本日は、昨日の本会議で与謝野財務大臣が行った財政演説に対し、各党からの代表質問が行われ、平成21年度予算の補正予算の審議が始まりました。年度初めの4月に補正予算が提出され審議されることも初めてですし、補正予算の規模が15,4兆円(一般会計だけでは実質14,7兆円)という規模で、過去最大の補正予算となりました。以下、この補正予算の特徴をご紹介したいと思います。

 今回の補正予算による補正後の年度予算の規模は、100兆円を初めて超え、約102兆5千億円となりました。昨年秋以降の世界的な景気悪化による我が国の「経済危機」に対処するため巨額になったのですが、補正予算を含む経済危機対策による経済効果(政府試算)としては、実質GDP成長率を1,9%程度押し上げ(それでも、本年度の成長率は、マイナス3,3%です。)、今年度の雇用創出効果としては、年度平均で20万人程度と試算されています。

(補正予算の歳出面での問題点)

 補正予算の歳出面での柱は、与謝野大臣の財政演説によれば、大きく三つあると説明されています。第一は、景気の底割れを回避するための緊急的な対策であり、第二は、中期的な成長を図るための成長戦略であり、第三は、国民に安心と活力をもたらす防災・安全対策等です。しかし、その予算の中身を見ると、基本的方針に基づいて、シッカリと検討された政策であるとはとても思えないものが、沢山あります。以下、順に説明します。

 第一の「景気の底割れを回避するための緊急的な対策」としては、①雇用調整助成金の拡充などの緊急雇用対策、②企業に対する保証・貸付枠の拡大(中小企業については、20兆円から30兆円へ)など、③公共事業の前倒し執行があります。いずれも、短期的な措置なのでとやかく言うつもりはありませんが、保証・貸付枠の拡大は、これまでの消化状況から見て、総額(30兆円)でも、1企業当たり限度額でも「空枠」的になっているとの印象があります。

 第二の「中期的な成長を図るための成長戦略」としては、重点的な三つの分野として、①「低炭素革命」、②「健康長寿・子育て」、③「底力発揮・21世紀型インフラ整備」を取上げています。しかし、これらの分野で取上げられた措置は、そのほとんどが短期的な措置にしか過ぎず、本当に中期的な成長をもたらすのか、疑問です。

 例えば、「低炭素革命」としては、太陽光発電や環境対応車・グリーン家電(省エネ型のエアコン、冷蔵庫、テレビ)の普及促進等がありますが、これらの施策によって二酸化炭素がどのくらい削減されるのかの効果について何らの数値的目標も示されておらず、苦境に陥った自動車業界や家電業界を、取りあえず2,3年間の間救済していこうとするものにしか過ぎないように思えます。

 「健康長寿・子育て」としては、地域医療の再生、介護機能の強化、「安心こども基金」の拡充などがありますが、いずれも、3年間の期限付きの措置であったり、「基金」の予算の範囲内であったり、恒久的なものではありません。特に、「子育て応援特別手当」に至っては、今年度の1年限りで、3歳から5歳の子供(第一子)がいる家庭対し3,6万円を支給するものですが、これで、子育て支援や少子化対策になっているのか極めて疑問です。

 「底力発揮・21世紀型インフラ整備」としては、担い手農家への農地集積等の農林水産業への支援、国土ミッシングリンク(開通していない道路)の結合、港湾・空港インフラ等の整備がありますが、何となく、「敗者復活」で採用された事業の集まりのような印象があります。農林水産業への支援は、当初予算で漏れてしまった施策を拾い上げただけ、道路も、費用と便益を比較して工事を諦めていたものが復活してしまっただけ、というものに思えます。

 第三の「国民に安心と活力をもたらす防災・安全対策等」としては、「スクール・ニューディール」構想の中で、学校の耐震化として約8300棟について行なわれのは良いことですが、「地方公共団体への配慮」として行われる「地域活性化・公共投資臨時交付金」は、問題です。公共事業に関する地方の「裏負担」に対する地方の不満を、その場しのぎで押さえ込もうという発想から作られたにしか過ぎない施策のような気がします。

(補正予算の歳入面での問題点)

 以上の歳出面での問題の他に、今回の補正予算では歳入面でも大きな問題があると思います。

 先ず、本年度のGDP成長率が、「当初予算での0、0%」から「補正予算でのマイナス3,3%」に下方修正されたにもかかわらず、税収見通しが減額されていないことです。自民党の保利政調会長の代表質問でも、「税収は、数兆円規模でマイナスが予想される」と言っていましたが、政府は知らん顔です。もし、税収減を計上すれば、赤字国債の発行額をそれだけ追加しなければならなくなることを避けようとした、としか言いようがありません。

 次に、先月末に成立した当初予算に計上されていた歳入項目のうち「埋蔵金からの繰入れ」の金額が3,1兆円増加された上に、歳出項目にあった「経済緊急対応予備費」の1兆円が1500億円に減額されて8500億円が補正予算で使われたことです。いずれも、赤字国債の発行額を抑えるために行われたものだと思いますが、そもそも「埋蔵金」はどれ位なのか、予備費はどんな基準で計上するのか、極めていい加減であることが露呈したように思います。