(Photo by 土居政則 4/4)

「こんな気がする」ディランを観て第二弾 ● 2016年4月5日

本日も満員のディラン公演は、開場時間を10分繰り上げての入場となった。昨夜と同様、ほぼ定時に会場が暗転するとアコースティックギターの演奏が始まり、メンバーそしてボブ・ディランの順に登場。今夜は、心なしか昨夜のお客さんよりヒートアップしている気がする。

1. シングス・ハヴ・チェンジド 
ディランはセンターでヴォーカル。昨夜に比べやや抑え気味のヴォーカルだが演奏とのバランスが良く、歌がハッキリと聴こえる。決めのポーズが目立つのは、今夜は機嫌が良いせいだろうか。

2. シー・ビロングズ・トゥ・ミー 
ディランはセンター。かみしめるように歌っているせいか声が良く通る。曲半ばでのハーモニカ演奏もさほど崩さず、歌全体のバランスが良い出来となった。

3. ビヨンド・ヒア・ライズ・ナッシング
ディランはグランドピアノを演奏しながら歌う。バンドの演奏を引っ張るように歌う様子は、バンドメンバーとの演奏を楽しんでいるかのようである。

4. ホワットル・アイ・ドゥ 
センターでヴォーカル。穏やかでゆったりしたテンポにのせ歌う姿は別人の面持ちである。この曲を歌いたかったという気持ちが伝わってくる。

5. デューケイン・ホイッスル
ディランはピアノ。音を探すようなバンドメンバーのそれぞれの演奏から始まるこの曲は今夜のハイライトとなった。剛柔織り交ぜたヴォーカルにバンドの見事なまでに引き締まった演奏。大変素晴らしい出来となった。

6. メランコリー・ムード
センターでヴォーカル。新曲のせいか観衆の反応が鈍いが、これぞディランの新境地。しっかりと歌い終わった後の決めのポーズは、どうだと言わんばかりのものだった。

7. ペイ・イン・ブラッド
センターでヴォーカル。引き締まった演奏をバックに力溢れる歌を聴かせる。決めのポーズやわずかながらも踊っている姿を見ると今夜はノリノリディランか?

8. アイム・ア・フール・トゥ・ウォント・ユー
センターでヴォーカル。かようなパフォーマンスをするディランを誰が想像していただろうか。一語一語を丁寧に歌うディランを演奏がしっかりと支え見事な出来栄えとなった。

9. ザット・オールド・ブラック・マジック
軽快な歌をディラン節満開で。この曲でもバンドの演奏が素晴らしい。

10.ブルーにこんがらがって 
  センターでヴォーカル。歌がバンドを引っ張ってゆくような力強さを感じる。奔放なハーモニカの演奏からは心地よさを感じるほどだ。ステージの様子からすると今夜は明らかにリラックスしている。

昨夜に比べるとよく聞き取れなかったが、日本語で「ありがとう」そして休憩を取る事を告げてメンバーとはける。

11.ハイ・ウォーター(フォー・チャーリー・パットン)
  ディランはセンター。時折リズムを取りながらリラックスした様子で歌う。

12.ホワイ・トライ・トゥ・チェンジ・ミー・ナウ 
  センターでヴォーカル。緩やかなテンポで雄大に歌い素晴らしい出来なのだが、所在なげにステージをうろうろする姿が印象的だった。

13.アーリー・ローマン・キングズ
  ピアノ演奏でヴォーカル。今夜一番の出来と言えるほど素晴らしい内容で、演奏と対峙しているかのような歌い回しが際立っていた。チャーリーのギターが歌を色付けしバンドの素晴らしさを再確認するような、歌の隅々までが見事にコントロールされた出来上がりだった。

14.ザ・ナイト・ウィ・コールド・イット・ア・デイ
  センターでヴォーカル。ゆったりとしたテンポに身をゆだねるようにして歌う。ステージをウロウロしているのが気になったが、カバーを歌う時に必ず出てしまう癖みたいなものか?

15.スピリット・オン・ザ・ウォー ター 
  ピアノ演奏とヴォーカル。軽やかな演奏に乗る軽快なディランのヴォーカル。バンドのメンバー同士でお互いを探るような演奏がクールで、歌の表情を豊かにした。

16.スカーレット・タウン 
  センターでヴォーカル。歌の持つ不気味なイメージを巧みにヴォーカルで色付けしている。曲を完璧に理解したようなチャーリーのギタープレイが素晴らしい。

17.オール・オア・ナッシング・アット・オール
  センターでヴォーカル。軽快な演奏がゆえに切なさが出る愛の歌を表情豊かに歌う。バンドの手堅い演奏が歌に深みを与えており、分けてもチャーリーのギターが素晴らしい。

18.ロング・アンド・ウェイステッ ド・イヤーズ 
  センターでヴォーカル。実に素晴らしい演奏が奔放に歌うディランを盛り上げる。それに応えるかのように観客の反応も良く、歌い終わった後にどうだと言わんばかりに両手を広げたディランの姿がたまらなくカッコいい。今夜のハイライトのひとつ。

19.枯葉
  センターでヴォーカル。ひねる事もなくオーソドックスに歌うディランから枯れた味わいがにじみ出てくる。最後にこの曲を歌う事に今のディランの思いがある。

ステージは暗転して後半を終了

20.風に吹かれて
  ピアノ演奏とヴォーカル。何度歌ったか数知れないほどのこの曲を今表現出来うる最高の形にした。世代や時代を超えても生き続けるという事を自ら示しているのである。 

21.ラヴ・シック
  センターでヴォーカル。切れの良い演奏にディラン自身も触発されたのかリズムを取ったり、踊るような仕草を見せる。切なくさせるこの歌をアンコールに持ってきた事で、このツアーの主題がいっそう明確なものになっている。

演奏後、ディランはにこやかな表情で何度も軽くうなずきながら客席を見渡す。そして最後に一度お辞儀をして舞台袖へと消えていった。

今夜のディランは機嫌が良かった。ステージ上でのしぐさの端々から、それは感じられた。そして歌う事の喜びを見せつけられた。「どんな気がする」風情のディランは、そこにはいないのである。シックなライティングの中で柔軟性溢れるバンドをバックに典型的なスタンダードを表情豊かに歌うために日本に来ているのだ。



●ボブ・ディラン来日公演スケジュール