みながら曲を作り上げてゆき、今夜のエンディングはやや長めのジャム風演奏でしめた。

21.ラヴ・シック
センターでヴォーカル。かすれ気味のこれぞロックヴォーカルといった風に歌い始まる。両手を広げどうだと言わんばかりに挑みかかるような姿が雄々しい。チャーリーのギタープレイの間に屈伸運動のような動きを披露。

スタンディングの観客を前にメンバーたちはステージ中央へ。今夜はやや時間をかけて何度もうなずき客席を見回して、ディランは去っていった。


●ボブ・ディラン来日公演スケジュール