今回のライヴレポートは、上野にある世界傑作劇場という映画館で上映されている映画の2本立てを観てのレポートである。映画のタイトルは、「兄貴と俺」と「のんけ2」である。そう、ホモセクシャルの方々専門の映画なのである。これには正直参った。映画そのものではなく館内の雰囲気にである。京成上野駅の裏手の奥まった路地にその劇場はあった。外から観ただけで、そっちの臭いがプンプンして来る。劇場の佇まい自体が、既にのんけでは無いのである。映画館の中に入ってビックリ! 席はガラガラに空いているのだが、席に座っている客は少しで、後は全員、周りにずらりと立っているのだ。そして、映画などは観ていない。立っている男性達に愛の熱い目線を送り、好みのパートナーを探しているのだ。独特のはりつめた空気。独特の甘い臭い。独特の視線の乱射。何か、その全てに圧倒された。もし、この中に尻合い、いや知り合いがいたらどうしようか? とドキドキしながら辺りを見回した。 ちょっと驚いたのが、以外にイケメンが多いということである。身長180cmくらい、スポーツマンタイプで、色黒のスーツ姿の男性達である。ちょっと見、一流大学スポーツ部出身で一流企業のエリートサラリーマンという感じ。そう言えば、どこかの6大学のピッチャーがホモ映画に出演していたが、まさにああいう感じである。肌着は着ていない。青いカッターシャツの胸を大きくはだけ、マッチョな感じを露出している。きっと、女性が巨乳の谷間を強調するようなものなのだろう。勿論、イケメン男性だけでは無い。バーコード頭の年輩の男性から引きこもり系の学生風、デブ系男性まで、実に様々である。 映画館に入った時から、僕にじっと「今日、僕といかが?」の視線を送って来た男性は、年の頃50歳前後。細面色白で髪は7・3分け。口の周りの髭剃り跡が青白い。昔、とんねるずの石橋氏が演じた「ほもおだ・ほもお」君のキャラそっくりだ。僕の学校(早稲田)の友人、今泉君にも似ている。白く痩せた体に、黒の荒い網目のシャツ。乳首がくっきり透けている。彼が、やたら僕に熱い視線を送ってくるので、チラリと彼の方を見ると、彼はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、こちらににじり寄って来た。思わず、全身に悪寒が走った。背中を嫌な汗が滴り落ち、脈拍が上がり始めた。僕は、彼の愛の攻撃をかわすため、慌てて中の方の席に座った。ふと、前を見ると。二つ前の席に男性が二人座っていた。そして、一人の男性がもう一人の男性の性器を咥えていた。いわゆるフェラチオである。リアルな音が聞こえて来る。フェラチオをしている男性の頭が上下するのをじっと見ていたら、段々吐きそうになってきた。でも、フェラチオされている男性はとても気持ち良さそうだった。最後に達する時の恍惚とした表情は、まさにモ~ホ~ワールドの真骨頂である。一緒に入った女性マネージャと女性編集者は、気絶しそうになっている。前も横も目線の置き場が無いので、仕方なくスクリーンの方を見ると、いきなり男の乳首のアップである。赤フンドシで、一人で「恋人(兄貴)」を想像しながらオナニーしているのである。「オーッ! オーッ!」というオットセイの咆哮のようなよがり声。それを観て、同じように吠えている客席の中年男性。もうどなってるんだ? この世界は? マジに今回は編集者を恨んだ。まぁ、でもそんな恨み言は言ってられないので、とにかく映画を観ることにした。1本目の「兄貴と俺」は、主人公の男性が、刑務所で刑務官に無理矢理お尻を掘られている所を、服役中の男性受刑者に助けられ、その受刑者にお尻を掘られるという物語。まさに「世界穴裂く劇場」いや「世界傑作劇場」である。主人公の彼は、その日から、その受刑者を「兄貴」と呼び、慕うようになる。 もう1本の「のんけ2」というのは、ある漫才師の物語である。ある男性漫才師が相方に掘れて、いや惚れているのだ。でもその相方はのんけで、女性の恋人がいるのだ。で、漫才コンクールで新人賞を取ったら、その相方は恋人と結婚する約束をしている。でも、相方を結婚させたくない彼は、漫才コンクールで賞を取らないためにわざとネタを間違えたりするのだ。彼らの十八番は、ホモネタである。それらは一応ネタでやっているのだが、彼の心の中は本気(マジ)なのである。ホモネタで、彼は、相方に抱きついたり、キスしたりするアクションをするのだが、相方に嫌がられ「お前、ホモちゃうか?」と突っ込まれた時が至福の時なのだ。コンクールでネタを間違えたので、新人賞は取れなかったのだが、審査員特別賞をもらうという良く分からないストーリーなのだ。でも、主人公の彼が、漫才の相方に惚れているけど告白できずにいるという、男性同士の片思いの甘く切ない物語で、これにはちょっと泣けた。劇中、主人公の彼が、「僕らは夫婦(めおと)漫才なんです」という科白があるのだが、彼としては、相方を夫と見ている訳だから、この「めおと漫才」という言葉が、とても深く、彼の複雑な女心?と願望を描いていて、思わず「座布団2枚」と心の中で叫んでいた。 僕は、同性愛を決して否定はしない。愛の形には、多様な形態があっていいと思う。しかし、僕も、その昔、大森うたえもん君と漫才「ツーツーレロレロ」をやっていたが、一度もホモってみようとは思わなかった。やはり性的嗜好性の問題だろう。たけし軍団に入って、談かんと、「ホモの男性の気持ちはどういうものだろう?」という話しになり、一度だけホモってみたことがあった。お互いがお互いの身体を舐め合い、我慢できなくなったら、ギブアップという意味で畳を2回叩く、というルールで始めた。まず、僕が、談かんの首筋から胸、乳首を舐めた時、談かんが「オーッ!」と快楽の雄叫びを上げたのだ。談かんの顔を見ると快感の絶頂の表情をしている。感じているのだ。その表情を見て、攻めている方の僕が、思わず畳を2回叩いた。ホモ経験はそれが最初で最後である。今回、最初に驚嘆と悪寒だったこの劇場の雰囲気が、ホモセクシャルワールドにどっぷり浸かっていると、段々好意的で妙な気持ちになって来るのは不思議な体験だった。