環境債務:2010年度企業会計から投資家への明示義務化
企業が所有する土地や建物が有害物質に汚染され、浄化措置などが必要だと判明した場合、あらかじめ処理費用の計上を義務付ける会計基準が10年度から導入される見通しになった。企業が抱える環境債務を投資家に明示し、企業に有害物質の処理を促す狙い。日本の企業会計基準を決める「企業会計基準委員会」が昨年末、草案をまとめ、近く正式決定する。
処理費用の計上が必要になるのは、法律や契約で有害物質の適正処理が求められる場合。建材にアスベスト(石綿)が含まれていた▽機器にPCB(ポリ塩化ビフェニール)を含む部品が使用されていた▽工場の土壌が汚染されていた--などが該当する。
推計した処理費用は債務として、貸借対照表などの財務諸表に記載する。費用の明示が難しければ、処理が必要な有害物質の存在を財務諸表に注記する。
これまでは、建物や土地が有害物質に汚染されていても、所有する企業に開示義務はなかった。情報を開示する場合も、その年度中の費用や投資額を記載するだけで、全体の処理費用は明確でない場合がほとんどだった。
しかし、将来、確実に処理費用がかかるのなら、それは企業の隠れた債務となる。環境債務を抱えた企業が倒産すれば、被害は投資家だけでなく、行政も対応を迫られ税金を投入する必要も出てくる。今回の会計基準見直しは、こうした不都合を回避し、経営者に有害物質の早期処理を促すことにつながる。
企業会計基準委員会は01年、当時の経団連や日本公認会計士協会などが設立した。日本の会計基準は従来、政府の審議会が決めていたが、国際的な流れを受け会計基準の決定権限が移管された。【江口一、森禎行】
【ことば】◇環境債務◇ 企業の過去や現在の活動によって、土地や建物、設備などに環境汚染が生じた場合には、将来、必ず除去や原状回復などに費用が必要となる。そうした環境対策費用を債務として認識し、財務諸表などに反映させる考えを指す。企業が環境報告書などで自主的に環境コストを公表している環境会計とは概念が異なる。
解説:環境債務明示 企業価値明らかに 国際競争力に直結も
環境債務開示を義務づける今回の基準は、債務の「見える化(可視化)」で真の企業価値を明らかにする目的がある。有害物質対策を進めれば債務は減り、財務体質は強化される。地球温暖化対策など環境規制の動向によっては計上すべき環境債務の変化も予想される。環境技術の高さを掲げる日本企業にとって、その対応は国際競争力に直結しそうだ。
将来負担すべきコストを各会計年度に計上する例としては、電力会社が将来の原発解体にかかる処理費用を計上する解体引当金がある。しかし、環境債務の全体像を開示する考え方は、日本ではなじみがなかった。
一方、米国では土壌汚染問題をきっかけに90年代から環境債務の計上が制度化された。欧州でも取り組みが進んでいる。国際的な企業の合併・買収(M&A)の急増もあり、先行する欧米諸国と同様の対応を迫られた形だ。
みずほ情報総研の光成美樹・環境・資源エネルギー部チーフコンサルタントによると、国内のアスベストや土壌汚染の処理費用は、10兆~20兆円に上る可能性がある。
光成さんは「今回の基準では合理的な見積もりができなければ、債務を数値として計上しないこともできる。この点を考慮し適切に計上しても、日本企業の環境債務は少なくとも数千億円になるのではないか」と話す。
株価への影響も懸念されるが、環境債務に詳しい藤井良広・上智大教授は「全体像を開示することが投資家の信頼につながる」と指摘する。【江口一】
毎日新聞 2008年1月21日 東京朝刊
☆うわっマジかい。これ絶対マズいって。もし適切にこんな会計処理行ったら債務超過の企業激増しちゃうんじゃないのかな??もちろんそんな経営してた責任ってのがあるんだけど、潰れちゃもともこもないし。ソフトランディングに期待大ですね。