本日の衆参両院での首相指名選挙で、民主党の鳩山由紀夫代表が、第93代内閣総理大臣に指名されました。1955年に、保守合同によって自由民主党が、左右社会党の統一によって社会党が、それぞれ結成されて以来、いわゆる「55年体制」の中で、自由民主党がほとんど政権を担当してきました。16年前に一時、細川政権ができましたが、それは、選挙の結果、8党派の当選した議員を寄せ集めての新政権誕生でしかありませんでした。

 今回は、選挙の前に予めマニフェスト(政権政策)を示し、選挙で勝利すれば誰が総理大臣になるのかも示された上で、「選挙による政権交代」が起きたのです。私が、10年前に衆議院議員選挙に出馬をすることを決めた時の「日本にも、政権担当能力のある政治勢力が複数あることが必要であり、日本でも、議会制民主主義の先進国で普通に起こっている『選挙による政権交代』が起こるようになるべきである。」との思いが、やっと本日、実現の第1歩を踏み出したのです。

(閣僚の内示)

 その鳩山新内閣の顔ぶれは、鳩山首相指名の行われる前日に内示をされています。内示に当たって「具体的なポストは明らかにしないように。もし漏らしたら、ポストは保証しない。」と釘が刺されていたようですが、本日の朝刊ではポスト名も明らかになっていました。首相指名前に閣僚のポストが分ってしまうリスクがありながら首相指名前に閣僚を内示したのには、官僚振り付けによる大臣の就任記者会見をさせないようにしようとしたためであったと思われます。

 と言うのは、いつもなら、首相指名後に新閣僚の選任が行われ、その直後に、皇居で首相任命式、閣僚認証式が行われると、直ぐに大臣就任の記者会見があるために、官僚振り付けの発言と応答に頼らざるを得ないのに対し、今回は、首相指名の前日に閣僚の内示があったことから、予め党の政策調査会が準備した資料を1日かけて「勉強」する時間的猶予が作れたのです。「脱官僚」政治の第1歩と言っても良いでしょう。

(閣僚と官僚)

 今回の閣僚の顔ぶれを見ますと、17人の閣僚のうち、官僚出身者は3人しかいません。しかも、その3人も、民主党元代表の幹事長、引退を決めていたが党代表の強い要請によって比例区単独で出馬して当選した元大蔵大臣、3党連立の中で入閣を要請された1党の代表、といった顔ぶれで、中堅クラスの官僚出身者は皆無でした。こんな閣僚選任のあり方にも、「脱官僚」政治が意識されているような気がします。

 しかし、いみじくも鳩山新首相が挨拶の中で言っていたように、本来目指すべきは、「脱官僚」政治ではなく、「脱官僚依存」政治であると思います。「官僚出身の政治家だから、閣僚にすることはできない。」と言うのではなく、「官僚出身の政治家であっても、官僚に依存することなく、国民のための政治が行えるのであれば、何ら問題はない。」と思います。何せ、民主党の国会議員417人のうち、45人も中央省庁と日銀の出身者がいるのですから。

(総理記者会見での質疑応答)

 今夕行われた総理の記者会見では、記者から、政策課題、財源問題、脱官僚依存の方法、国連総会・日米会談、拉致問題、東アジア共同体構想の具体化、「故人献金」問題等の質問が出されていましたが、鳩山政権発足で直ぐに直面する大きな課題は、予算(本年度補正予算、来年度予算)編成のあり方の問題です。と言うのも、予算編成に関しては、「政治主導で予算の骨格を策定する」ための「国家戦略局(当面は「室」)」ができるからです。

 記者から「予算編成の司令塔は、財務相か、国家戦略室か」と問われて、鳩山首相は、「国家戦略室は予算の骨格を作る。精緻な中身に仕立てていくのは、財務大臣・財務省。」としつつも、「国家戦略室、財務省、行政刷新会議の3者で役割分担して一体的に予算編成する。」と答えていました。実力派の政治家がトップとなった3つの組織がどのようにうまく役割分担するか、鳩山政権の浮沈がかかっているように思います。