大物政治家が外国に行って話をすると、ついつい、本音が出たりするものです。今回、安倍首相が国連総会出席のため米国ニューヨークを訪問した際に行った、米保守系シンクタンク「ハドソン研究所」での講演やニューヨーク証券取引所での講演も、その類かも知れません。

しかし、大物政治家の外国での過去の本音発言と違うのは、今回の安倍首相の発言は、「ウッカリ」発言ではなく、用意周到な発言であるということです。

 先ず、「ハドソン研究所」では、「もし私を右翼の軍国主義者と呼びたいのであれば、どうぞ呼んでいただきたい。」と言ったと報道(時事通信)されました。こんな開き直りの発言をどんな気持ち(本音)でしたのか良く分かりませんが、演説が行われる前に報道された記事(朝日新聞)で既に予告されていた発言なので、用意周到の発言です。

しかし、こんな開き直りの発言は、一国のリーダーがすべきものではないでしょう。仮に、本音ベースで「右翼の軍国主義者と呼ばれたい」と思っていても、「右翼の軍国主義者」と呼ぶ人たちに、自分(安倍)の正直な思いを少しでも理解してほしいとの姿勢を示すのが、リーダーとしてのあるべき姿ではないでしょうか。何者かを挑発しようとしているとしか言いようがありません。

また、ニューヨーク証券取引所では「日本は原発の安全技術で世界に貢献していく。放棄することはあり得ない」(毎日新聞)と発言しました。これも、発言の前に報道された記事(朝日新聞)でも「日本は原発の安全技術でこれからも世界に貢献していく。放棄することはない」と発言することが予告されており、用意周到な発言です。

しかし、この発言は、本音をお化粧して隠した発言と思われます。すなわち、「原発の安全技術」と「原発そのもの」とを意図的に混同させることによって、実質的に、「原発そのもの」を「これからも放棄しない」と本音の発言を行っているように思えるのです。

というのは、「原発の安全技術」を「放棄する」ことはあり得ないことであるにもかかわらず、敢えてそのように発言したことに隠された意図がありそうです。本当に言いたかったこと(本音)は、「日本の安全技術で世界に貢献することとするので、原発を放棄することはしない。原発は、維持していきたい。」ということだと思います。

安倍首相の表面的な言葉に騙されずに、安倍首相の本音をシッカリとつかんで、その本音に対して、我々は真正面から向き合おうではありませんか。

(了)